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第二章
公爵夫人、西へ
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グランサニュー公爵夫人が旅立つ前に王宮から次男が呼び戻される。
「今の時期、暇じゃないですよ」
「モーリス、わかってますが貴方も家の事に」
「兄上を呼べばいいじゃないですか」
公爵夫人は眉間に皺を寄せる。
「マティアスに実務を任せる気にならない」
その言葉に次男モーリスも同意だった。
「今、新しい鉱山に籠って出てこないの。この半年顔みてないわ」
モーリスは別の事が心配になった。
「……生きてますか、兄上?」
「さぁ……」
夫人の返事も心もとない。執事が咳払いをし告げる。
「10日に一度は帰ってお風呂を済ませて、携行食を持っていかれてますよ。今はなにかサファイアの上質な奴、紫サファイアの鉱脈が見つかりそうだとか」
「あ、ちゃんと生きてるのね」
「母上……」
モーリスは呆れ気味だ。父親の元王族のグランサニュー公爵も多少実務という面では頼りないと思うモーリスだが、母親はもっと現実と仲が良くないと思ってしまった。
そんな会話を交わし、モーリスに全権を預けグランサニュー公爵夫人エマはモーリスから託された商談相手との交渉をしつつ、グランジエ領へついた。
「明日から儀式に入りますね。20日以上お世話になってしまうけどよろしくお願いします」
ウージェーヌの母親が素顔で出迎える。明るいは明るいがなにか柔らかい光の部屋であった。窓という窓は白っぽい色が付いていて、ガーテンは二重になっている。レースのカーテンと白っぽい、最上級のスパイダーシルクのカーテンでなにか魔法的処理がされているという。
「一応お部屋も用意してありますし、天幕でも過ごせますわ」
「基本は天幕で過ごします。そういう儀式なので」
グランサーニュー公爵夫人エマはにっこりと笑った。
「その、緑の魔法には詳しくなくて」
ウージェーヌの祖母が少し焦る。
「仕方ないわ。私も古い古い文献を紐といてね……。夫に王宮のっ禁書室に入れてもらって、一生懸命写本したの。お陰で古語の成績がガンガンあがったわ」
「あら」
二人の貴婦人はおっとり笑う。ウージェーヌの妻、ジョアンが質問する。
「禁書って写本できるんですか?」
「私の写本したものは禁書になってる原因が本が古すぎて外に持ち出せないから、だったの」
エマはさっくりとした一口大のパイに舌鼓を打つ。中は秋のベリー類をジャムにしたのや野生の柑橘類のジャム、そして野生の動物の肉をひき肉にしてスパイスをたっぷり使って炒めたもの、等であった。
「で、写本を作ったら王宮の図書室用にもう一冊作らされてね、エチに」
エマはふふっと笑う。
「そのあげく、その本のダイジェスト版、一般の農業で使うところだけ抜き出してまとめさせられて……。エチエンヌ、人使いが荒いのよ」
12歳の頃から6年かけた、写本からダイジェスト版作成の頃をエマは思い出す。あの日々のおかげでエマの緑魔法は鍛えられたし知識も手に入った。そしてグランサニュー公爵と結婚して緑魔法を使うこともなくなるかと思ったら、新婚早々守護者の宿る樹を公爵が持ち込み世話係になってしまったのだ。
今回はマドレーヌたちの帰還にあわせて守護者が西の辺境でアルと話せるようにするためであった。
「今の時期、暇じゃないですよ」
「モーリス、わかってますが貴方も家の事に」
「兄上を呼べばいいじゃないですか」
公爵夫人は眉間に皺を寄せる。
「マティアスに実務を任せる気にならない」
その言葉に次男モーリスも同意だった。
「今、新しい鉱山に籠って出てこないの。この半年顔みてないわ」
モーリスは別の事が心配になった。
「……生きてますか、兄上?」
「さぁ……」
夫人の返事も心もとない。執事が咳払いをし告げる。
「10日に一度は帰ってお風呂を済ませて、携行食を持っていかれてますよ。今はなにかサファイアの上質な奴、紫サファイアの鉱脈が見つかりそうだとか」
「あ、ちゃんと生きてるのね」
「母上……」
モーリスは呆れ気味だ。父親の元王族のグランサニュー公爵も多少実務という面では頼りないと思うモーリスだが、母親はもっと現実と仲が良くないと思ってしまった。
そんな会話を交わし、モーリスに全権を預けグランサニュー公爵夫人エマはモーリスから託された商談相手との交渉をしつつ、グランジエ領へついた。
「明日から儀式に入りますね。20日以上お世話になってしまうけどよろしくお願いします」
ウージェーヌの母親が素顔で出迎える。明るいは明るいがなにか柔らかい光の部屋であった。窓という窓は白っぽい色が付いていて、ガーテンは二重になっている。レースのカーテンと白っぽい、最上級のスパイダーシルクのカーテンでなにか魔法的処理がされているという。
「一応お部屋も用意してありますし、天幕でも過ごせますわ」
「基本は天幕で過ごします。そういう儀式なので」
グランサーニュー公爵夫人エマはにっこりと笑った。
「その、緑の魔法には詳しくなくて」
ウージェーヌの祖母が少し焦る。
「仕方ないわ。私も古い古い文献を紐といてね……。夫に王宮のっ禁書室に入れてもらって、一生懸命写本したの。お陰で古語の成績がガンガンあがったわ」
「あら」
二人の貴婦人はおっとり笑う。ウージェーヌの妻、ジョアンが質問する。
「禁書って写本できるんですか?」
「私の写本したものは禁書になってる原因が本が古すぎて外に持ち出せないから、だったの」
エマはさっくりとした一口大のパイに舌鼓を打つ。中は秋のベリー類をジャムにしたのや野生の柑橘類のジャム、そして野生の動物の肉をひき肉にしてスパイスをたっぷり使って炒めたもの、等であった。
「で、写本を作ったら王宮の図書室用にもう一冊作らされてね、エチに」
エマはふふっと笑う。
「そのあげく、その本のダイジェスト版、一般の農業で使うところだけ抜き出してまとめさせられて……。エチエンヌ、人使いが荒いのよ」
12歳の頃から6年かけた、写本からダイジェスト版作成の頃をエマは思い出す。あの日々のおかげでエマの緑魔法は鍛えられたし知識も手に入った。そしてグランサニュー公爵と結婚して緑魔法を使うこともなくなるかと思ったら、新婚早々守護者の宿る樹を公爵が持ち込み世話係になってしまったのだ。
今回はマドレーヌたちの帰還にあわせて守護者が西の辺境でアルと話せるようにするためであった。
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