悪役令嬢、冒険者になる 【完結】

あくの

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第二章

セーフエリアで

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 「あ、コボルトになった」

年の若そうな冒険者が目を丸くしている。
 アルは鎧を少し軽いものに変えていたので良かったと思いながらバッグを枕に仮眠を取り始めた。エディもその横で寝始める。



 アルが目を覚ますとロゼが手招きする。

「なんだ?」

「エディの横変わって」

アルは頷き、賄賂であろう濃い目の珈琲を受け取った。

「よっ」

アルの横にとすっと大柄な男が座った。

「グランだ。ロゼの兄だ」

「ども。アルと言います」

アルがそっけなく返す。

「妹がすまんな。あいつ、体の大きな男が好きなんだよ。エディは肉も着いてるが縦横でかいだろ。だから口説きにいってる」

「そうか」

アルのそっけない返事にもグランはめげずに話す。『司祭さんの帽子』は兄妹パーティであること。男男男女女の兄妹でロゼが末っ子である事。兄妹で一番器量よしなのに一番気が強いんだという兄バカの混じった言葉にアルはレアに逢いたいと思った。自分も妹が可愛いのはこの男と同じだと思ったのだ。

 「で、エディってどんな男だ?」

このチェックの言葉はアルにも予想ができた。多少苦笑しながらアルはエディの事を教える。

「良い奴だよ、気が良いし……よく食べる。んでクランでもよく働く方だった。兄弟は沢山いる。姉がいるんで女性扱いも案外如才ないが、女にだらしなかったりはしない。普通の男だよ。付き合いやすいし。感情的になる方ではないし」

グランはふーんと少し詰まらなさそうだ。

「身内に聞いても悪い面は口にしないか」

アルはグランの言葉ももっともかな、と思った。三々五々と目を覚ました。伝令の少年はダンジョンコアの鎮静の報を知らせに早々に上階に向かったらしい。魔力回復用のポーションをがぶのみして、姿と気配を魔法で消して上に向かっていった。

「さて、と。皆起きたら体をほぐしがてら上を目指すぞ。途中のセーフエリアにいるやつら拾って帰らないとな」



 エディは腹の上に組んだ手を置いて行儀よく寝ていた。

「え?」

はたから見るとエディがいきなり飛び起きたようにみえるので

「おいおい、寝ぼけんな」

揶揄う声が上がっていた。ゆっくりと横のロゼが起き上がった。

「起きたんだね」

「なんで……」

「アルに場所を譲ってもらった」

寝起きで少し掠れた声はかなり色気がある。周りの男たちはぞくっと背中に何かが走るのを感じる。もちろんエディもだ。

「ロゼ姉、……魅了の声はここで使っちゃだめ」

モイラがメっとロゼを注意する。

「……寝ぼけてた」

ロゼが少し決まり悪げだ。エディは照れ隠しの様に気になっていた事を訪ねる。

「あのさ、……ここに来た時みたいな転移の石つかわないのか?」

ロゼより先に他の冒険者が答える。

「あれ高いんだよ。今回はギルドのとっときだしだんだろ」

ロゼが肯定して頷いた。

「今回、最初はいつものダンジョン掃除のはずだったんだよ。1階層目で色変わりスライムがでてね。その上スライムが外を目指し始めたらしい。で、ギルド側から要請が来て最下層の手伝いってことであの伝令の子に石持たせて最下層まで送ってもらったんだ」

ロゼの説明をエディは感心して聴いていた。
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