73 / 212
第二章
セーフエリアで
しおりを挟む
「あ、コボルトになった」
年の若そうな冒険者が目を丸くしている。
アルは鎧を少し軽いものに変えていたので良かったと思いながらバッグを枕に仮眠を取り始めた。エディもその横で寝始める。
アルが目を覚ますとロゼが手招きする。
「なんだ?」
「エディの横変わって」
アルは頷き、賄賂であろう濃い目の珈琲を受け取った。
「よっ」
アルの横にとすっと大柄な男が座った。
「グランだ。ロゼの兄だ」
「ども。アルと言います」
アルがそっけなく返す。
「妹がすまんな。あいつ、体の大きな男が好きなんだよ。エディは肉も着いてるが縦横でかいだろ。だから口説きにいってる」
「そうか」
アルのそっけない返事にもグランはめげずに話す。『司祭さんの帽子』は兄妹パーティであること。男男男女女の兄妹でロゼが末っ子である事。兄妹で一番器量よしなのに一番気が強いんだという兄バカの混じった言葉にアルはレアに逢いたいと思った。自分も妹が可愛いのはこの男と同じだと思ったのだ。
「で、エディってどんな男だ?」
このチェックの言葉はアルにも予想ができた。多少苦笑しながらアルはエディの事を教える。
「良い奴だよ、気が良いし……よく食べる。んでクランでもよく働く方だった。兄弟は沢山いる。姉がいるんで女性扱いも案外如才ないが、女にだらしなかったりはしない。普通の男だよ。付き合いやすいし。感情的になる方ではないし」
グランはふーんと少し詰まらなさそうだ。
「身内に聞いても悪い面は口にしないか」
アルはグランの言葉ももっともかな、と思った。三々五々と目を覚ました。伝令の少年はダンジョンコアの鎮静の報を知らせに早々に上階に向かったらしい。魔力回復用のポーションをがぶのみして、姿と気配を魔法で消して上に向かっていった。
「さて、と。皆起きたら体をほぐしがてら上を目指すぞ。途中のセーフエリアにいるやつら拾って帰らないとな」
エディは腹の上に組んだ手を置いて行儀よく寝ていた。
「え?」
はたから見るとエディがいきなり飛び起きたようにみえるので
「おいおい、寝ぼけんな」
揶揄う声が上がっていた。ゆっくりと横のロゼが起き上がった。
「起きたんだね」
「なんで……」
「アルに場所を譲ってもらった」
寝起きで少し掠れた声はかなり色気がある。周りの男たちはぞくっと背中に何かが走るのを感じる。もちろんエディもだ。
「ロゼ姉、……魅了の声はここで使っちゃだめ」
モイラがメっとロゼを注意する。
「……寝ぼけてた」
ロゼが少し決まり悪げだ。エディは照れ隠しの様に気になっていた事を訪ねる。
「あのさ、……ここに来た時みたいな転移の石つかわないのか?」
ロゼより先に他の冒険者が答える。
「あれ高いんだよ。今回はギルドのとっときだしだんだろ」
ロゼが肯定して頷いた。
「今回、最初はいつものダンジョン掃除のはずだったんだよ。1階層目で色変わりスライムがでてね。その上スライムが外を目指し始めたらしい。で、ギルド側から要請が来て最下層の手伝いってことであの伝令の子に石持たせて最下層まで送ってもらったんだ」
ロゼの説明をエディは感心して聴いていた。
年の若そうな冒険者が目を丸くしている。
アルは鎧を少し軽いものに変えていたので良かったと思いながらバッグを枕に仮眠を取り始めた。エディもその横で寝始める。
アルが目を覚ますとロゼが手招きする。
「なんだ?」
「エディの横変わって」
アルは頷き、賄賂であろう濃い目の珈琲を受け取った。
「よっ」
アルの横にとすっと大柄な男が座った。
「グランだ。ロゼの兄だ」
「ども。アルと言います」
アルがそっけなく返す。
「妹がすまんな。あいつ、体の大きな男が好きなんだよ。エディは肉も着いてるが縦横でかいだろ。だから口説きにいってる」
「そうか」
アルのそっけない返事にもグランはめげずに話す。『司祭さんの帽子』は兄妹パーティであること。男男男女女の兄妹でロゼが末っ子である事。兄妹で一番器量よしなのに一番気が強いんだという兄バカの混じった言葉にアルはレアに逢いたいと思った。自分も妹が可愛いのはこの男と同じだと思ったのだ。
「で、エディってどんな男だ?」
このチェックの言葉はアルにも予想ができた。多少苦笑しながらアルはエディの事を教える。
「良い奴だよ、気が良いし……よく食べる。んでクランでもよく働く方だった。兄弟は沢山いる。姉がいるんで女性扱いも案外如才ないが、女にだらしなかったりはしない。普通の男だよ。付き合いやすいし。感情的になる方ではないし」
グランはふーんと少し詰まらなさそうだ。
「身内に聞いても悪い面は口にしないか」
アルはグランの言葉ももっともかな、と思った。三々五々と目を覚ました。伝令の少年はダンジョンコアの鎮静の報を知らせに早々に上階に向かったらしい。魔力回復用のポーションをがぶのみして、姿と気配を魔法で消して上に向かっていった。
「さて、と。皆起きたら体をほぐしがてら上を目指すぞ。途中のセーフエリアにいるやつら拾って帰らないとな」
エディは腹の上に組んだ手を置いて行儀よく寝ていた。
「え?」
はたから見るとエディがいきなり飛び起きたようにみえるので
「おいおい、寝ぼけんな」
揶揄う声が上がっていた。ゆっくりと横のロゼが起き上がった。
「起きたんだね」
「なんで……」
「アルに場所を譲ってもらった」
寝起きで少し掠れた声はかなり色気がある。周りの男たちはぞくっと背中に何かが走るのを感じる。もちろんエディもだ。
「ロゼ姉、……魅了の声はここで使っちゃだめ」
モイラがメっとロゼを注意する。
「……寝ぼけてた」
ロゼが少し決まり悪げだ。エディは照れ隠しの様に気になっていた事を訪ねる。
「あのさ、……ここに来た時みたいな転移の石つかわないのか?」
ロゼより先に他の冒険者が答える。
「あれ高いんだよ。今回はギルドのとっときだしだんだろ」
ロゼが肯定して頷いた。
「今回、最初はいつものダンジョン掃除のはずだったんだよ。1階層目で色変わりスライムがでてね。その上スライムが外を目指し始めたらしい。で、ギルド側から要請が来て最下層の手伝いってことであの伝令の子に石持たせて最下層まで送ってもらったんだ」
ロゼの説明をエディは感心して聴いていた。
7
お気に入りに追加
74
あなたにおすすめの小説

元婚約者が「俺の子を育てろ」と言って来たのでボコろうと思います。
音爽(ネソウ)
恋愛
結婚間近だった彼が使用人の娘と駆け落ちをしてしまった、私は傷心の日々を過ごしたがなんとか前を向くことに。しかし、裏切り行為から3年が経ったある日……
*体調を崩し絶不調につきリハビリ作品です。長い目でお読みいただければ幸いです。

転生ヒロインは不倫が嫌いなので地道な道を選らぶ
karon
ファンタジー
デビュタントドレスを見た瞬間アメリアはかつて好きだった乙女ゲーム「薔薇の言の葉」の世界に転生したことを悟った。
しかし、攻略対象に張り付いた自分より身分の高い悪役令嬢と戦う危険性を考え、攻略対象完全無視でモブとくっつくことを決心、しかし、アメリアの思惑は思わぬ方向に横滑りし。

姉から奪うことしかできない妹は、ザマァされました
饕餮
ファンタジー
わたくしは、オフィリア。ジョンパルト伯爵家の長女です。
わたくしには双子の妹がいるのですが、使用人を含めた全員が妹を溺愛するあまり、我儘に育ちました。
しかもわたくしと色違いのものを両親から与えられているにもかかわらず、なぜかわたくしのものを欲しがるのです。
末っ子故に甘やかされ、泣いて喚いて駄々をこね、暴れるという貴族女性としてはあるまじき行為をずっとしてきたからなのか、手に入らないものはないと考えているようです。
そんなあざといどころかあさましい性根を持つ妹ですから、いつの間にか両親も兄も、使用人たちですらも絆されてしまい、たとえ嘘であったとしても妹の言葉を鵜呑みにするようになってしまいました。
それから数年が経ち、学園に入学できる年齢になりました。が、そこで兄と妹は――
n番煎じのよくある妹が姉からものを奪うことしかしない系の話です。
全15話。
※カクヨムでも公開しています

魅了が解けた貴男から私へ
砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。
彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。
そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。
しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。
男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。
元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。
しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。
三話完結です。

(完結)「君を愛することはない」と言われて……
青空一夏
恋愛
ずっと憧れていた方に嫁げることになった私は、夫となった男性から「君を愛することはない」と言われてしまった。それでも、彼に尽くして温かい家庭をつくるように心がければ、きっと愛してくださるはずだろうと思っていたのよ。ところが、彼には好きな方がいて忘れることができないようだったわ。私は彼を諦めて実家に帰ったほうが良いのかしら?
この物語は憧れていた男性の妻になったけれど冷たくされたお嬢様を守る戦闘侍女たちの活躍と、お嬢様の恋を描いた作品です。
主人公はお嬢様と3人の侍女かも。ヒーローの存在感増すようにがんばります! という感じで、それぞれの視点もあります。
以前書いたもののリメイク版です。多分、かなりストーリーが変わっていくと思うので、新しい作品としてお読みください。
※カクヨム。なろうにも時差投稿します。
※作者独自の世界です。
新しい聖女が見付かったそうなので、天啓に従います!
月白ヤトヒコ
ファンタジー
空腹で眠くて怠い中、王室からの呼び出しを受ける聖女アルム。
そして告げられたのは、新しい聖女の出現。そして、暇を出すから還俗せよとの解雇通告。
新しい聖女は公爵令嬢。そんなお嬢様に、聖女が務まるのかと思った瞬間、アルムは眩い閃光に包まれ――――
自身が使い潰された挙げ句、処刑される未来を視た。
天啓です! と、アルムは――――
表紙と挿し絵はキャラメーカーで作成。

【完結】義妹とやらが現れましたが認めません。〜断罪劇の次世代たち〜
福田 杜季
ファンタジー
侯爵令嬢のセシリアのもとに、ある日突然、義妹だという少女が現れた。
彼女はメリル。父親の友人であった彼女の父が不幸に見舞われ、親族に虐げられていたところを父が引き取ったらしい。
だがこの女、セシリアの父に欲しいものを買わせまくったり、人の婚約者に媚を打ったり、夜会で非常識な言動をくり返して顰蹙を買ったりと、どうしようもない。
「お義姉さま!」 . .
「姉などと呼ばないでください、メリルさん」
しかし、今はまだ辛抱のとき。
セシリアは来たるべき時へ向け、画策する。
──これは、20年前の断罪劇の続き。
喜劇がくり返されたとき、いま一度鉄槌は振り下ろされるのだ。
※ご指摘を受けて題名を変更しました。作者の見通しが甘くてご迷惑をおかけいたします。
旧題『義妹ができましたが大嫌いです。〜断罪劇の次世代たち〜』
※初投稿です。話に粗やご都合主義的な部分があるかもしれません。生あたたかい目で見守ってください。
※本編完結済みで、毎日1話ずつ投稿していきます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる