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第二章
前公爵は半分死んでいる
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「かなりやばいか」
エリクは慣れている様でシーツを一気に剥ぐ。シルクのシーツに肉や皮膚がこびりつき足の一部が骨が見えている。
「ヴ……」
この世の物とも思えぬ声で父親が呻くのをジェラールは見ているしかできなかった。
「伯父上は麻薬で痛みが判らなくなってるんだ」
エリクが解説する。
「まずは足を治す。足元から術をかけられているようだからね」
エリクがぶつぶつ言い出した。
「そうか、ドニ様はこれが見えてたな」
エリクは聖水で足の裏を洗う、腐ったようにみえた足の裏はびっしりなにかが刻まれていた。
「これが死骸化の術式。死体じゃないものを死骸化して操るためにネクロマンサーが使う術の一つだね」
エリクはあくまで冷静だった。
「……これは王宮の聖女の血ともう一つ、多分一緒に死んでた女の血だな、が混じったもので彫り混まれているな。ってことはネクロマンサーも……」
エリクは詳細にその刻まれた陣を紙に書き写し、紙の周りを聖水を指に着けなぞる。
「これで外からは干渉できなくなった」
エリクは外にいる騎士を呼び、その紙を前神官長に届けるように、と頼んだ。時折身をよじるように動く紙を気持ち悪そうにもった騎士は急いで前神官長に届けに行った。
「他には……首の後ろか」
今にも崩れ落ちそうな前公爵の体をひっくりかえしながらその首の後ろに刻まれた陣をまた描き写し聖水で紙をなぞった。
「両手首と太ももの内側もある」
むっとした顔で前神官長が入って来た。
「では私はふともの修復をします」
前神官長が頷きこの部屋に聖魔法で結界をはる。途端前公爵は苦しそうに呻き始めた。
「やはりか。……元に戻せるか?」
エリクは首を傾げる。
「『元』は無理ですね。屋敷内の移動が問題ない程度、最悪寝た切りです」
エリクは冷静に見立てる。
「また利用されたら嫌なんでうちの実家で預かりますよ。ジェラールもいいね。我が家には義兄上がいますから」
不世出の聖騎士と呼ばれた男はミシェル妃とエリクの姉の夫で、将来は侯爵家を継ぐ姉と一緒に侯爵家に住んでいる。
「どうやって連れて行くんだ」
ジェラールが訊ねると
「この家の一番いい馬車で連れて帰る。幸いうちは王都の端っこだからね」
「はよう術式をけしてしまわないと。結界に干渉がある」
エリクの言葉を前神官長はさえぎり、まだ肉が残っている手首の刺青された陣を描きうつしている。エリクよりも前神官長の手は早かった。
「右太もも修復終わり」
エリクが淡々と告げる。ジェラールが見ると脇机の上の紙はぐねっと時々波打っている。前神官長の額には汗が浮かんでいる。が手は止まらない。神官長はふぅと息を継ぎ、アイスペールから聖水を飲む。
「あの……不味くないですか?」
「聖水に味や匂いはない」
前神官長とエリクから同時に声が上がった。
エリクは慣れている様でシーツを一気に剥ぐ。シルクのシーツに肉や皮膚がこびりつき足の一部が骨が見えている。
「ヴ……」
この世の物とも思えぬ声で父親が呻くのをジェラールは見ているしかできなかった。
「伯父上は麻薬で痛みが判らなくなってるんだ」
エリクが解説する。
「まずは足を治す。足元から術をかけられているようだからね」
エリクがぶつぶつ言い出した。
「そうか、ドニ様はこれが見えてたな」
エリクは聖水で足の裏を洗う、腐ったようにみえた足の裏はびっしりなにかが刻まれていた。
「これが死骸化の術式。死体じゃないものを死骸化して操るためにネクロマンサーが使う術の一つだね」
エリクはあくまで冷静だった。
「……これは王宮の聖女の血ともう一つ、多分一緒に死んでた女の血だな、が混じったもので彫り混まれているな。ってことはネクロマンサーも……」
エリクは詳細にその刻まれた陣を紙に書き写し、紙の周りを聖水を指に着けなぞる。
「これで外からは干渉できなくなった」
エリクは外にいる騎士を呼び、その紙を前神官長に届けるように、と頼んだ。時折身をよじるように動く紙を気持ち悪そうにもった騎士は急いで前神官長に届けに行った。
「他には……首の後ろか」
今にも崩れ落ちそうな前公爵の体をひっくりかえしながらその首の後ろに刻まれた陣をまた描き写し聖水で紙をなぞった。
「両手首と太ももの内側もある」
むっとした顔で前神官長が入って来た。
「では私はふともの修復をします」
前神官長が頷きこの部屋に聖魔法で結界をはる。途端前公爵は苦しそうに呻き始めた。
「やはりか。……元に戻せるか?」
エリクは首を傾げる。
「『元』は無理ですね。屋敷内の移動が問題ない程度、最悪寝た切りです」
エリクは冷静に見立てる。
「また利用されたら嫌なんでうちの実家で預かりますよ。ジェラールもいいね。我が家には義兄上がいますから」
不世出の聖騎士と呼ばれた男はミシェル妃とエリクの姉の夫で、将来は侯爵家を継ぐ姉と一緒に侯爵家に住んでいる。
「どうやって連れて行くんだ」
ジェラールが訊ねると
「この家の一番いい馬車で連れて帰る。幸いうちは王都の端っこだからね」
「はよう術式をけしてしまわないと。結界に干渉がある」
エリクの言葉を前神官長はさえぎり、まだ肉が残っている手首の刺青された陣を描きうつしている。エリクよりも前神官長の手は早かった。
「右太もも修復終わり」
エリクが淡々と告げる。ジェラールが見ると脇机の上の紙はぐねっと時々波打っている。前神官長の額には汗が浮かんでいる。が手は止まらない。神官長はふぅと息を継ぎ、アイスペールから聖水を飲む。
「あの……不味くないですか?」
「聖水に味や匂いはない」
前神官長とエリクから同時に声が上がった。
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