悪役令嬢、冒険者になる 【完結】

あくの

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第二章

ダンジョン掃除 4

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 3階層目と2階層目を繋ぐ階段にに姿隠しの魔法を使い派遣された魔導師は急いだ。1階層目、2階層目のありさまを見て3階層目が心配になったからだ。


「へ?」

魔導師の声が出るほど3階層目と上を繋ぐ階段は平穏だった。時折、フロア全体がファイアボールを雨あられと受けている気配がある。

「……魔法使いがいたのか」

「いませんよ」

3階層目の階段担当のリーダーがにべもなくいう。

「でも」

「これは弓使いの一人がやってます」

「なんで弓使いが?」

「魔力もあって、攻撃魔法もだせるんですが威力も方向もコントロール不可。なので一定時間内に1回、威力は問わずフロア中にファイアボールを飛ばしてもらってます」

 魔導師はなんて魔力の無駄遣いだ。と思った。

「どのこ?」

「あの銀髪の」

マドレーヌを見て、どう見てもどこかのお姫様にみえる容姿だと魔導師は思った。

「いま魔法を使ってるのは君?」

3階層目は平原であった。

「そうです」

「ファイアボールを使ってる?」

「はい」

「広範囲魔法が使える?」

「全然。学校で習った初級魔法だけです、使えるのは」

「ファイアボールだけかな?火属性なのか?」

「無属性なんで何でも使えますが……実用レベルじゃないんですよ、私の魔法って」

マドレーヌは説明する。目標物を決めれば目標物を避けて魔法が発動する。最悪な場合真後ろで発動したりもする。威力もコントロール出来ない。必要以上に大きなものが出たり、小さな炎が出たり、と安定もしない。そんな状態で魔力量が多いものだから実用として使うのに向いていない、と。

「訓練をしてもだめだったのか?」

「ええ。通っていた学園で特訓を毎年受けてましたが……」

「何年くらい?」

「10才の頃からですからもう6年やりましたね」

マドレーヌはそう言うとエネルギー補充の為の甘い紅茶を飲む。保温の魔法がかかった瓶には暖かい紅茶が入っている。木でできた軽いカップにマドレーヌは紅茶を注ぐと魔導師にそれを渡す。

「暫く交代してくださるんですよね?伝令の方は急ぎ通って行かれましたし。少し休ませていただけると魔力も回復出来ますし」



 マドレーヌが休憩、というか睡眠をとっている間、3階層目のモンスター、トレントの幼生に4階層のモンスター灰色狼が混じる率が増えてきている。3階層目と4階層目の間は突破されたか、と魔導師は悟ったが顔色は変えなかった。

「リーダー……、目に見える所まで炎が来るまでフロアの消火はやめておこうか」

「そうですね。少しでも灰色狼を焼いたり足止めしてくれると楽ですからね」

 マドレーヌが休憩をとってから暫くして、サブリーダーとリーダーが入れ替わりマドレーヌと魔導師が入れ替わった。マドレーヌたちの班は誰も欠ける事無く、この階層を守り切った。起こりかけていたモンスター津波を抑えきりA班が下の階層から戻って来た時4階層目にいた班員は全くおらず。4階層目は灰色狼で溢れていたが3階層目に上がる階段室、セーフエリアは焼けて肉がくっつき壁状になった灰色狼の死体が山ほどあった。このダンジョン掃除全体のリーダーの説明によるとセーフエリア外で絶命したモンスターは死体が残らないのだがセーフエリアでの絶命はその死体を吸収する術が効果がないのだろう、と。
 そんな風に落ち着くまではまだまだ時間がかかるのであった。

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