悪役令嬢、冒険者になる 【完結】

あくの

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第二章

ダンジョン掃除 2

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 「……あなた、そんなに自信がるのね?」

妙にヒステリックな声で聖女がわめく。

「今は冒険者ですもの。与えられた仕事をちゃんとこなすのが先でしょう?」

マドレーヌの大きな少しつり目の青い目がじっと聖女を見る。聖女は同性なのにその瞳にどぎまぎしてしまう。

「と、とにかく。アル様の横はあたしなの」

聖女の言葉ににっこりとマドレーヌは少し心配そうに返す。

「ダンジョン、階層重ねる事に相手も強くなりますからお気をつけて」

 聖女は真正面から心配されて毒気が抜かれたようだった。






 自分が肩で息をしているのだ判る。いくら潰してもスライムと角ウサギが沸いてくるのだ。エドが深呼吸をし、腰を伸ばした瞬間、目の前が紫がかった白光で満たされる。

「ちょっと予想外に多いから、一端このフロアのモンスターを魔導師が一掃しました。このまま、2階層目の階段まで急ぎますよ。階段はセーフエリアなのでそこで一息付けます。はい、急いで」

付き添いのギルドの職員がそこにいる十数人をせかす。エドは早めにセーフエリアに入って鞄から水を出し飲んで、宿で焼いてもらった堅焼きのクッキーを一つ口にほりこんだ。
 数人の冒険者が騒いでいる。

「入口の所に荷物を置いている?」

ギルドの職員がしかりつけている。

「荷物は肌身離すなと言ってますよね?貴方達、ギルドの初心者講座受けなおしなさい。なんで入口に荷物置いてたんですか?」

「その方が身軽に動けるから……」

騒いでいる冒険者のリーダーらしき少年、せいぜい15といったところか。

「で、これからの水分や食事はどうしますか?」

「あ……」

「スライム舐めちゃいけません。あいつらは雑食性です。全てを溶かしながら体内に取り込むので貴方達の荷物はなくなります」

その集団のまだ12才くらいの、新人冒険者の女の子が泣き出した。

「ママに怒られる」

エドはこういうのは放置に限るなと目を瞑って壁に体をもたせかけて休んでいた。一瞬だけ眠ったようだ。次に目を開けると下へ向かう階段は人がぎっしりになっていた。
 下の階層では角ウサギで溢れているそうだ。

「なぁ、……スライム、大きくなってないか?」

「んで外に向かってる?」

少年たちの不安そうな声が聞こえてエドは立ち上がり、薄暗い仲目を凝らして1階層目を見てみた。半透明のはずのスライムに赤や緑の色がついているやつがいる。

「亜種……?」

エドの呟きに数人の冒険者がエドの側に来た。

「まずいな……これ。あいつら外に出ようとしてないか?」

「……モンスター津波再来か?」

「ちょっと俺、係員さんに話してくる」

「たのむわ。……あんたボウガン使いだよな?」

「ああ。一応」

エドは獲物を弱らせるために酸入りの弾を使い、止めは剣というスタイルをとっている。

「……あんたには協力してもらう」

彼はDランクの戦士で今日は孤児院の『弟妹』の監督に来ているという事だった。

「それ麻痺弾入ってるだろ?」

「弾、沢山はないぞ。一発目麻痺させてあとは剣で殴ってるからな」

「俺が頼みたいのは一発だけ当てて欲しい。それで鈍ったら毒矢使いのやつが矢をぶち込んで、鈍らせて物理的に潰していくから」

エドは頷いた。

「色変わりがでたって?不味いな」

Dランクの戦士がギルド職員に頷く。

「あのまま合体されるとキングスライムになりますね」

「キングになるならいいが色変わりのまま外に出られるとか外でキングを作られたら……」

結局エドを含む動けるメンバで入口を目指し、入口の階段あたりでの本格戦闘を行う事になった。下の階層を目指す階段からは余裕が出たら見える範囲のスライムを削ってもらう事になった。

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