59 / 212
第二章
ダンジョン掃除 2
しおりを挟む
「……あなた、そんなに自信がるのね?」
妙にヒステリックな声で聖女がわめく。
「今は冒険者ですもの。与えられた仕事をちゃんとこなすのが先でしょう?」
マドレーヌの大きな少しつり目の青い目がじっと聖女を見る。聖女は同性なのにその瞳にどぎまぎしてしまう。
「と、とにかく。アル様の横はあたしなの」
聖女の言葉ににっこりとマドレーヌは少し心配そうに返す。
「ダンジョン、階層重ねる事に相手も強くなりますからお気をつけて」
聖女は真正面から心配されて毒気が抜かれたようだった。
自分が肩で息をしているのだ判る。いくら潰してもスライムと角ウサギが沸いてくるのだ。エドが深呼吸をし、腰を伸ばした瞬間、目の前が紫がかった白光で満たされる。
「ちょっと予想外に多いから、一端このフロアのモンスターを魔導師が一掃しました。このまま、2階層目の階段まで急ぎますよ。階段はセーフエリアなのでそこで一息付けます。はい、急いで」
付き添いのギルドの職員がそこにいる十数人をせかす。エドは早めにセーフエリアに入って鞄から水を出し飲んで、宿で焼いてもらった堅焼きのクッキーを一つ口にほりこんだ。
数人の冒険者が騒いでいる。
「入口の所に荷物を置いている?」
ギルドの職員がしかりつけている。
「荷物は肌身離すなと言ってますよね?貴方達、ギルドの初心者講座受けなおしなさい。なんで入口に荷物置いてたんですか?」
「その方が身軽に動けるから……」
騒いでいる冒険者のリーダーらしき少年、せいぜい15といったところか。
「で、これからの水分や食事はどうしますか?」
「あ……」
「スライム舐めちゃいけません。あいつらは雑食性です。全てを溶かしながら体内に取り込むので貴方達の荷物はなくなります」
その集団のまだ12才くらいの、新人冒険者の女の子が泣き出した。
「ママに怒られる」
エドはこういうのは放置に限るなと目を瞑って壁に体をもたせかけて休んでいた。一瞬だけ眠ったようだ。次に目を開けると下へ向かう階段は人がぎっしりになっていた。
下の階層では角ウサギで溢れているそうだ。
「なぁ、……スライム、大きくなってないか?」
「んで外に向かってる?」
少年たちの不安そうな声が聞こえてエドは立ち上がり、薄暗い仲目を凝らして1階層目を見てみた。半透明のはずのスライムに赤や緑の色がついているやつがいる。
「亜種……?」
エドの呟きに数人の冒険者がエドの側に来た。
「まずいな……これ。あいつら外に出ようとしてないか?」
「……モンスター津波再来か?」
「ちょっと俺、係員さんに話してくる」
「たのむわ。……あんたボウガン使いだよな?」
「ああ。一応」
エドは獲物を弱らせるために酸入りの弾を使い、止めは剣というスタイルをとっている。
「……あんたには協力してもらう」
彼はDランクの戦士で今日は孤児院の『弟妹』の監督に来ているという事だった。
「それ麻痺弾入ってるだろ?」
「弾、沢山はないぞ。一発目麻痺させてあとは剣で殴ってるからな」
「俺が頼みたいのは一発だけ当てて欲しい。それで鈍ったら毒矢使いのやつが矢をぶち込んで、鈍らせて物理的に潰していくから」
エドは頷いた。
「色変わりがでたって?不味いな」
Dランクの戦士がギルド職員に頷く。
「あのまま合体されるとキングスライムになりますね」
「キングになるならいいが色変わりのまま外に出られるとか外でキングを作られたら……」
結局エドを含む動けるメンバで入口を目指し、入口の階段あたりでの本格戦闘を行う事になった。下の階層を目指す階段からは余裕が出たら見える範囲のスライムを削ってもらう事になった。
妙にヒステリックな声で聖女がわめく。
「今は冒険者ですもの。与えられた仕事をちゃんとこなすのが先でしょう?」
マドレーヌの大きな少しつり目の青い目がじっと聖女を見る。聖女は同性なのにその瞳にどぎまぎしてしまう。
「と、とにかく。アル様の横はあたしなの」
聖女の言葉ににっこりとマドレーヌは少し心配そうに返す。
「ダンジョン、階層重ねる事に相手も強くなりますからお気をつけて」
聖女は真正面から心配されて毒気が抜かれたようだった。
自分が肩で息をしているのだ判る。いくら潰してもスライムと角ウサギが沸いてくるのだ。エドが深呼吸をし、腰を伸ばした瞬間、目の前が紫がかった白光で満たされる。
「ちょっと予想外に多いから、一端このフロアのモンスターを魔導師が一掃しました。このまま、2階層目の階段まで急ぎますよ。階段はセーフエリアなのでそこで一息付けます。はい、急いで」
付き添いのギルドの職員がそこにいる十数人をせかす。エドは早めにセーフエリアに入って鞄から水を出し飲んで、宿で焼いてもらった堅焼きのクッキーを一つ口にほりこんだ。
数人の冒険者が騒いでいる。
「入口の所に荷物を置いている?」
ギルドの職員がしかりつけている。
「荷物は肌身離すなと言ってますよね?貴方達、ギルドの初心者講座受けなおしなさい。なんで入口に荷物置いてたんですか?」
「その方が身軽に動けるから……」
騒いでいる冒険者のリーダーらしき少年、せいぜい15といったところか。
「で、これからの水分や食事はどうしますか?」
「あ……」
「スライム舐めちゃいけません。あいつらは雑食性です。全てを溶かしながら体内に取り込むので貴方達の荷物はなくなります」
その集団のまだ12才くらいの、新人冒険者の女の子が泣き出した。
「ママに怒られる」
エドはこういうのは放置に限るなと目を瞑って壁に体をもたせかけて休んでいた。一瞬だけ眠ったようだ。次に目を開けると下へ向かう階段は人がぎっしりになっていた。
下の階層では角ウサギで溢れているそうだ。
「なぁ、……スライム、大きくなってないか?」
「んで外に向かってる?」
少年たちの不安そうな声が聞こえてエドは立ち上がり、薄暗い仲目を凝らして1階層目を見てみた。半透明のはずのスライムに赤や緑の色がついているやつがいる。
「亜種……?」
エドの呟きに数人の冒険者がエドの側に来た。
「まずいな……これ。あいつら外に出ようとしてないか?」
「……モンスター津波再来か?」
「ちょっと俺、係員さんに話してくる」
「たのむわ。……あんたボウガン使いだよな?」
「ああ。一応」
エドは獲物を弱らせるために酸入りの弾を使い、止めは剣というスタイルをとっている。
「……あんたには協力してもらう」
彼はDランクの戦士で今日は孤児院の『弟妹』の監督に来ているという事だった。
「それ麻痺弾入ってるだろ?」
「弾、沢山はないぞ。一発目麻痺させてあとは剣で殴ってるからな」
「俺が頼みたいのは一発だけ当てて欲しい。それで鈍ったら毒矢使いのやつが矢をぶち込んで、鈍らせて物理的に潰していくから」
エドは頷いた。
「色変わりがでたって?不味いな」
Dランクの戦士がギルド職員に頷く。
「あのまま合体されるとキングスライムになりますね」
「キングになるならいいが色変わりのまま外に出られるとか外でキングを作られたら……」
結局エドを含む動けるメンバで入口を目指し、入口の階段あたりでの本格戦闘を行う事になった。下の階層を目指す階段からは余裕が出たら見える範囲のスライムを削ってもらう事になった。
6
お気に入りに追加
74
あなたにおすすめの小説

元婚約者が「俺の子を育てろ」と言って来たのでボコろうと思います。
音爽(ネソウ)
恋愛
結婚間近だった彼が使用人の娘と駆け落ちをしてしまった、私は傷心の日々を過ごしたがなんとか前を向くことに。しかし、裏切り行為から3年が経ったある日……
*体調を崩し絶不調につきリハビリ作品です。長い目でお読みいただければ幸いです。

新しい聖女が見付かったそうなので、天啓に従います!
月白ヤトヒコ
ファンタジー
空腹で眠くて怠い中、王室からの呼び出しを受ける聖女アルム。
そして告げられたのは、新しい聖女の出現。そして、暇を出すから還俗せよとの解雇通告。
新しい聖女は公爵令嬢。そんなお嬢様に、聖女が務まるのかと思った瞬間、アルムは眩い閃光に包まれ――――
自身が使い潰された挙げ句、処刑される未来を視た。
天啓です! と、アルムは――――
表紙と挿し絵はキャラメーカーで作成。

姉から奪うことしかできない妹は、ザマァされました
饕餮
ファンタジー
わたくしは、オフィリア。ジョンパルト伯爵家の長女です。
わたくしには双子の妹がいるのですが、使用人を含めた全員が妹を溺愛するあまり、我儘に育ちました。
しかもわたくしと色違いのものを両親から与えられているにもかかわらず、なぜかわたくしのものを欲しがるのです。
末っ子故に甘やかされ、泣いて喚いて駄々をこね、暴れるという貴族女性としてはあるまじき行為をずっとしてきたからなのか、手に入らないものはないと考えているようです。
そんなあざといどころかあさましい性根を持つ妹ですから、いつの間にか両親も兄も、使用人たちですらも絆されてしまい、たとえ嘘であったとしても妹の言葉を鵜呑みにするようになってしまいました。
それから数年が経ち、学園に入学できる年齢になりました。が、そこで兄と妹は――
n番煎じのよくある妹が姉からものを奪うことしかしない系の話です。
全15話。
※カクヨムでも公開しています
拝啓、愛しの侯爵様~行き遅れ令嬢ですが、運命の人は案外近くにいたようです~
藤原ライラ
ファンタジー
心を奪われた手紙の先には、運命の人が待っていた――
子爵令嬢のキャロラインは、両親を早くに亡くし、年の離れた弟の面倒を見ているうちにすっかり婚期を逃しつつあった。夜会でも誰からも相手にされない彼女は、新しい出会いを求めて文通を始めることに。届いた美しい字で洗練された内容の手紙に、相手はきっとうんと年上の素敵なおじ様のはずだとキャロラインは予想する。
彼とのやり取りにときめく毎日だがそれに難癖をつける者がいた。幼馴染で侯爵家の嫡男、クリストファーである。
「理想の相手なんかに巡り合えるわけないだろう。現実を見た方がいい」
四つ年下の彼はいつも辛辣で彼女には冷たい。
そんな時キャロラインは、夜会で想像した文通相手とそっくりな人物に出会ってしまう……。
文通相手の正体は一体誰なのか。そしてキャロラインの恋の行方は!?
じれじれ両片思いです。
※他サイトでも掲載しています。
イラスト:ひろ様(https://xfolio.jp/portfolio/hiro_foxtail)

家出したとある辺境夫人の話
あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
『突然ではございますが、私はあなたと離縁し、このお屋敷を去ることにいたしました』
これは、一通の置き手紙からはじまった一組の心通わぬ夫婦のお語。
※ちゃんとハッピーエンドです。ただし、主人公にとっては。
※他サイトでも掲載します。

私のお父様とパパ様
棗
ファンタジー
非常に過保護で愛情深い二人の父親から愛される娘メアリー。
婚約者の皇太子と毎月あるお茶会で顔を合わせるも、彼の隣には幼馴染の女性がいて。
大好きなお父様とパパ様がいれば、皇太子との婚約は白紙になっても何も問題はない。
※箱入り娘な主人公と娘溺愛過保護な父親コンビのとある日のお話。
追記(2021/10/7)
お茶会の後を追加します。
更に追記(2022/3/9)
連載として再開します。

前代未聞のダンジョンメーカー
黛 ちまた
ファンタジー
七歳になったアシュリーが神から授けられたスキルは"テイマー"、"魔法"、"料理"、"ダンジョンメーカー"。
けれどどれも魔力が少ない為、イマイチ。
というか、"ダンジョンメーカー"って何ですか?え?亜空間を作り出せる能力?でも弱くて使えない?
そんなアシュリーがかろうじて使える料理で自立しようとする、のんびりお料理話です。
小説家になろうでも掲載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる