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第二章
公爵と前神官長 1
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小屋全体がかっと光る。
「なんだ、今の」
「最大魔力を込めた。今は戦闘時期でもないし人が運び込まれてこないのでな。魔力をもてあましとったんじゃよ」
元神官長が渡してくれた魔石は最上級品であった。
「エチエンヌ、お前さんが動くって事は王族がらみだろ」
「王族というか、ピンポイントに陛下がらみだな」
「お前の甥っ子は」
公爵はふーと遠い目になった。
「あいつ、退位と同時にな、病気療養ってことになっとるじゃろ」
「お前の甥だ。……遊び歩いてるんだろ?」
「ご明察。冒険者登録して色んな国に飛んどる。ここ数年は顔みてない」
前神官長はお手上げ、というしぐさをする。
「さすがというべきかな」
「くそ道楽息子だわな。……エクトルには苦労かけてると思う。王太子のころからな……。好いた女を正妃にさせてやれなんだのは残念だ」
赤い酒の香りがふわっと香る。
「今の聖女を認定したのはだれだ?」
前神官長がとある神官の名前を言う。その神官は聖女が認定され正妃の側に着いた夜に亡くなった男だった。亡くなり方も体中の血を抜かれ、主神、太陽神の像に逆さづりにされた状態でみつかったのだ。そう、神殿内で死んでいたのだ。
神罰だと大騒ぎになったがうやむやのままに事件は緘口令が敷かれもう人の口に上る事もなくなった。
前神官長が隠棲しここに住みだしたのは事件の後であった。
「あれから刺客は年に数回、か」
公爵の言葉を前神官長は面白そうに聞いている。
「俺は釣り餌だもんな」
「そういうなよ。……おれもある筋から指示をうけててな」
神官長はじっと公爵を見る。
「エチエンヌ、それはエクトル陛下ではなかろう?」
「ああ……、陛下の知人ではあるかな」
精霊を知人と呼んでいいものか、と公爵は考える。
「知人、ね。……ま、大体なにかは知ってる。神殿に伝承も残ってるからな」
「……全ての神官が読めるのか?」
公爵はあからさまに警戒した。前神官長は肩をすくめる。
「神官長かつ素養がないと読めない。古語で書かれてるからな」
公爵は安心した顔になった。
「かつ本を開けるだけの魔力がないとな。今の神官長は無理だろうな」
今の神官長は古語が読めないので、古語の書類は王族出身の副神官の下に着いている神官
が現代語に翻訳して渡しているらしい。
「あの子は元気でやってるのかな?」
公爵の問いに前神官長は首を傾げる。
「……教会の書類がかりになっとるね。そういう素養ある人間を集めて書記部を作るべきかって副神官長が悩んでるよ」
「そうか、古語か。そうだな、古語を使えばいけるな」
「なにが?」
「とある人と連絡を取るためにギルドを通さないと届けられなくてな」
「ギルド?」
神官長が怪訝な顔で訊ねる。
「冒険者ギルド。間にいる人間を信じ切れなくてな」
「なんだ、今の」
「最大魔力を込めた。今は戦闘時期でもないし人が運び込まれてこないのでな。魔力をもてあましとったんじゃよ」
元神官長が渡してくれた魔石は最上級品であった。
「エチエンヌ、お前さんが動くって事は王族がらみだろ」
「王族というか、ピンポイントに陛下がらみだな」
「お前の甥っ子は」
公爵はふーと遠い目になった。
「あいつ、退位と同時にな、病気療養ってことになっとるじゃろ」
「お前の甥だ。……遊び歩いてるんだろ?」
「ご明察。冒険者登録して色んな国に飛んどる。ここ数年は顔みてない」
前神官長はお手上げ、というしぐさをする。
「さすがというべきかな」
「くそ道楽息子だわな。……エクトルには苦労かけてると思う。王太子のころからな……。好いた女を正妃にさせてやれなんだのは残念だ」
赤い酒の香りがふわっと香る。
「今の聖女を認定したのはだれだ?」
前神官長がとある神官の名前を言う。その神官は聖女が認定され正妃の側に着いた夜に亡くなった男だった。亡くなり方も体中の血を抜かれ、主神、太陽神の像に逆さづりにされた状態でみつかったのだ。そう、神殿内で死んでいたのだ。
神罰だと大騒ぎになったがうやむやのままに事件は緘口令が敷かれもう人の口に上る事もなくなった。
前神官長が隠棲しここに住みだしたのは事件の後であった。
「あれから刺客は年に数回、か」
公爵の言葉を前神官長は面白そうに聞いている。
「俺は釣り餌だもんな」
「そういうなよ。……おれもある筋から指示をうけててな」
神官長はじっと公爵を見る。
「エチエンヌ、それはエクトル陛下ではなかろう?」
「ああ……、陛下の知人ではあるかな」
精霊を知人と呼んでいいものか、と公爵は考える。
「知人、ね。……ま、大体なにかは知ってる。神殿に伝承も残ってるからな」
「……全ての神官が読めるのか?」
公爵はあからさまに警戒した。前神官長は肩をすくめる。
「神官長かつ素養がないと読めない。古語で書かれてるからな」
公爵は安心した顔になった。
「かつ本を開けるだけの魔力がないとな。今の神官長は無理だろうな」
今の神官長は古語が読めないので、古語の書類は王族出身の副神官の下に着いている神官
が現代語に翻訳して渡しているらしい。
「あの子は元気でやってるのかな?」
公爵の問いに前神官長は首を傾げる。
「……教会の書類がかりになっとるね。そういう素養ある人間を集めて書記部を作るべきかって副神官長が悩んでるよ」
「そうか、古語か。そうだな、古語を使えばいけるな」
「なにが?」
「とある人と連絡を取るためにギルドを通さないと届けられなくてな」
「ギルド?」
神官長が怪訝な顔で訊ねる。
「冒険者ギルド。間にいる人間を信じ切れなくてな」
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