悪役令嬢、冒険者になる 【完結】

あくの

文字の大きさ
上 下
49 / 212
第二章

次の国へ

しおりを挟む
 その商会の『門』を使った転移には魔力が必要なのだがそれはアルの魔力で補った。アルはマドレーヌと違って全く生活魔法を使えず、習ってもいなかったのでこの数年、魔力を使わず暮らしていた。それでも3人が通るのに十分な魔力を供給できた。
 ゲートを通った先は前の店よりは大きな商店だった、そして王都ではなく湖のほとりの街であった。

「王都まではうちの馬車で送ります」

その店の亭主は年若い男であった。

「ここはこの国での本店と聞きましたが、王都に本店を置かないのですか?」

「うちの商会の事情で水のそばがいいので。この国は海はないので湖のほとりに本店をおいてます」

愛想の良い青年は四人に宿も用意してくれていた。

「ここまでしてもらっても……」

「大丈夫です。過分の支払いをウージェーヌ様から頂いてます」

エドとエディとアルが同室、マドレーヌは別の部屋となっていて至れり尽くせりであった。

「とりあえず王都行ってギルドかな」

「そうですね……」

エドが考え込んでいる。

「エド、どうした?」

「いえ、こういう移動の仕方をしていたら国境の関所のチェックは入ってないけど身分証明書的にどうなのかなって」

マドレーヌが事も無げにいう。

「ああ、冒険者証はそう言うところすっ飛ばしてくれるから。山の中で獲物追っかけてたら国境超えて隣の国、なんて普通にあるからね。エディたちはそう言う経験は?」

エディもアルも首を横に振る。

「そっかー。うちの国の周りとはそういう条約あるみたいだしそのための冒険者ギルドなの。ただし犯罪者がこういう手段で逃げるのは……神殿かギルドに大金積める人だと思う。私見だけども」

「何故そう思います?」

エドは年下の令嬢になおも話を聞きたがる。

「うん。ギルドだとこういうゲートの使用許可を出せる人は決まってて、基本的に魔力契約で『冒険者登録してる人』にしか貸せないのだけどそれを破らせるなら契約元のギルド長以上の魔力が必要でそれって大魔術師をも越える魔力って事だから……。犯罪者はばれたら冒険者登録は失効するしね。噂だけどギルドの許可がない人が解除したら呪われて干からびて死ぬとか……」

男3人は感心して聞いている。

「ま、魔力契約の事は本当。許可がない人が転移させたら、ってのは噂でしかないわよ?
私が知ってる職員さんに試した人いないし。……そうね、その国の王族とかは冒険者じゃ
なくても使えるはず」

アルはそんなことは知らなかった。

「まぁ、王族が使えるのは国内だって教えてくれた」

マドレーヌは言った。その後にフランサニュー公爵が、という言葉が続く事はアルにだけ
は判った。

「とりあえず、夕飯食べにでようか?」

エディが気楽に言い出した。



湖畔の街でエドとマドレーヌ、エディとアルという風に分かれて歩く。

「さっきの門で犯罪者が国外に出た時はどうなるんだろう」

「んー、そうねぇ。多分ああいう多岐に渡る国に店を置いている商会は犯罪者と関わらな
いと思う」

「じゃ。店の人が犯罪者に殺されてあの門をつかわれたら?」

「あの門を複数人通せる分の魔力を平民はまず持っていない。下級貴族もまず無理、……上級貴族の犯罪者、逃亡者なら神殿にお金積んだ方が確実かな」

マドレーヌは考え考え話している。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

元婚約者が「俺の子を育てろ」と言って来たのでボコろうと思います。

音爽(ネソウ)
恋愛
結婚間近だった彼が使用人の娘と駆け落ちをしてしまった、私は傷心の日々を過ごしたがなんとか前を向くことに。しかし、裏切り行為から3年が経ったある日…… *体調を崩し絶不調につきリハビリ作品です。長い目でお読みいただければ幸いです。

姉から奪うことしかできない妹は、ザマァされました

饕餮
ファンタジー
わたくしは、オフィリア。ジョンパルト伯爵家の長女です。 わたくしには双子の妹がいるのですが、使用人を含めた全員が妹を溺愛するあまり、我儘に育ちました。 しかもわたくしと色違いのものを両親から与えられているにもかかわらず、なぜかわたくしのものを欲しがるのです。 末っ子故に甘やかされ、泣いて喚いて駄々をこね、暴れるという貴族女性としてはあるまじき行為をずっとしてきたからなのか、手に入らないものはないと考えているようです。 そんなあざといどころかあさましい性根を持つ妹ですから、いつの間にか両親も兄も、使用人たちですらも絆されてしまい、たとえ嘘であったとしても妹の言葉を鵜呑みにするようになってしまいました。 それから数年が経ち、学園に入学できる年齢になりました。が、そこで兄と妹は―― n番煎じのよくある妹が姉からものを奪うことしかしない系の話です。 全15話。 ※カクヨムでも公開しています

野生児少女の生存日記

花見酒
ファンタジー
とある村に住んでいた少女、とある鑑定式にて自身の適性が無属性だった事で危険な森に置き去りにされ、その森で生き延びた少女の物語

魅了が解けた貴男から私へ

砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。 彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。 そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。 しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。 男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。 元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。 しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。 三話完結です。

【完結】義妹とやらが現れましたが認めません。〜断罪劇の次世代たち〜

福田 杜季
ファンタジー
侯爵令嬢のセシリアのもとに、ある日突然、義妹だという少女が現れた。 彼女はメリル。父親の友人であった彼女の父が不幸に見舞われ、親族に虐げられていたところを父が引き取ったらしい。 だがこの女、セシリアの父に欲しいものを買わせまくったり、人の婚約者に媚を打ったり、夜会で非常識な言動をくり返して顰蹙を買ったりと、どうしようもない。 「お義姉さま!」           . . 「姉などと呼ばないでください、メリルさん」 しかし、今はまだ辛抱のとき。 セシリアは来たるべき時へ向け、画策する。 ──これは、20年前の断罪劇の続き。 喜劇がくり返されたとき、いま一度鉄槌は振り下ろされるのだ。 ※ご指摘を受けて題名を変更しました。作者の見通しが甘くてご迷惑をおかけいたします。 旧題『義妹ができましたが大嫌いです。〜断罪劇の次世代たち〜』 ※初投稿です。話に粗やご都合主義的な部分があるかもしれません。生あたたかい目で見守ってください。 ※本編完結済みで、毎日1話ずつ投稿していきます。

(完結)「君を愛することはない」と言われて……

青空一夏
恋愛
ずっと憧れていた方に嫁げることになった私は、夫となった男性から「君を愛することはない」と言われてしまった。それでも、彼に尽くして温かい家庭をつくるように心がければ、きっと愛してくださるはずだろうと思っていたのよ。ところが、彼には好きな方がいて忘れることができないようだったわ。私は彼を諦めて実家に帰ったほうが良いのかしら? この物語は憧れていた男性の妻になったけれど冷たくされたお嬢様を守る戦闘侍女たちの活躍と、お嬢様の恋を描いた作品です。 主人公はお嬢様と3人の侍女かも。ヒーローの存在感増すようにがんばります! という感じで、それぞれの視点もあります。 以前書いたもののリメイク版です。多分、かなりストーリーが変わっていくと思うので、新しい作品としてお読みください。 ※カクヨム。なろうにも時差投稿します。 ※作者独自の世界です。

結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?

おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました! 皆様ありがとうございます。 「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」 眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。 「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」 ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。 ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視 上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。

転生した元悪役令嬢は地味な人生を望んでいる

花見 有
恋愛
前世、悪役令嬢だったカーラはその罪を償う為、処刑され人生を終えた。転生して中流貴族家の令嬢として生まれ変わったカーラは、今度は地味で穏やかな人生を過ごそうと思っているのに、そんなカーラの元に自国の王子、アーロンのお妃候補の話が来てしまった。

処理中です...