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第二章
グランサニュー公爵邸で樹を育てる
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テントというよりは日よけと自立型のハンモックが用意されて公爵夫人はほほ笑んだ。
「あら、子供の頃の夢がかないそう」
「夢?」
公爵が怪訝そうに訊ねる。
「そ、夢、満天の星の下で眠るってこと」
公爵夫人は本当に嬉しそうだった。公爵は暫く考えていたが、即、同じものをもう一つ用意させ夫人の横に置いた時は既に夕刻であった。夫人はまず樹の根本に穴を7つ掘って用意された魔石を埋めた。今日はチュニックに鹿皮のパンツという冒険者スタイルの夫人は髪を片側で三つ編みにしている。公爵もあわせて冒険者スタイルになっている。夫人曰く外なのでドレスで過ごす事もないでしょう、と。
公爵は若いころの彼女を思い出し満更でもなかった。結婚したころ、こういうスタイルで領内を見回ったなぁと懐かしく思い出す。
「さてと、お夕飯こちらにもってきていただくわね」
執事は事前に聞いていたので樹の下のテーブルに夕飯を用意する。今日は木の実を入れたパンで用意された具材を己でサンドイッチにするスタイルであった。公爵にはワインが供されたが夫人は水を飲んでいる。もうすでに何かが始まっているんだなと公爵は思った。今日に限って守護者は何も言わない。さやさやと葉を揺らすだけである。
「では夜中に夜食をお願いね」
夫人にしては珍しい事を言う、と公爵は思ったが何も言わない。守護者が何も言わないという事は受け入れているのだろうと判断する。
「じゃ、適当にだらだら過ごしましょうか。あ、貴方の魔力で本を読める程度の灯りをお願い」
公爵は何も言わず両手を首あわせたぐらいの大きさの灯りのボールを二人のハンモックの上に浮かべた。夫人はふわふわの浮かぶ灯りの下で日課のレース編みをする。殆ど手芸ができない夫人が覚えた唯一の手芸だった。長く編んだレースを適当な大きさに切って加工するのはメイドたちだった。そしてそう言うものは神殿のバザーに出されるのだ。
神殿の孤児院の事を考えながら公爵はうつらうつらしている。不思議とこの場所は外なのに寒さがない。うつらうつらする公爵を見て夫人はほほ笑んだ。そっとブランケットを公爵の体にかけると夫人はまたレース編みに戻った。
公爵は眠ていると地中からずるずると魔力を引き出して持っていかれる感覚で目が覚めた。
「あら、起きられました?……貴方の方の魔力はそんなに使わないようにお願いしたんだけど」
「誰に」
夫人の言葉を聞き公爵は訊ねる。
「守護者様に」
そこに守護者の声が公爵の頭に響く。
『いや、すまん。馴染みの魔力についついな』
「ついついじゃないだろう……」
公爵は呆れたように呟く。ついでに猛烈に空腹な事に気が付いた。
「腹が減ってる」
「そうでしょうね。そろそろ夜食にしましょうか」
執事が持て来たであろうバスケットをテーブルに置く。バスケットには魔法が掛かったポットにいれられたあったかい紅茶、ブランデーの小瓶もある。ポーションも入っている。そしてパテやピクルスや鹿のローストがある。
「また午前3字にお夜食がくるわ。この術を使ってる間は凄くお腹が空くの」
「そろそろ何をしてるか教えてくれんかな?」
公爵の求めに夫人はふふっといたずらっぽく笑った。
「これは本来7日かけて実行するものなんだけど、それを3日で実行してるの。普段だともっと魔力の吸出しは穏やかなんだけど。これを実行するとこの子の生育がよくなるの。それを西の辺境にも施そうと思って」
「……で、俺の方の魔力によりなじみがあるからチューチュー吸出してるってわけか」
公爵は銀の樹を見上げる。樹は同意するかのように銀色の葉を揺らしている。
「あら、子供の頃の夢がかないそう」
「夢?」
公爵が怪訝そうに訊ねる。
「そ、夢、満天の星の下で眠るってこと」
公爵夫人は本当に嬉しそうだった。公爵は暫く考えていたが、即、同じものをもう一つ用意させ夫人の横に置いた時は既に夕刻であった。夫人はまず樹の根本に穴を7つ掘って用意された魔石を埋めた。今日はチュニックに鹿皮のパンツという冒険者スタイルの夫人は髪を片側で三つ編みにしている。公爵もあわせて冒険者スタイルになっている。夫人曰く外なのでドレスで過ごす事もないでしょう、と。
公爵は若いころの彼女を思い出し満更でもなかった。結婚したころ、こういうスタイルで領内を見回ったなぁと懐かしく思い出す。
「さてと、お夕飯こちらにもってきていただくわね」
執事は事前に聞いていたので樹の下のテーブルに夕飯を用意する。今日は木の実を入れたパンで用意された具材を己でサンドイッチにするスタイルであった。公爵にはワインが供されたが夫人は水を飲んでいる。もうすでに何かが始まっているんだなと公爵は思った。今日に限って守護者は何も言わない。さやさやと葉を揺らすだけである。
「では夜中に夜食をお願いね」
夫人にしては珍しい事を言う、と公爵は思ったが何も言わない。守護者が何も言わないという事は受け入れているのだろうと判断する。
「じゃ、適当にだらだら過ごしましょうか。あ、貴方の魔力で本を読める程度の灯りをお願い」
公爵は何も言わず両手を首あわせたぐらいの大きさの灯りのボールを二人のハンモックの上に浮かべた。夫人はふわふわの浮かぶ灯りの下で日課のレース編みをする。殆ど手芸ができない夫人が覚えた唯一の手芸だった。長く編んだレースを適当な大きさに切って加工するのはメイドたちだった。そしてそう言うものは神殿のバザーに出されるのだ。
神殿の孤児院の事を考えながら公爵はうつらうつらしている。不思議とこの場所は外なのに寒さがない。うつらうつらする公爵を見て夫人はほほ笑んだ。そっとブランケットを公爵の体にかけると夫人はまたレース編みに戻った。
公爵は眠ていると地中からずるずると魔力を引き出して持っていかれる感覚で目が覚めた。
「あら、起きられました?……貴方の方の魔力はそんなに使わないようにお願いしたんだけど」
「誰に」
夫人の言葉を聞き公爵は訊ねる。
「守護者様に」
そこに守護者の声が公爵の頭に響く。
『いや、すまん。馴染みの魔力についついな』
「ついついじゃないだろう……」
公爵は呆れたように呟く。ついでに猛烈に空腹な事に気が付いた。
「腹が減ってる」
「そうでしょうね。そろそろ夜食にしましょうか」
執事が持て来たであろうバスケットをテーブルに置く。バスケットには魔法が掛かったポットにいれられたあったかい紅茶、ブランデーの小瓶もある。ポーションも入っている。そしてパテやピクルスや鹿のローストがある。
「また午前3字にお夜食がくるわ。この術を使ってる間は凄くお腹が空くの」
「そろそろ何をしてるか教えてくれんかな?」
公爵の求めに夫人はふふっといたずらっぽく笑った。
「これは本来7日かけて実行するものなんだけど、それを3日で実行してるの。普段だともっと魔力の吸出しは穏やかなんだけど。これを実行するとこの子の生育がよくなるの。それを西の辺境にも施そうと思って」
「……で、俺の方の魔力によりなじみがあるからチューチュー吸出してるってわけか」
公爵は銀の樹を見上げる。樹は同意するかのように銀色の葉を揺らしている。
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