41 / 212
幕間
グランサニュー公爵邸の集まり 1
しおりを挟む
各辺境伯が自慢の軽食えお集めたテーブルは今は酒ではなくお茶を嗜んでいる。
「ぬしから話があるとな?」
グランサニュー公爵から促されベルティエ公爵は第一王子の失踪を告げた。ウージェーヌ以外の辺境伯と公爵は異口同音だった。
「出奔したか」
皆がそう言ったのにベルティエ公爵は驚いた。
「何故そう思うんですか?」
「あの坊主、実行力があるからな。王宮が気に入らなんだら出て行くだろ」
グランサニュー公爵はアルマンの事をそう評価した。ここでウージェーヌが報告を続ける。
「何がどうあったのか知らないが、うちの末っ子が現地でアルマン王子と合流したらしい」
銀の樹の葉が風もないのに揺れている。グランサニュー公爵には守護者の馬鹿笑いが聞こえている。
「マドレーヌちゃんかぁ」
北の公爵も笑っている。
「どうにもうちの娘、問題の真ん中に突っ込んでいくのか……」
ウージェーヌの嘆きにジェラールは心底同情と同意を感じる。
「一応、金を稼ぎながら北上して中央大砂漠から砂の国、砂の国から虎人国、冒険者自治区にむかうと」
「わしが旅費をだすからあの国から砂の国まで護衛してもらって」
公爵の申出にウージェーヌは首を横に振った。
「うちの娘、たぶんこの旅で冒険者としての力試しをするつもりなのではと」
「しかし王族と一緒なのに」
ジェラールが心配そうだ。
「……アルマン王子もこの数年、冒険者として生きて来たらしくて。『帰りながら他の国を見てくる』と」
ウージェーヌはギルドを通した最新の手紙を見せる。これも個人認証の魔術をかけてあったが途中で王宮に持ち込まれた事をジェラールとウージェーヌが雇った人間がチェックしている。アルマンからの手紙には黒百合の印が黒々と押されている。
女性達は別の場所で楽しくお茶をしていた。セイラ妃は妹と本当に久しぶりに会って感激のあまり言葉も出ないようだった。ミシェル妃は遠縁であるグランサニュー公爵夫人と実家絡みのこまごまとしたことをお互い報告している。
「陛下は明日いらっしゃるの?」
公爵夫人におっとりとと訊ねられてミシェル妃は首を横に振る。
「今日の夕食にお忍びでいらっしゃるって。昼間は会議があるし」
「あら、うちの人行かなくて良かったのかしら」
「……行くべきだとは思いますが」
ソフィア妃とウージェーヌの妻、ジョアンは角ウサギの肉に関しての話が弾んでいるようだった。第四側妃と第五側妃はこれを機にと里帰りをしている。
ジョアンはこの国の人間ではあるが親の仕事の都合で他国で育っている。それはソフィア妃の故郷で、他国の子爵令嬢とは触れ合う事はなかったが、貴族学園に同時期にいたという事が今回わかったので二人は大盛り上がりだった。
そっと公爵が妻を呼ぶ。
「何、あなた?」
「女学生の間で流行っていた蝶手紙だか鳩手紙だかの仕組みを説明できるか?」
「できますけど……、男の方、何の話をしてるの?」
そう言いながらも夫人はいそいそと夫に着いていく。ミシェル妃はそれを見て呟く。
「相変わらず仲がよろしいですわね」
「ぬしから話があるとな?」
グランサニュー公爵から促されベルティエ公爵は第一王子の失踪を告げた。ウージェーヌ以外の辺境伯と公爵は異口同音だった。
「出奔したか」
皆がそう言ったのにベルティエ公爵は驚いた。
「何故そう思うんですか?」
「あの坊主、実行力があるからな。王宮が気に入らなんだら出て行くだろ」
グランサニュー公爵はアルマンの事をそう評価した。ここでウージェーヌが報告を続ける。
「何がどうあったのか知らないが、うちの末っ子が現地でアルマン王子と合流したらしい」
銀の樹の葉が風もないのに揺れている。グランサニュー公爵には守護者の馬鹿笑いが聞こえている。
「マドレーヌちゃんかぁ」
北の公爵も笑っている。
「どうにもうちの娘、問題の真ん中に突っ込んでいくのか……」
ウージェーヌの嘆きにジェラールは心底同情と同意を感じる。
「一応、金を稼ぎながら北上して中央大砂漠から砂の国、砂の国から虎人国、冒険者自治区にむかうと」
「わしが旅費をだすからあの国から砂の国まで護衛してもらって」
公爵の申出にウージェーヌは首を横に振った。
「うちの娘、たぶんこの旅で冒険者としての力試しをするつもりなのではと」
「しかし王族と一緒なのに」
ジェラールが心配そうだ。
「……アルマン王子もこの数年、冒険者として生きて来たらしくて。『帰りながら他の国を見てくる』と」
ウージェーヌはギルドを通した最新の手紙を見せる。これも個人認証の魔術をかけてあったが途中で王宮に持ち込まれた事をジェラールとウージェーヌが雇った人間がチェックしている。アルマンからの手紙には黒百合の印が黒々と押されている。
女性達は別の場所で楽しくお茶をしていた。セイラ妃は妹と本当に久しぶりに会って感激のあまり言葉も出ないようだった。ミシェル妃は遠縁であるグランサニュー公爵夫人と実家絡みのこまごまとしたことをお互い報告している。
「陛下は明日いらっしゃるの?」
公爵夫人におっとりとと訊ねられてミシェル妃は首を横に振る。
「今日の夕食にお忍びでいらっしゃるって。昼間は会議があるし」
「あら、うちの人行かなくて良かったのかしら」
「……行くべきだとは思いますが」
ソフィア妃とウージェーヌの妻、ジョアンは角ウサギの肉に関しての話が弾んでいるようだった。第四側妃と第五側妃はこれを機にと里帰りをしている。
ジョアンはこの国の人間ではあるが親の仕事の都合で他国で育っている。それはソフィア妃の故郷で、他国の子爵令嬢とは触れ合う事はなかったが、貴族学園に同時期にいたという事が今回わかったので二人は大盛り上がりだった。
そっと公爵が妻を呼ぶ。
「何、あなた?」
「女学生の間で流行っていた蝶手紙だか鳩手紙だかの仕組みを説明できるか?」
「できますけど……、男の方、何の話をしてるの?」
そう言いながらも夫人はいそいそと夫に着いていく。ミシェル妃はそれを見て呟く。
「相変わらず仲がよろしいですわね」
7
お気に入りに追加
74
あなたにおすすめの小説

元婚約者が「俺の子を育てろ」と言って来たのでボコろうと思います。
音爽(ネソウ)
恋愛
結婚間近だった彼が使用人の娘と駆け落ちをしてしまった、私は傷心の日々を過ごしたがなんとか前を向くことに。しかし、裏切り行為から3年が経ったある日……
*体調を崩し絶不調につきリハビリ作品です。長い目でお読みいただければ幸いです。

姉から奪うことしかできない妹は、ザマァされました
饕餮
ファンタジー
わたくしは、オフィリア。ジョンパルト伯爵家の長女です。
わたくしには双子の妹がいるのですが、使用人を含めた全員が妹を溺愛するあまり、我儘に育ちました。
しかもわたくしと色違いのものを両親から与えられているにもかかわらず、なぜかわたくしのものを欲しがるのです。
末っ子故に甘やかされ、泣いて喚いて駄々をこね、暴れるという貴族女性としてはあるまじき行為をずっとしてきたからなのか、手に入らないものはないと考えているようです。
そんなあざといどころかあさましい性根を持つ妹ですから、いつの間にか両親も兄も、使用人たちですらも絆されてしまい、たとえ嘘であったとしても妹の言葉を鵜呑みにするようになってしまいました。
それから数年が経ち、学園に入学できる年齢になりました。が、そこで兄と妹は――
n番煎じのよくある妹が姉からものを奪うことしかしない系の話です。
全15話。
※カクヨムでも公開しています

転生ヒロインは不倫が嫌いなので地道な道を選らぶ
karon
ファンタジー
デビュタントドレスを見た瞬間アメリアはかつて好きだった乙女ゲーム「薔薇の言の葉」の世界に転生したことを悟った。
しかし、攻略対象に張り付いた自分より身分の高い悪役令嬢と戦う危険性を考え、攻略対象完全無視でモブとくっつくことを決心、しかし、アメリアの思惑は思わぬ方向に横滑りし。

魅了が解けた貴男から私へ
砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。
彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。
そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。
しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。
男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。
元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。
しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。
三話完結です。


【完結】義妹とやらが現れましたが認めません。〜断罪劇の次世代たち〜
福田 杜季
ファンタジー
侯爵令嬢のセシリアのもとに、ある日突然、義妹だという少女が現れた。
彼女はメリル。父親の友人であった彼女の父が不幸に見舞われ、親族に虐げられていたところを父が引き取ったらしい。
だがこの女、セシリアの父に欲しいものを買わせまくったり、人の婚約者に媚を打ったり、夜会で非常識な言動をくり返して顰蹙を買ったりと、どうしようもない。
「お義姉さま!」 . .
「姉などと呼ばないでください、メリルさん」
しかし、今はまだ辛抱のとき。
セシリアは来たるべき時へ向け、画策する。
──これは、20年前の断罪劇の続き。
喜劇がくり返されたとき、いま一度鉄槌は振り下ろされるのだ。
※ご指摘を受けて題名を変更しました。作者の見通しが甘くてご迷惑をおかけいたします。
旧題『義妹ができましたが大嫌いです。〜断罪劇の次世代たち〜』
※初投稿です。話に粗やご都合主義的な部分があるかもしれません。生あたたかい目で見守ってください。
※本編完結済みで、毎日1話ずつ投稿していきます。
(完結)「君を愛することはない」と言われて……
青空一夏
恋愛
ずっと憧れていた方に嫁げることになった私は、夫となった男性から「君を愛することはない」と言われてしまった。それでも、彼に尽くして温かい家庭をつくるように心がければ、きっと愛してくださるはずだろうと思っていたのよ。ところが、彼には好きな方がいて忘れることができないようだったわ。私は彼を諦めて実家に帰ったほうが良いのかしら?
この物語は憧れていた男性の妻になったけれど冷たくされたお嬢様を守る戦闘侍女たちの活躍と、お嬢様の恋を描いた作品です。
主人公はお嬢様と3人の侍女かも。ヒーローの存在感増すようにがんばります! という感じで、それぞれの視点もあります。
以前書いたもののリメイク版です。多分、かなりストーリーが変わっていくと思うので、新しい作品としてお読みください。
※カクヨム。なろうにも時差投稿します。
※作者独自の世界です。
新しい聖女が見付かったそうなので、天啓に従います!
月白ヤトヒコ
ファンタジー
空腹で眠くて怠い中、王室からの呼び出しを受ける聖女アルム。
そして告げられたのは、新しい聖女の出現。そして、暇を出すから還俗せよとの解雇通告。
新しい聖女は公爵令嬢。そんなお嬢様に、聖女が務まるのかと思った瞬間、アルムは眩い閃光に包まれ――――
自身が使い潰された挙げ句、処刑される未来を視た。
天啓です! と、アルムは――――
表紙と挿し絵はキャラメーカーで作成。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる