20 / 212
第一章
公爵、頭を抱える
しおりを挟む
嫡子たちは一息つく。
「我が家の庭仕事手伝ってくれて……それもすまない」
「それは気にすんな。家でいつもやってる事だし、体をつかわないと鈍る」
クロードはきっぱり言った。
「……フロランだけ先に帰してもらえないかな。そろそろ魔獣退治なんだ。俺が抜けてフロランとマドレーヌもいないとなると」
「善処する。父と公爵の意向もあるから」
「まだかたづいてないとはいえ、マドレーヌも見つかったし」
クロードの言葉にアレンは驚く。
「え?見つかった?」
「あれ?オヤジ、知らせてないのか?……聞かなかった事に」
「できませんよ」
かぶせ気味にアレンは答える。クロードはしくじったな、と思った。
「それも鑑みて答えを出してくれ」
クロードは頭を切り替えた。鬼が出るか蛇がでるか、出たとこ勝負だな、と腹を据える。
「マドレーヌ嬢が見つかった、と」
夜にペルティエ公爵とクロードはアルノー伯爵家の応接間で対峙している。
「そうです」
「今の状況は?」
「飛んだ国の王都にいるようですね。冒険者ギルドを連絡に使ってるようですが詳細な事はわかりません。父が知らせてきたのは見つかったという事と遠方の国にいるという事だけなので」
「……そうか。お父上をこちらに呼びたいのだが」
「今は無理ですよ。魔獣退治の時期が来ますから。俺とフロランが居ないのに父まで王都に来るのは不可能です。もちろん、うちの領地を魔獣で溢れさせて近隣の領地も荒らして構わないというのなら父もこちらに来ることは可能でしょうが」
クロードはきっぱりと言い切った。ベルティエ公爵は顔には出さなかったがクロードがきっちり自分に意見を言える事を評価した。もちろん、この場では爵位によるマナーは取っ払っている。
「……君たち兄弟が領地に帰ればお父上は王都に来れるかな?」
「正直難しいです。……多分ですが、俺達がここにいる間の魔獣の間引きが出来てませんから今回はてんてこまいかと」
「間引き?」
「ええ、毎日森の魔獣を間引きます。俺達がいなくなるのが判ってたら多めに冒険者を依頼するんですが……。今回は資金繰りも難しい。婚約の違約金を支払って家の最低減のお金を残して……。それでも足りないって俺達がここで滅私奉公しろ、って言われましたからね。アランさんに」
クロードはじっとベルティエ公爵を見た。公爵はそのあたりの事は余り知らなかった。
「まず、アランさんは勝手に違約金をとりたててます。自分がマドレーヌを遠方に送ったくせに『勝手に逃げた』次女の責任を我が家だ取れ、と」
「……伯爵に聞いてないのだが」
クロードは肩を竦める。
「ネイサン殿下の威を利用しての事ですね。こっちも近衛まで出張ってこられたんで……」
ベルティエ公爵は頭を抱えた。甥も一緒になって馬鹿をやってたのか、と。
「ネイサン殿下もアランに炊きつけられてたみたいですけど」
「ううむ」
公爵は覚えがあった。未だに真の貴族とは、や貴族は王族を支えるのです、など貴族の上澄みだけで一見正論にみえるような事を言いアランに丸めこまれそうになるネイサンを見ているからだ。
「……ロクサーヌ嬢にも随分な事を言ってましたし」
公爵は思わず愚痴った。
「そうだな、私の親世代の意見を聞いているようだよ。女に騎士は勤まらないとか女は奥にいるべきだとか」
公爵は深く溜息をついた。
「我が家の庭仕事手伝ってくれて……それもすまない」
「それは気にすんな。家でいつもやってる事だし、体をつかわないと鈍る」
クロードはきっぱり言った。
「……フロランだけ先に帰してもらえないかな。そろそろ魔獣退治なんだ。俺が抜けてフロランとマドレーヌもいないとなると」
「善処する。父と公爵の意向もあるから」
「まだかたづいてないとはいえ、マドレーヌも見つかったし」
クロードの言葉にアレンは驚く。
「え?見つかった?」
「あれ?オヤジ、知らせてないのか?……聞かなかった事に」
「できませんよ」
かぶせ気味にアレンは答える。クロードはしくじったな、と思った。
「それも鑑みて答えを出してくれ」
クロードは頭を切り替えた。鬼が出るか蛇がでるか、出たとこ勝負だな、と腹を据える。
「マドレーヌ嬢が見つかった、と」
夜にペルティエ公爵とクロードはアルノー伯爵家の応接間で対峙している。
「そうです」
「今の状況は?」
「飛んだ国の王都にいるようですね。冒険者ギルドを連絡に使ってるようですが詳細な事はわかりません。父が知らせてきたのは見つかったという事と遠方の国にいるという事だけなので」
「……そうか。お父上をこちらに呼びたいのだが」
「今は無理ですよ。魔獣退治の時期が来ますから。俺とフロランが居ないのに父まで王都に来るのは不可能です。もちろん、うちの領地を魔獣で溢れさせて近隣の領地も荒らして構わないというのなら父もこちらに来ることは可能でしょうが」
クロードはきっぱりと言い切った。ベルティエ公爵は顔には出さなかったがクロードがきっちり自分に意見を言える事を評価した。もちろん、この場では爵位によるマナーは取っ払っている。
「……君たち兄弟が領地に帰ればお父上は王都に来れるかな?」
「正直難しいです。……多分ですが、俺達がここにいる間の魔獣の間引きが出来てませんから今回はてんてこまいかと」
「間引き?」
「ええ、毎日森の魔獣を間引きます。俺達がいなくなるのが判ってたら多めに冒険者を依頼するんですが……。今回は資金繰りも難しい。婚約の違約金を支払って家の最低減のお金を残して……。それでも足りないって俺達がここで滅私奉公しろ、って言われましたからね。アランさんに」
クロードはじっとベルティエ公爵を見た。公爵はそのあたりの事は余り知らなかった。
「まず、アランさんは勝手に違約金をとりたててます。自分がマドレーヌを遠方に送ったくせに『勝手に逃げた』次女の責任を我が家だ取れ、と」
「……伯爵に聞いてないのだが」
クロードは肩を竦める。
「ネイサン殿下の威を利用しての事ですね。こっちも近衛まで出張ってこられたんで……」
ベルティエ公爵は頭を抱えた。甥も一緒になって馬鹿をやってたのか、と。
「ネイサン殿下もアランに炊きつけられてたみたいですけど」
「ううむ」
公爵は覚えがあった。未だに真の貴族とは、や貴族は王族を支えるのです、など貴族の上澄みだけで一見正論にみえるような事を言いアランに丸めこまれそうになるネイサンを見ているからだ。
「……ロクサーヌ嬢にも随分な事を言ってましたし」
公爵は思わず愚痴った。
「そうだな、私の親世代の意見を聞いているようだよ。女に騎士は勤まらないとか女は奥にいるべきだとか」
公爵は深く溜息をついた。
7
お気に入りに追加
74
あなたにおすすめの小説

[完結]召喚に巻き込まれたけど元の世界に戻れないのでこの世界を楽しもうと思います
真那月 凜
ファンタジー
オリビエはある日突然知らない世界に召喚された
まぁよく聞く話である
オリビエの住む世界、ミルトゥは次元の狭間にあるらしく、目の前で人が消えたり、現れたり、いなくなった人が突然戻ってきたりするのは珍しい話ではないのだ
ただ、オリビエ自身がその対象になるとは思っていなかっただけのこと…
問題は召喚されたのがオリビエだけでなくもう一人いたこと
そして望まれたのは『歌姫』のスキルを持つ者だったということ
オリビエにはそのスキルがなくもう一人にはあった
巻き込まれたオリビエを元の世界に返してくれるわけもなくこの世界で生きていくことになるのだが…
+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-
カクヨム・なろうでも掲載開始しました
時々さかのぼって部分修正することがあります
誤字脱字の報告大歓迎です(かなり多いかと…)
感想としての掲載が不要の場合はその旨記載いただけると助かります
結婚しても別居して私は楽しくくらしたいので、どうぞ好きな女性を作ってください
シンさん
ファンタジー
サナス伯爵の娘、ニーナは隣国のアルデーテ王国の王太子との婚約が決まる。
国に行ったはいいけど、王都から程遠い別邸に放置され、1度も会いに来る事はない。
溺愛する女性がいるとの噂も!
それって最高!好きでもない男の子供をつくらなくていいかもしれないし。
それに私は、最初から別居して楽しく暮らしたかったんだから!
そんな別居願望たっぷりの伯爵令嬢と王子の恋愛ストーリー
最後まで書きあがっていますので、随時更新します。
表紙はエブリスタでBeeさんに描いて頂きました!綺麗なイラストが沢山ございます。リンク貼らせていただきました。

スライムと異世界冒険〜追い出されたが実は強かった
Miiya
ファンタジー
学校に一人で残ってた時、突然光りだし、目を開けたら、王宮にいた。どうやら異世界召喚されたらしい。けど鑑定結果で俺は『成長』 『テイム』しかなく、弱いと追い出されたが、実はこれが神クラスだった。そんな彼、多田真司が森で出会ったスライムと旅するお話。
*ちょっとネタばれ
水が大好きなスライム、シンジの世話好きなスライム、建築もしてしまうスライム、小さいけど鉱石仕分けたり探索もするスライム、寝るのが大好きな白いスライム等多種多様で個性的なスライム達も登場!!
*11月にHOTランキング一位獲得しました。
*なるべく毎日投稿ですが日によって変わってきますのでご了承ください。一話2000~2500で投稿しています。
*パソコンからの投稿をメインに切り替えました。ですので字体が違ったり点が変わったりしてますがご了承ください。

元婚約者が「俺の子を育てろ」と言って来たのでボコろうと思います。
音爽(ネソウ)
恋愛
結婚間近だった彼が使用人の娘と駆け落ちをしてしまった、私は傷心の日々を過ごしたがなんとか前を向くことに。しかし、裏切り行為から3年が経ったある日……
*体調を崩し絶不調につきリハビリ作品です。長い目でお読みいただければ幸いです。

新しい聖女が見付かったそうなので、天啓に従います!
月白ヤトヒコ
ファンタジー
空腹で眠くて怠い中、王室からの呼び出しを受ける聖女アルム。
そして告げられたのは、新しい聖女の出現。そして、暇を出すから還俗せよとの解雇通告。
新しい聖女は公爵令嬢。そんなお嬢様に、聖女が務まるのかと思った瞬間、アルムは眩い閃光に包まれ――――
自身が使い潰された挙げ句、処刑される未来を視た。
天啓です! と、アルムは――――
表紙と挿し絵はキャラメーカーで作成。

姉から奪うことしかできない妹は、ザマァされました
饕餮
ファンタジー
わたくしは、オフィリア。ジョンパルト伯爵家の長女です。
わたくしには双子の妹がいるのですが、使用人を含めた全員が妹を溺愛するあまり、我儘に育ちました。
しかもわたくしと色違いのものを両親から与えられているにもかかわらず、なぜかわたくしのものを欲しがるのです。
末っ子故に甘やかされ、泣いて喚いて駄々をこね、暴れるという貴族女性としてはあるまじき行為をずっとしてきたからなのか、手に入らないものはないと考えているようです。
そんなあざといどころかあさましい性根を持つ妹ですから、いつの間にか両親も兄も、使用人たちですらも絆されてしまい、たとえ嘘であったとしても妹の言葉を鵜呑みにするようになってしまいました。
それから数年が経ち、学園に入学できる年齢になりました。が、そこで兄と妹は――
n番煎じのよくある妹が姉からものを奪うことしかしない系の話です。
全15話。
※カクヨムでも公開しています

家出したとある辺境夫人の話
あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
『突然ではございますが、私はあなたと離縁し、このお屋敷を去ることにいたしました』
これは、一通の置き手紙からはじまった一組の心通わぬ夫婦のお語。
※ちゃんとハッピーエンドです。ただし、主人公にとっては。
※他サイトでも掲載します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる