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第一章
昼食での事 1
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マリアンヌ達が多少ぎくしゃくしながら庭でメイドたちも一緒に昼食を食べ始めた。ネイサンは素直にマリアンヌに無礼をわびた。ロクサーヌはネイサンがちゃんと謝れたことを褒める。様子を見ているとロクサーヌがいるとネイサンは素直な子供みたいになっていた。仲の良い姉弟という感じだ。
それにマリアンヌが和んでほほ笑んだ。
「あの二人仲がいんだよ、意外な事に」
マリアンヌの横にアレンが来た。マリアンヌはドロテアの横に座っている。
「でも、楽しそうですね。次兄と妹を見てるみたい」
「……うちの次男がごめんね。何考えてるんだか。父さんも」
アレンの眉間に皺が寄る。マリアンヌは返事出来なかった。
「そのあたりちゃんと考えてますから。お父様とも話し合ってます」
ドロテアがアレンに告げる。マリアンヌが皆の所に出てきてよかったと考えていた時にその二人はやってきた。
「俺を仲間外れですか、母上」
アランがバスチエ男爵令嬢リディを連れてやってきた。それからはアレンは傍若無人に振舞う。マリアンヌはアレンとリディに散々嫌味を言われたり、妹の為に『身売り』して来たくせにと言われたりする。ネイサンはおろおろとしていた。そこにロクサーヌが口を挟んだ。
「バスチエ男爵令嬢、何を勘違いしているの?」
「え?」
「あなたはこの場で一番爵位が低いの。こちらの使用人はみな子爵令嬢や令息、つまりあなたから声をかけることもはばかられる相手なのです」
「たかが使用人」
アランがそう言うとロクサーヌが切って捨てる。
「貴方に話しかけてません。私は貴方に話す許可をあたえません。黙って」
ロクサーヌはネイサンをたきつけて色んな悪事や怠ける事をそそのかすアランが大嫌いだった。正確にいうと大嫌いになった。多少傲岸だが悪い子ではないと10歳で保護者、曾祖父と祖父、そして乳母を失って帰国した少年になにくれとなく気を配ってきた。
アレンはロクサーヌの気性を理解していた。ネイサンの事も結構好きだった。なのでネイサンを支えるというロクサーヌの補佐に入るべく侯爵嫡男として勉学に武術に励んでいる。
「アラン、客人に何をしている」
「客人?だれが?この女は妹の不始末のしりぬぐいにこの家に来させたんだ。俺の婚約者の不始末を血縁に償ってもらって何が悪い」
アランは嘯いた。リディもそうだ、そうだとアランを応援する。
「アランう、このお嬢さんはどなたなの?私は紹介されてないわね」
「これは失礼」
アランは母親を舐めきっていた。女はすべからく男の下につき奉仕する存在だと祖父たちに教育されてきたのだ。それは「公爵令嬢」だって女だから男の下に着くのだ、と思っているのだ。
「リディ・バスチエ男爵令嬢。私の婚約者ですよ。彼女と結婚したら俺は貴族のままでいられる。なので俺はリディと結婚します」
「アラン、貴方の婚約者はマドレーヌ嬢です。婚約解消の書類もまだでてませんし、貴方がグランジエ家とのあれこれを動かす権利は何一つありません。わかってますか?」
「俺の婚約です。わかってますか?女風情が口を出す立場にないと思いますが?」
アランは小ばかにした口調で母親を揶揄う。
「嫡男としていうが、お前になにも権利はないぞ」
「お前が嫡男?は?まともな貴族としての教育も受けてないのに?だれが嫡男かなんて王家に言って変えてもらえばいいんだ。ね、ネイサン殿下。この家の嫡男、俺にしませんか?ってか父上にも引退してもらって俺がアルノー侯爵になると貴方に都合いいでしょう?」
ふふんという顔で言うが、いつものように『よっしゃ。よっしゃ、おれは王子だ』みたいな返事は返ってこなかった。
「いや……俺はそんな権限……」
「ネイサン殿下、そんな弱気じゃ国を率いていけませんよ」
アランは当たり前のように言う。ロクサーヌの声が飛ぶ。
「ネイサン、しゃんとして。……筆頭公爵家の跡継ぎとして申し渡します」
ロクサーヌは背筋を伸ばして一喝する。
「アラン、黙れ」
それにマリアンヌが和んでほほ笑んだ。
「あの二人仲がいんだよ、意外な事に」
マリアンヌの横にアレンが来た。マリアンヌはドロテアの横に座っている。
「でも、楽しそうですね。次兄と妹を見てるみたい」
「……うちの次男がごめんね。何考えてるんだか。父さんも」
アレンの眉間に皺が寄る。マリアンヌは返事出来なかった。
「そのあたりちゃんと考えてますから。お父様とも話し合ってます」
ドロテアがアレンに告げる。マリアンヌが皆の所に出てきてよかったと考えていた時にその二人はやってきた。
「俺を仲間外れですか、母上」
アランがバスチエ男爵令嬢リディを連れてやってきた。それからはアレンは傍若無人に振舞う。マリアンヌはアレンとリディに散々嫌味を言われたり、妹の為に『身売り』して来たくせにと言われたりする。ネイサンはおろおろとしていた。そこにロクサーヌが口を挟んだ。
「バスチエ男爵令嬢、何を勘違いしているの?」
「え?」
「あなたはこの場で一番爵位が低いの。こちらの使用人はみな子爵令嬢や令息、つまりあなたから声をかけることもはばかられる相手なのです」
「たかが使用人」
アランがそう言うとロクサーヌが切って捨てる。
「貴方に話しかけてません。私は貴方に話す許可をあたえません。黙って」
ロクサーヌはネイサンをたきつけて色んな悪事や怠ける事をそそのかすアランが大嫌いだった。正確にいうと大嫌いになった。多少傲岸だが悪い子ではないと10歳で保護者、曾祖父と祖父、そして乳母を失って帰国した少年になにくれとなく気を配ってきた。
アレンはロクサーヌの気性を理解していた。ネイサンの事も結構好きだった。なのでネイサンを支えるというロクサーヌの補佐に入るべく侯爵嫡男として勉学に武術に励んでいる。
「アラン、客人に何をしている」
「客人?だれが?この女は妹の不始末のしりぬぐいにこの家に来させたんだ。俺の婚約者の不始末を血縁に償ってもらって何が悪い」
アランは嘯いた。リディもそうだ、そうだとアランを応援する。
「アランう、このお嬢さんはどなたなの?私は紹介されてないわね」
「これは失礼」
アランは母親を舐めきっていた。女はすべからく男の下につき奉仕する存在だと祖父たちに教育されてきたのだ。それは「公爵令嬢」だって女だから男の下に着くのだ、と思っているのだ。
「リディ・バスチエ男爵令嬢。私の婚約者ですよ。彼女と結婚したら俺は貴族のままでいられる。なので俺はリディと結婚します」
「アラン、貴方の婚約者はマドレーヌ嬢です。婚約解消の書類もまだでてませんし、貴方がグランジエ家とのあれこれを動かす権利は何一つありません。わかってますか?」
「俺の婚約です。わかってますか?女風情が口を出す立場にないと思いますが?」
アランは小ばかにした口調で母親を揶揄う。
「嫡男としていうが、お前になにも権利はないぞ」
「お前が嫡男?は?まともな貴族としての教育も受けてないのに?だれが嫡男かなんて王家に言って変えてもらえばいいんだ。ね、ネイサン殿下。この家の嫡男、俺にしませんか?ってか父上にも引退してもらって俺がアルノー侯爵になると貴方に都合いいでしょう?」
ふふんという顔で言うが、いつものように『よっしゃ。よっしゃ、おれは王子だ』みたいな返事は返ってこなかった。
「いや……俺はそんな権限……」
「ネイサン殿下、そんな弱気じゃ国を率いていけませんよ」
アランは当たり前のように言う。ロクサーヌの声が飛ぶ。
「ネイサン、しゃんとして。……筆頭公爵家の跡継ぎとして申し渡します」
ロクサーヌは背筋を伸ばして一喝する。
「アラン、黙れ」
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