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第一章
ぼられたと思ったのに
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一方、マドレーヌ。手紙を頼み待ち合わせの食堂に向かう。食堂でエドはエールとソーセージ、ポテトを細く切って揚げたものを食べていた。
「お待たせしました」
「用事は済みましたか?食事はしますか?」
マドレーヌは首を横に振った。
「まだあまりお腹空いてないので」
エドは少し心配そうに訊ねる。
「これからどうするつもりなんですか?」
「仮の身分証明書が手に入ったのでとりあえず王都まで行くつもりです」
エドはソーセージを齧りながら考えている。
「……王都まで俺をガードに雇いませんか?あなたを見てたらきっと、色んな所でぼられまくると思います。こっちの言葉が判らないしね。なので往復の路銀込みで金の粒を1粒、王都まで雇いませんか?」
マドレーヌは少し考えたが頷いた。
「いいわ、その方が良い感じ。ガードというか通訳というか」
「あ、そうだ、通訳だ!」
エドは『通訳』という言葉が出なくてどういえばいいか、と考えていたようだ。
「王都にいけたら俺も助かるんで」
「なにかあるの?」
「欲しい本を直接買えるんで。こっちで取り寄せを頼むと手数料取られたりするから」
「そう」
「一冊でも多く新しい本を見たいですからね」
あまり笑顔を作らないエドがにっと笑った。
役所でもエドは通訳として働いてくれて急に地元の言葉で話始める役人を抑えてくれた。要はわいろの要求であり、一晩の夜の相手の要求であった。
「とりあえず、宿に泊まるので改めて要求してくれと交渉をしました」
歩きながらエドは説明する。
「役所で身分証明書を出してもらうつもりだったのですがそれはマドレーヌ嬢が自力でかたづけたし、このまま王都に向かいますよ」
「こっちに帰ってきてエドは大丈夫なの?」
マドレーヌが心配そうにエドに訊ねる。
「ああ、そこは蛇の道は蛇、って事で。……学生と役人は仲が良くないんで」
エドは苦笑した。そうしてエドは乗合馬車に既定の料金にスズ貨を追加して払う。
「あ、ちょっとまって」
マドレーヌはなにかが目に入ったらしく目の前の古道具屋に入ると小さな皮のポシェットを2個買ってきた。2個で銅貨50枚だという。エドはやっぱり自分がついてないとこの娘はぼられると確信した。こんな古ぼけたポシェットなど2個で銅貨十枚にも満たないだろうに、と思った。
途中の街で泊る。明日の馬車の時間を聞き近場の宿に泊った。そこは村の女性が嫁いだ宿だったのでエドも安心できる場所だった。
「さて、と」
マドレーヌの部屋へエドは様子を見に来た。エドは親戚待遇でこの宿の小さな個室を無料でつかわせてもらえたので宿の女将、元村の女性に交渉してマドレーヌに個室を宛がって自分は大部屋の隅に寝る事にしたのだ。
「あ、女将さんに針をお借りできる?」
エドは何も言わず針を借りてきた。糸はいらないだろうか?と思っていた。
「じゃ、見ててね」
マドレーヌは針で指先を突くと古道具屋で買ったポシェットの飾り石に血を一滴垂らす。先まで古ぼけたポシェットだったものは普通の皮のポシェットになる。
「は?」
エドはわが目を疑った。マドレーヌは針にクリアの魔法をかける。
「同じようにこっちのポシェットに貴方の血を垂らして」
エドは訳が判らないままに同じことをするとこちらの古びたポシェットも普通の皮のポシェットになった。
「そっちはエドにあげるね」
「俺、こういうの使いませんよ?」
マドレーヌは事も無げにいう。
「それ、マジックバッグだよ」
「お待たせしました」
「用事は済みましたか?食事はしますか?」
マドレーヌは首を横に振った。
「まだあまりお腹空いてないので」
エドは少し心配そうに訊ねる。
「これからどうするつもりなんですか?」
「仮の身分証明書が手に入ったのでとりあえず王都まで行くつもりです」
エドはソーセージを齧りながら考えている。
「……王都まで俺をガードに雇いませんか?あなたを見てたらきっと、色んな所でぼられまくると思います。こっちの言葉が判らないしね。なので往復の路銀込みで金の粒を1粒、王都まで雇いませんか?」
マドレーヌは少し考えたが頷いた。
「いいわ、その方が良い感じ。ガードというか通訳というか」
「あ、そうだ、通訳だ!」
エドは『通訳』という言葉が出なくてどういえばいいか、と考えていたようだ。
「王都にいけたら俺も助かるんで」
「なにかあるの?」
「欲しい本を直接買えるんで。こっちで取り寄せを頼むと手数料取られたりするから」
「そう」
「一冊でも多く新しい本を見たいですからね」
あまり笑顔を作らないエドがにっと笑った。
役所でもエドは通訳として働いてくれて急に地元の言葉で話始める役人を抑えてくれた。要はわいろの要求であり、一晩の夜の相手の要求であった。
「とりあえず、宿に泊まるので改めて要求してくれと交渉をしました」
歩きながらエドは説明する。
「役所で身分証明書を出してもらうつもりだったのですがそれはマドレーヌ嬢が自力でかたづけたし、このまま王都に向かいますよ」
「こっちに帰ってきてエドは大丈夫なの?」
マドレーヌが心配そうにエドに訊ねる。
「ああ、そこは蛇の道は蛇、って事で。……学生と役人は仲が良くないんで」
エドは苦笑した。そうしてエドは乗合馬車に既定の料金にスズ貨を追加して払う。
「あ、ちょっとまって」
マドレーヌはなにかが目に入ったらしく目の前の古道具屋に入ると小さな皮のポシェットを2個買ってきた。2個で銅貨50枚だという。エドはやっぱり自分がついてないとこの娘はぼられると確信した。こんな古ぼけたポシェットなど2個で銅貨十枚にも満たないだろうに、と思った。
途中の街で泊る。明日の馬車の時間を聞き近場の宿に泊った。そこは村の女性が嫁いだ宿だったのでエドも安心できる場所だった。
「さて、と」
マドレーヌの部屋へエドは様子を見に来た。エドは親戚待遇でこの宿の小さな個室を無料でつかわせてもらえたので宿の女将、元村の女性に交渉してマドレーヌに個室を宛がって自分は大部屋の隅に寝る事にしたのだ。
「あ、女将さんに針をお借りできる?」
エドは何も言わず針を借りてきた。糸はいらないだろうか?と思っていた。
「じゃ、見ててね」
マドレーヌは針で指先を突くと古道具屋で買ったポシェットの飾り石に血を一滴垂らす。先まで古ぼけたポシェットだったものは普通の皮のポシェットになる。
「は?」
エドはわが目を疑った。マドレーヌは針にクリアの魔法をかける。
「同じようにこっちのポシェットに貴方の血を垂らして」
エドは訳が判らないままに同じことをするとこちらの古びたポシェットも普通の皮のポシェットになった。
「そっちはエドにあげるね」
「俺、こういうの使いませんよ?」
マドレーヌは事も無げにいう。
「それ、マジックバッグだよ」
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