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第一章
ドロテアの本音
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マリアンヌが奥方の部屋に戻ると奥方が心配した顔になっていた。
「何かあったの?メイドのメグはもっと早くに庭を離れたというし」
お茶を用意してたメイドが頭を下げる。
「あ、の……、廊下でネイサン王子と逢いました」
「やっぱりウチにいましたか。あのボンクラ」
奥方は小さな声で毒づいた。マリアンヌはボンクラと聞いたような気がしたが表情を変えずに耐えた。
「で、ロクサーヌ様が助けてくださって」
マリアンヌの話を聞いて奥方はほほ笑んだ。
「それは……、アレンの所に来てたのね。彼女はアレンと親しくてね」
子供の頃からの付き合いがあってロクサーヌ嬢がネイサン王子の婚約者に決まるまではお互い憎からず想ってたのかも、と奥方は話す。
「それもあって、私はネイサン王子に含むところがあるのです」
奥方はふふふ、と笑った。マリナンヌはその奥にもう一段、なにか確執がある事を感じ取ったが何も言わなかった。活発な兄達と妹の間を取り持ち、冒険者をもてなしという日々はマリアンヌを聡明に磨き上げた。そう言う日々で学んだのは『余計な事を言わなければ案外情報は転がり込んでくる』という事だった。
「ネイサン王子も悪い子じゃないのは知ってるのだけど……。馬鹿でボンクラで暗愚だけど」
奥方はふっと息を吐く。マリアンヌは知らなかったがドロテアは正妃のアグネスと仲が悪かった。それこそ子供の頃から、学齢前からの幼稚舎の頃から仲が良くなったことは一度もなかったのだ。ペルティエ公爵令息と恋仲になりかかった時にドロテアは公爵令息の妹が現正妃アグネスであるという一事で思いを断ち切ったくらいにアグネスが嫌だったのだ。なのでアグネスの子供のネイサンに対して点が辛い自覚を持っていた。
ロクサーヌがネイサンの婚約者になったのもどうにもこうにも婚約者が決まらないネイサンの為にアグネスが兄ベルティエ公爵に泣きついたのが真相だった。
そんなことがあったので奥方はネイサン王子と自分の子供が近づくのは嫌だったのだがアランは自分からネイサンに取り入った。育てられ方を間違ったとアランをかなり甘やかしてしまった自覚はあった。それはアレンも父親もだった。アレンが10才の時に出来ていた事、自分で服を着たり入浴したり、そんなことすら出来なかったアランをドロテアは憐れんでいた。ドロテアは公爵家の末娘で色々自由に育てられた。ただし自由にするなら責任も義務もある、と一人で生きていける程度のスキルは身につけさせられた。その中の一つが刺繍であった。そして王家からの話でアルノーの嫡子と見合し、侯爵夫人となって今に至る、のであった。
刺繍はかなり厳しく修練した。ドロテアは学校を卒業したら野に下ってどこかのドレスメーカーにでも就職して生きて行こうと、貴族社会を捨てようと思っていたから。
「お昼も近いですし……、今日はパティオで食事にしましょうか」
ドロテアはメイドに言いつけて外で昼食を食べる様に指示をする。そこにアランが現れた。
「お母様、ロクサーヌとネイサン殿下がお昼をご一緒に、と」
「あら。……今日はパティオで昼食を皆で取ろうかと」
「なら僕らが合流しますよ」
アレンはそう言った。
「ロクサーヌがネイサン殿下をマリアンヌ嬢に謝らせたい、と」
「そう……」
ドロテアはマリアンヌに向き直った。
「マリアンヌ、アラン達が一緒でも大丈夫?私もアレンもちゃんと見張ってるから」
マリアンヌは小さく頷いて同意した。自分より高位の爵位の人間にこういわれてノーを貫くのは貴族社会で生きている限り無理だった。アランもいないからいいか、マリアンヌはそう考えていた。
「何かあったの?メイドのメグはもっと早くに庭を離れたというし」
お茶を用意してたメイドが頭を下げる。
「あ、の……、廊下でネイサン王子と逢いました」
「やっぱりウチにいましたか。あのボンクラ」
奥方は小さな声で毒づいた。マリアンヌはボンクラと聞いたような気がしたが表情を変えずに耐えた。
「で、ロクサーヌ様が助けてくださって」
マリアンヌの話を聞いて奥方はほほ笑んだ。
「それは……、アレンの所に来てたのね。彼女はアレンと親しくてね」
子供の頃からの付き合いがあってロクサーヌ嬢がネイサン王子の婚約者に決まるまではお互い憎からず想ってたのかも、と奥方は話す。
「それもあって、私はネイサン王子に含むところがあるのです」
奥方はふふふ、と笑った。マリナンヌはその奥にもう一段、なにか確執がある事を感じ取ったが何も言わなかった。活発な兄達と妹の間を取り持ち、冒険者をもてなしという日々はマリアンヌを聡明に磨き上げた。そう言う日々で学んだのは『余計な事を言わなければ案外情報は転がり込んでくる』という事だった。
「ネイサン王子も悪い子じゃないのは知ってるのだけど……。馬鹿でボンクラで暗愚だけど」
奥方はふっと息を吐く。マリアンヌは知らなかったがドロテアは正妃のアグネスと仲が悪かった。それこそ子供の頃から、学齢前からの幼稚舎の頃から仲が良くなったことは一度もなかったのだ。ペルティエ公爵令息と恋仲になりかかった時にドロテアは公爵令息の妹が現正妃アグネスであるという一事で思いを断ち切ったくらいにアグネスが嫌だったのだ。なのでアグネスの子供のネイサンに対して点が辛い自覚を持っていた。
ロクサーヌがネイサンの婚約者になったのもどうにもこうにも婚約者が決まらないネイサンの為にアグネスが兄ベルティエ公爵に泣きついたのが真相だった。
そんなことがあったので奥方はネイサン王子と自分の子供が近づくのは嫌だったのだがアランは自分からネイサンに取り入った。育てられ方を間違ったとアランをかなり甘やかしてしまった自覚はあった。それはアレンも父親もだった。アレンが10才の時に出来ていた事、自分で服を着たり入浴したり、そんなことすら出来なかったアランをドロテアは憐れんでいた。ドロテアは公爵家の末娘で色々自由に育てられた。ただし自由にするなら責任も義務もある、と一人で生きていける程度のスキルは身につけさせられた。その中の一つが刺繍であった。そして王家からの話でアルノーの嫡子と見合し、侯爵夫人となって今に至る、のであった。
刺繍はかなり厳しく修練した。ドロテアは学校を卒業したら野に下ってどこかのドレスメーカーにでも就職して生きて行こうと、貴族社会を捨てようと思っていたから。
「お昼も近いですし……、今日はパティオで食事にしましょうか」
ドロテアはメイドに言いつけて外で昼食を食べる様に指示をする。そこにアランが現れた。
「お母様、ロクサーヌとネイサン殿下がお昼をご一緒に、と」
「あら。……今日はパティオで昼食を皆で取ろうかと」
「なら僕らが合流しますよ」
アレンはそう言った。
「ロクサーヌがネイサン殿下をマリアンヌ嬢に謝らせたい、と」
「そう……」
ドロテアはマリアンヌに向き直った。
「マリアンヌ、アラン達が一緒でも大丈夫?私もアレンもちゃんと見張ってるから」
マリアンヌは小さく頷いて同意した。自分より高位の爵位の人間にこういわれてノーを貫くのは貴族社会で生きている限り無理だった。アランもいないからいいか、マリアンヌはそう考えていた。
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