悪役令嬢、冒険者になる 【完結】

あくの

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第一章

マドレーヌ、街に着く

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 マドレーヌは何事もなくエドに街まで送られてきた。

「じゃぁ、ここで待っていて下さい。ちょっと衛兵と話をつけてきます」

マドレーヌは無言で金の粒を3つエドに渡した。

「交渉に使って。……使わなかったら戻してくれてもいいしエドのものにしてもいい」

暫くして帰ってきたエドは頭を下げた。

「すみません、三人いたから全部……」

「お金で済むならそれでいいと思う。……ここは冒険者ギルドはある?」

「あります。先にそっちにいきますか?」

「そうね。ちょっと依頼したい事があって」

マドレーヌはエドにギルドに連れて行ってもらった。

「役所もすぐなんで、用事が終わったらここの食堂で落合ましょう」

エドはそう言い、馬を返してくると一旦外に出て行った。


 「すみません仕事の依頼をしたいのですが」

受付に行くと、青年が応対してくれる。

「初めてのご依頼ですか?」

「いえ、国にいる時に数度」

グランジエ家の領地の魔獣退治は2か月に一度依頼をするので学校の関係で王都にいる事の多いマドレーヌも依頼することがあった。

「では、こちらの水晶に手を置いてください」

マドレーヌの登録情報がギルドの職員が持っている水晶の板に浮かび上がる。

「……これは、うちのお得意さんですね。ご依頼は?」

「手紙を届けて欲しいのです。ギルドだと転送装置がありますよね?」

ギルド職員はぎょっとした顔になった。冒険者ギルド間は書類を転送するシステムがあるのだ。ただし冒険者はあまり知らない話であった。

「依頼金は我が国の金貨一枚、このギルドと相手の国のギルドで規定の通りに分けてください。ここと向こうのギルドと冒険者で3分割で」

「わかりました。……で、手紙は?」

「今から書くので封筒と便箋分けてくださらない?」

「インクとインク壺もお貸ししましょう」

他人に見られないように金の粒を一つ握らせる。大分、手持ちが心もとなくなったな、と思いながらマドレーヌはどうするか悩んでいる。
 貰った便箋と封筒に、現在の位置、無事である事、このままこの国の王都に行くこと、王都でまた冒険者ギルドに顔を出す事を書いて、普通に封をした後、マドレーヌの血縁でないと開けられない封印を魔法でかけておいた。

「これを王都のグランジエ家に、もし領主一家がそこに居なければグランジエ家の領地の屋敷へ」

伝えられた通りに職員の青年は手配をする。

「で、ついでに冒険者登録を済ませたいんですが」

「銅貨25枚です」

「これでおつりいただけます?」

銀の粒を一粒、青年に預ける。きっちり25枚の銅貨とスズの硬貨が帰ってきた。

「これは?」

「銅貨50枚分です。そうですね、ここから王都まで行く馬車の料金がこれくらいですね」

「時間はどれくらいかかります?」

マドレーヌの室温に青年は嫌な顔をすることなく答えてくれる。

「徒歩で6日間、馬車で3日間。結局徒歩だと泊りが増えるから、最終的にはかかる費用の差は殆どないね。ここで登録するより、王都で登録した方が仕事も多いからおすすめしたいんだけど」

マドレーヌは頬に手を当てて首を傾げる。

「私、この国で身分証明書がないのです。街から街の移動に必要かなって」

「ああ、そう言う事。ならこちらで仮登録して、本登録は王都でという形式にしましょう。うちの街から王都に行く新人冒険者の良く使う手なので」

青年は声を顰める。

「あと、貴方の身分がこちらでバレるよりも良い気がします。ただの勘ですけどね。既に依頼で登録された情報も使えますから」

マドレーヌは青年の勧めに乗る事にした。
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