悪役令嬢、冒険者になる 【完結】

あくの

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第一章

やっと動ける

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 「さて、と」

湯あみも出来ないので『清潔』の魔法を体中にかけマドレーヌはすっきりした。それでも顔だけはバケツの水で洗いドライの魔法で手と顔を乾かす。庶民は魔法が使えない(教えない)のがマドレーヌの国の流儀だったがこの国はどうなのかな、と思いながらマドレーヌは朝食を待った。
 ドレスや髪飾りなどはマジックバッグに詰め込む。一番小さなバッグなので容量の余裕はないな、と思った。
 朝と夕方に水と食事を持ってきてもらっているが言葉が通じる人間はまだ来ないらしい。7日目の夕食が終わった時点で初日の中年男性と青年が一人来た。

「あなたが外から来た人だね?」

普通の、ちゃんと言葉が通じる人が来たようだ、とマドレーヌは判断した。そして騎士の礼を取ると自己紹介をする。

「マドレーヌ・グランジエと申します」

そして国の名前を言う。

「……我が国では殆ど聞かない国の方ですか」

「国交がないようですね、こちらと」

青年の話によるとここはかつては隠れ里だったらしく、その名残で他所の人を受け入れない村であること。出来れば村の中に入らず、用意した馬車で一番近い街に移動してほしい事、役所に連れて行くので後の対応は役所と交渉してほしい事を言ってくる。マドレーヌは妥当かな、と判断する。

「お礼をしたいのですが」

「……何を持ってますか?」

「自国の通貨とかここに着いた時に着けていたアクセサリー類、ドレス……とかかな」

青年は暫く考えていたが答える。

「何か身に着けるものを。……髪飾りとかあります?」

マドレーヌは飾り用の小さな宝石の着いたピンを一セット渡した。

「結った髪に刺すんです、色んなことろに」

「へぇ……、ってこれ宝石じゃないですか。ここまで高価なものでは対価になりません」

「……ならば、こちらとかは?」

同じように髪に編みこんでいたリボンとまとめる用につかったリボンのバレッタを出す。

「これならば。……これでも貰いすぎだと思います。かなり高価なリボンでしょう」

「テントも出してもらえましたし。ゆっくりさせてもらえました」



 マドレーヌは青年エドが操る馬車に乗り込んだ。中年男はエドの父親で村長だという。

「俺、街で勉強してたんですよ。ここから3日程の距離の。あなたはそこに連れて行きます」

エドはそこそこ流ちょうに大陸標準語を話すがところどころ間違って覚えてるらしく時々怪しい喋り方をする。

「ではそれまでよろしくお願いします」



 初日の宿に泊る時、マドレーヌは金貨を一枚青年に渡す。

「泊る費用とかに使えますか?」

「……後で、両替をしてきます。他にもあるなら一緒に両替がされますが」

「ならこれを銀貨5枚と金貨1枚を」

マドレーヌは自分の持っていたお金の一部を渡した。マドレーヌはこの宿の宿代を渡す事がメインであったが、言葉の判らない国で多少のお金をもって置くことは必要な事だと思ったからだ。こういうことは騎士科の学問だけではなく、自領に来る冒険者たちから教わったのだ。とりあえずは冒険者ギルドに行って、冒険者登録をしたいとマドレーヌは考えていた。
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