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第一章
アルノー家の内情
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アルノー家に入ったグランジエの嫡男と次男は下男として働き始めた。王族をバックにつけたアルノーの次男、アランはやりたい放題でそれまで普通の男だと思っていたのだが下劣な品性を周りに見せつけ始めた。
「あなた……、次男を家から出しましょう」
奥方に詰め寄られたアルノー家の家長は煮え切らない。それはネイサンを足がかりに正妃に近づいてアルノー家の地位を高めたいという野望があるからだ。
「……後で、グランジエ家には保障を」
「他所のお嬢さんを自分のおもちゃにしようとするなんて、アランのやり方は下種すぎます。長男はうちで育てたんでそういう事が弱みになる事を理解してますがアランは貴方のおじい様が教育した結果あれです。あなたのお父様とそっくりの思考回路を持ってしまった」
アルノー家の家長は言葉に詰まっている。妻は新婚当時『アルノーの家に嫁いだのだから家長の言う事を聞け』と現家長の父親に手籠めにされかけた過去がある。
この妻はグリモー家の一族から嫁してきた妻で、この時はグリモー家も巻き込んで大騒ぎになり、前家長とその父親が領地に蟄居することになったのだ。
アランが生まれた時、妻は産後の肥立ちが良くなく寝付いていた。そして領地の前家長たちに買収された乳母は前家長たちの所へアランを抱いたまま向かった。結果、10歳までアランは前家長たちと乳母に育てられた。
妻は何度もアランを取り返そうと領地に行ったりしたが前家長達は忽然と領地から姿を消していた。そう、領地にいないという事自体が問題だった。それがバレればいくら由緒ある伯爵家といえども懲罰は免れない。現家長はそれを嫌い前家長を大がかりな探索をしなかった。妻は現家長の『探した』という言葉を信じていなかったし、伯爵自身信じられているとは思ってなかった。
「アランがあの人たちの手元にいたおかげでアレンはちょっかいかけられずに済んだんだよ、ドロテア」
「詭弁です。アルフレッド、あなたがお義父様に逆らえないのは知ってました。けれど子供を生贄にした責任は取らねばいけないと思いますわ。……それに、あの王子はだめ。王太子に近いとかおもってません?」
ドロテアは夫である家長アルフレッドをじっと見る。
「それにアランは……他家のお嬢さんをどこかにやってしまったうえにバスチエ家の庶子に手をだした。……あのお嬢さんが現バスチエ男爵の一人娘だからそのまま爵位を継げると言ってるようですけど、ネイサン王子もアランも、バスチエ家の爵位は奥方が持ってるの理解してないのですよ。そんなことも理解できないって……。アランの知識は前の世代のままのようですね。女性は爵位を継げない、おじいさまの時代の知識のまま」
ドロテアはじっと夫を見つめている。
「初等部レベルの知識からおかしい。……アランはどこで育てられたの?どの国で。その上でおじいさまとお義父様は領地からどこに行っていたの?」
アルフレッドは項垂れた。
「すまん、いえない。……お前までまきこめない」
「綺麗な言葉でごまかさないで」
ドロテアはごまかされなかった。
「……すまんがどこにいたかは正確にはわからん。が、初期教育は……おじいさまが持っていた教科書で済ませたらしい」
「学校には通わせなかった、ってことですね?」
「……余計な知識を入れたくなかったのだと思う」
「余計な知識?」
アルフレッドは溜息をつきながら告白した。
「真に貴族的な人間を作るための教育を施す、と……」
「あなたもそれに賛同した、と」
ドロテアの背中にアルフレッドは青い炎を見た。
「真に貴族的な人間?真のクズを作ってしまったのだと思うのですが?」
「あなた……、次男を家から出しましょう」
奥方に詰め寄られたアルノー家の家長は煮え切らない。それはネイサンを足がかりに正妃に近づいてアルノー家の地位を高めたいという野望があるからだ。
「……後で、グランジエ家には保障を」
「他所のお嬢さんを自分のおもちゃにしようとするなんて、アランのやり方は下種すぎます。長男はうちで育てたんでそういう事が弱みになる事を理解してますがアランは貴方のおじい様が教育した結果あれです。あなたのお父様とそっくりの思考回路を持ってしまった」
アルノー家の家長は言葉に詰まっている。妻は新婚当時『アルノーの家に嫁いだのだから家長の言う事を聞け』と現家長の父親に手籠めにされかけた過去がある。
この妻はグリモー家の一族から嫁してきた妻で、この時はグリモー家も巻き込んで大騒ぎになり、前家長とその父親が領地に蟄居することになったのだ。
アランが生まれた時、妻は産後の肥立ちが良くなく寝付いていた。そして領地の前家長たちに買収された乳母は前家長たちの所へアランを抱いたまま向かった。結果、10歳までアランは前家長たちと乳母に育てられた。
妻は何度もアランを取り返そうと領地に行ったりしたが前家長達は忽然と領地から姿を消していた。そう、領地にいないという事自体が問題だった。それがバレればいくら由緒ある伯爵家といえども懲罰は免れない。現家長はそれを嫌い前家長を大がかりな探索をしなかった。妻は現家長の『探した』という言葉を信じていなかったし、伯爵自身信じられているとは思ってなかった。
「アランがあの人たちの手元にいたおかげでアレンはちょっかいかけられずに済んだんだよ、ドロテア」
「詭弁です。アルフレッド、あなたがお義父様に逆らえないのは知ってました。けれど子供を生贄にした責任は取らねばいけないと思いますわ。……それに、あの王子はだめ。王太子に近いとかおもってません?」
ドロテアは夫である家長アルフレッドをじっと見る。
「それにアランは……他家のお嬢さんをどこかにやってしまったうえにバスチエ家の庶子に手をだした。……あのお嬢さんが現バスチエ男爵の一人娘だからそのまま爵位を継げると言ってるようですけど、ネイサン王子もアランも、バスチエ家の爵位は奥方が持ってるの理解してないのですよ。そんなことも理解できないって……。アランの知識は前の世代のままのようですね。女性は爵位を継げない、おじいさまの時代の知識のまま」
ドロテアはじっと夫を見つめている。
「初等部レベルの知識からおかしい。……アランはどこで育てられたの?どの国で。その上でおじいさまとお義父様は領地からどこに行っていたの?」
アルフレッドは項垂れた。
「すまん、いえない。……お前までまきこめない」
「綺麗な言葉でごまかさないで」
ドロテアはごまかされなかった。
「……すまんがどこにいたかは正確にはわからん。が、初期教育は……おじいさまが持っていた教科書で済ませたらしい」
「学校には通わせなかった、ってことですね?」
「……余計な知識を入れたくなかったのだと思う」
「余計な知識?」
アルフレッドは溜息をつきながら告白した。
「真に貴族的な人間を作るための教育を施す、と……」
「あなたもそれに賛同した、と」
ドロテアの背中にアルフレッドは青い炎を見た。
「真に貴族的な人間?真のクズを作ってしまったのだと思うのですが?」
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