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第一章
グランジエ家の事
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辺境を統治する4家でグランジェ家だけが子爵位にいた。これでは辺境を護る四家として足並みがそろわないと北方を護るグリモー侯爵家から王家に進言があり寝耳に水の状態で陞爵したのが3年前のことであった。そしてグリモー侯爵家の遠縁でもあるアルノー伯爵家との縁組が決まる。年周りが丁度いいということでアランとマドレーヌの婚約がきまったのだ。
この結婚をまっとうすればアランにはグリモー侯爵家がもっているいくつかの爵位のうち準男爵位を領地と文官の仕事ごと譲ろうという話になっていた。
が、どうしてもマドレーヌが欲しいネイサンがアランに手を回したようで、アランはマドレーヌを『悪役令嬢』だと最近リディ嬢から読まされた少女向けのロマンス小説で覚えた言葉でのののしったりしていた。
ただそれがマドレーヌの耳に入る事はなかった。アラン達とマドレーヌは違うグループに属していたのと、マドレーヌは騎士科、アランは普通科で学園内での接触は皆無だったのである。アランとしたらおとなしやかなみための癖に騎士科に属しているマドレーヌに嫌気がさしていたというのも大きかったので、ネイサンの申し入れは渡りに船、でもあったのだ。
ネイサンは普段から横柄なのと、王族というのに余りにも成績が悪いので巻き込まれたくないと生徒に敬して遠ざけられていた。2回の進級不可は王族で初めてであった。今までは忖度されてきたのも大きいのであろうが現在、学園長は王弟殿下であり一番王太子に近いはずの正妃の息子がこれでは……と、進級を許可しなかったのだ。
マドレーヌは子爵令嬢としては目立つ美貌であった。そして騎士科の制服で髪を一つにまとめていると、倒錯的に美しく、少女たちの中にファンクラブもあったのだ。
マドレーヌ自身は座学やマナーはあまり好きではない、というところで騎士科を選んだのだが、しょうに合っていたらしく体を使う学科は男子に混じってそこそこの成績を出している。
そして騎士科と普通科は食堂すら違ったので、学園での接点は面白いくらい騎士科と普通科にはなかった。ただこのところアランは騎士科の食堂に来てマドレーヌに嫌味を言って帰るという謎の行動をとっていたのだ。
マドレーヌがどこかに飛ばされたのと、同時にアルノー伯爵家からグランジエ伯爵家に娘の出奔と婚約不履行の連絡が来た。二人の婚約時点でどちらかの勝手な都合での婚約不履行には莫大な違約金が課せられていた。間の悪い事に陞爵したばかりのグランジエ家には余裕がなかった。
『今、グランジエ家が取り潰されたらグリモー侯爵家の顔を潰す事になりますね』
アルノー家からはまだ3才の3男以外の嫡男次男長女をアルノー家に差し出せ、と。それで借金を払い終わるまでは身柄を預かる、という事であった。
『娘が男の子を生んだら少しは考えてやる』
と長女はアランの慰み者となる事が判っていたが
『マドレーヌが消えたから……』
悲壮な決心をし、アルノー家に赴いたのだった。
「私がなんとかする」
嫡男はそう言ったが長女は首を横に振る。
「……マドレーヌに言い寄ってた王族の方も噛んでるんでしょう。私たちは『家』を護りに行くのです、お兄様。アントワーヌが継げるようにグランジエ家を護りましょう」
長女マリアンヌの決意を助けるかのようにアルノー家に着いたら奥方にさっさとマリアンヌは保護された。
「うちの次男が馬鹿な事を……。私も表立っては動けませんが多少は力になりましょう。どうも次男は王族の方を後ろにつけたつもりでいい気になってるようなので」
奥方は柳眉を逆立てて言い切った。
「愚鈍な人間を味方にして家を危険な目に会わせるような人間は家から追い出さねば」
この結婚をまっとうすればアランにはグリモー侯爵家がもっているいくつかの爵位のうち準男爵位を領地と文官の仕事ごと譲ろうという話になっていた。
が、どうしてもマドレーヌが欲しいネイサンがアランに手を回したようで、アランはマドレーヌを『悪役令嬢』だと最近リディ嬢から読まされた少女向けのロマンス小説で覚えた言葉でのののしったりしていた。
ただそれがマドレーヌの耳に入る事はなかった。アラン達とマドレーヌは違うグループに属していたのと、マドレーヌは騎士科、アランは普通科で学園内での接触は皆無だったのである。アランとしたらおとなしやかなみための癖に騎士科に属しているマドレーヌに嫌気がさしていたというのも大きかったので、ネイサンの申し入れは渡りに船、でもあったのだ。
ネイサンは普段から横柄なのと、王族というのに余りにも成績が悪いので巻き込まれたくないと生徒に敬して遠ざけられていた。2回の進級不可は王族で初めてであった。今までは忖度されてきたのも大きいのであろうが現在、学園長は王弟殿下であり一番王太子に近いはずの正妃の息子がこれでは……と、進級を許可しなかったのだ。
マドレーヌは子爵令嬢としては目立つ美貌であった。そして騎士科の制服で髪を一つにまとめていると、倒錯的に美しく、少女たちの中にファンクラブもあったのだ。
マドレーヌ自身は座学やマナーはあまり好きではない、というところで騎士科を選んだのだが、しょうに合っていたらしく体を使う学科は男子に混じってそこそこの成績を出している。
そして騎士科と普通科は食堂すら違ったので、学園での接点は面白いくらい騎士科と普通科にはなかった。ただこのところアランは騎士科の食堂に来てマドレーヌに嫌味を言って帰るという謎の行動をとっていたのだ。
マドレーヌがどこかに飛ばされたのと、同時にアルノー伯爵家からグランジエ伯爵家に娘の出奔と婚約不履行の連絡が来た。二人の婚約時点でどちらかの勝手な都合での婚約不履行には莫大な違約金が課せられていた。間の悪い事に陞爵したばかりのグランジエ家には余裕がなかった。
『今、グランジエ家が取り潰されたらグリモー侯爵家の顔を潰す事になりますね』
アルノー家からはまだ3才の3男以外の嫡男次男長女をアルノー家に差し出せ、と。それで借金を払い終わるまでは身柄を預かる、という事であった。
『娘が男の子を生んだら少しは考えてやる』
と長女はアランの慰み者となる事が判っていたが
『マドレーヌが消えたから……』
悲壮な決心をし、アルノー家に赴いたのだった。
「私がなんとかする」
嫡男はそう言ったが長女は首を横に振る。
「……マドレーヌに言い寄ってた王族の方も噛んでるんでしょう。私たちは『家』を護りに行くのです、お兄様。アントワーヌが継げるようにグランジエ家を護りましょう」
長女マリアンヌの決意を助けるかのようにアルノー家に着いたら奥方にさっさとマリアンヌは保護された。
「うちの次男が馬鹿な事を……。私も表立っては動けませんが多少は力になりましょう。どうも次男は王族の方を後ろにつけたつもりでいい気になってるようなので」
奥方は柳眉を逆立てて言い切った。
「愚鈍な人間を味方にして家を危険な目に会わせるような人間は家から追い出さねば」
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