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ジュリエット・ダンテス 2

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 「おかえり」

ジュリエットを母親は抱きしめる。3年間、ドルバック伯爵の領地にある大きな修道院でジュリエットは過ごしてきた。そこは静かで併設の孤児院もありジュリエットは余計な事を考えずに日々を過ごせた。修道院ではさすがドルバックというべきか、何か一つ、得意な手芸を磨く事も修行のうちだった。
 ジュリエットは12で嫁いだので令嬢のたしなみとしての刺繍をこなしておらず、こちらは初歩からの指導をされた。ただ、シャトルを使って編むレース編みは性に合ったようでこれをメインで3年間の修業期間にめきめき腕をあげた。

 「ただいま戻りました」

ジュリエットはこの3年間で足りなかったマナーや教養を手に入れて目に見えて落ち着いていた。

「今日はごちそうよ」

母親に言われてジュリエットはにっこり笑った。

「お手伝いします」

「主賓にお手伝いはお願いできないわ。そうね、近々リーゼがお忍びで帰ってくるからその時にパイを焼くの手伝ってね」

母親は軽やかに笑いながらジュリエットの手を取った。


 「3年間、お疲れ様」

リーゼは2人の子供をつれて帰ってきていた。子供二人はこの屋敷の広い庭の一角にある四阿に走っていく。そのあたりは花も咲き、子供心になにか訴えるものがあるらしい。リーゼとジュリエットはそこからほど近い場所にセッティングされたテーブルについた。

 「ママー、テントウムシ」

長男のフレデリクは舌たらずな口調で指の先にてんとう虫を止まらせてぽてぽて走ってきた。ジュリエットはそんな様子をほほえまし気に見て目を細めている。

「子供っていいね。なんていうか元気とかエネルギーの塊だもん」

ジュリエットの表情にリーゼは今日は話そうと思っていたことを話さないでおこう、と決めた。
 ジュリエットの元夫と隣国の王妃殿下は失脚したこと。二人は懲罰として離宮に隔離され表舞台に出られない事。ジュリエットの悪評は慰謝料軽減を狙った王妃殿下の策略であったこと。こんな事が3年間であったのだ。しかし、今のジュリエットにはその話は酷であり、邪魔だろうとリーゼは考えた。
 ジュリエットの方から尋ねてくれば答える,リーゼはそう考えた。

「今度、リリゼットの家のお茶会に出るんですけどジュリエットも一緒に行きましょう」

リーゼは考えていたことを心の奥に仕舞って、ジュリエットに話しかけた。


==========

次は 5/26 水曜日 更新です。多分次で終わりの予定です。
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