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「あれ?クレマン、エリクは一緒ちゃうのん?」
菫姫も参加するので制服だった。
「エリクは…ちょっと遅れます。ちょっと出かけにお腹の具合がいま一つだったみたいで」
リリゼットが
「今、いらっしゃったら手当しますのに」
という。菫姫がこくこくと小さく頷く。
「ああ、リリならできるか」
クレマンは苦笑する。
「腹痛程度で癒しの魔法使うのは違います。………そうか、リリゼットさんを視察に同行させるように指示があったのはそれか」
とクレマンが合点がいったようだった。わざわざ次兄とエドアール連名でクレマン宛にリリゼットの同行を求める手紙が来ていたらしい。
リーゼがばつの悪そうな表情で応接室に入ってきた。後ろにリーゼの父親がついている。
「私も一緒に行くから」
と元気かつ溌剌としていた。最初はリーゼの妹のジュリエットが同行する予定だったがジュリエットが寒いのを嫌がったのと、婚約者がまた王都に来るのでデートやお茶会の予定が組まれたので一人分空いたと聞いてリーゼの父親がやってきたのだ。
エドアールが溜息をついた。ここ数年、魔獣狩りを手伝わせろとうるさかったリーゼの父親がとうとう現地に来ることになったからだ。
「兄上………。ふーー、陛下の許可は下りたんですか?」
「休暇中の人間なのでな」
菫姫がリーゼに耳打ちする。
「リーゼのおとうはん、正気?」
リーゼがうんざりした顔で首を横にふり、普通の大きさの声で、父親とエドアールにも聞こえるように言う。
「父兄参観じゃあるまいしどうにかしてほしい」
「うちの父兄も行ってますし………」
リリゼットが言うとクレマンが情けなさそうに会話に加わる。
「多分、リーゼ嬢のお父上がいる間にうちの父親も見に来るそうです…」
菫姫がびっくりした顔になる。
「えー、本当に父兄参観になるやん。うちのおとうはんもくるんやろか」
「来られるのではないかな。この様子だとお忍びで陛下もいらっしゃいそうだ」
とエドアールが不吉なことを言う。
「そや、ちょっとまっててな。まだ出発しやんといてよ、エド先生」
そういうと菫姫は動きは歩いている動きなのにどうみても走っているスピードでドアを開けて移動していった。イネスが驚嘆の表情でそれを見ていた。
菫姫は腹痛の薬を部屋からもって帰ってきたのだった。
「遅れて申し訳ない」
エリクが多少青い顔で部屋に入ってきた。
「お腹ひやしたん?」
菫姫に言われてエリクは少し考えて頷いた。
「多分。急に痛み出したんだ。………おかげで朝飯も食えてない」
菫姫は小箱をごそごそやってから、そこにいるメイドに白湯を頼む。メイドが白湯を持ってくるとその中に小箱の水薬を3~4滴落としてエリクに渡す。
「腹痛止めの薬草のエキス。劇的な効果というより緩やかに痛み抑えるから」
エリクの後ろから王太子が入ってきた。
「エリク、薬草系の話はヴィオレット信用して大丈夫だ。王弟領は薬草の産地でな。菫姫も子供の時から薬草の扱いには長けてる」
そういわれてエリクはぐっと薬草入りの白湯を飲み干した。
「………無味無臭なのが怖い」
「匂いあったらおこちゃまは飲まへんからね」
菫姫はそういうと薬を小箱に収めた。
菫姫も参加するので制服だった。
「エリクは…ちょっと遅れます。ちょっと出かけにお腹の具合がいま一つだったみたいで」
リリゼットが
「今、いらっしゃったら手当しますのに」
という。菫姫がこくこくと小さく頷く。
「ああ、リリならできるか」
クレマンは苦笑する。
「腹痛程度で癒しの魔法使うのは違います。………そうか、リリゼットさんを視察に同行させるように指示があったのはそれか」
とクレマンが合点がいったようだった。わざわざ次兄とエドアール連名でクレマン宛にリリゼットの同行を求める手紙が来ていたらしい。
リーゼがばつの悪そうな表情で応接室に入ってきた。後ろにリーゼの父親がついている。
「私も一緒に行くから」
と元気かつ溌剌としていた。最初はリーゼの妹のジュリエットが同行する予定だったがジュリエットが寒いのを嫌がったのと、婚約者がまた王都に来るのでデートやお茶会の予定が組まれたので一人分空いたと聞いてリーゼの父親がやってきたのだ。
エドアールが溜息をついた。ここ数年、魔獣狩りを手伝わせろとうるさかったリーゼの父親がとうとう現地に来ることになったからだ。
「兄上………。ふーー、陛下の許可は下りたんですか?」
「休暇中の人間なのでな」
菫姫がリーゼに耳打ちする。
「リーゼのおとうはん、正気?」
リーゼがうんざりした顔で首を横にふり、普通の大きさの声で、父親とエドアールにも聞こえるように言う。
「父兄参観じゃあるまいしどうにかしてほしい」
「うちの父兄も行ってますし………」
リリゼットが言うとクレマンが情けなさそうに会話に加わる。
「多分、リーゼ嬢のお父上がいる間にうちの父親も見に来るそうです…」
菫姫がびっくりした顔になる。
「えー、本当に父兄参観になるやん。うちのおとうはんもくるんやろか」
「来られるのではないかな。この様子だとお忍びで陛下もいらっしゃいそうだ」
とエドアールが不吉なことを言う。
「そや、ちょっとまっててな。まだ出発しやんといてよ、エド先生」
そういうと菫姫は動きは歩いている動きなのにどうみても走っているスピードでドアを開けて移動していった。イネスが驚嘆の表情でそれを見ていた。
菫姫は腹痛の薬を部屋からもって帰ってきたのだった。
「遅れて申し訳ない」
エリクが多少青い顔で部屋に入ってきた。
「お腹ひやしたん?」
菫姫に言われてエリクは少し考えて頷いた。
「多分。急に痛み出したんだ。………おかげで朝飯も食えてない」
菫姫は小箱をごそごそやってから、そこにいるメイドに白湯を頼む。メイドが白湯を持ってくるとその中に小箱の水薬を3~4滴落としてエリクに渡す。
「腹痛止めの薬草のエキス。劇的な効果というより緩やかに痛み抑えるから」
エリクの後ろから王太子が入ってきた。
「エリク、薬草系の話はヴィオレット信用して大丈夫だ。王弟領は薬草の産地でな。菫姫も子供の時から薬草の扱いには長けてる」
そういわれてエリクはぐっと薬草入りの白湯を飲み干した。
「………無味無臭なのが怖い」
「匂いあったらおこちゃまは飲まへんからね」
菫姫はそういうと薬を小箱に収めた。
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