リリゼットの学園生活 〜 聖魔法?我が家では誰でも使えますよ?

あくの

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 「結局、お前も視察に一緒に行くんだな?」

リリゼットはニコルの問いかけに頷いた。

「………お父様の通訳要員、って所だと思います」

ニコルが深く深くため息をついた。

「あー、まー、他の人間が言うよりは話を聞くと思う」

「向こうで暴走してないといいんですけど」

リリゼットとニコルは顔を合わせて深くため息をついた。父親は皮と革細工の事には特にバカでニコルがドルバックの長の役目を殆ど担えるようになったので、補佐役をしていたレース編みの叔父と彫金の父の従兄は領地に帰った。しかし、父親もその補佐役もかなり数字に弱く、ニコルが掌握するまでに父親の散財はひどいものだった。頭を抱えてるうちにジュスティーヌが帰宅してあっというまにウジェ男爵の子息アランと結婚が決まりウジェ商会の持つ借用書がちゃらになり、それを持参金代わりにアランは婿入り、といってもどちらも貴族籍はもたないのであくまで伯爵家の持ち家に済む平民、扱いなのだがそこは加護刺繍ができるというジュスティーヌの力とドルバック本家の人間というのが領地ではモノを言う。
 ニコルに来る報告ではジュスティーヌもアランも幸せそうである。ジュスティーヌが領地の女衆と加護刺繍で日銭を稼ぎ、家事はアランがするという生活のようで、双方の親が用意した宦官とメイドは結局、通いのメイドが2名だけに規模を縮小していた。
 そして二人は別荘の本宅ではなくそれに付属した使用人用の小さな家で生活しているらしい。ジュスティーヌからの手紙ではドレスでいるより作業着でいる方が楽なので年金と日々稼ぐ事で生活は成り立ちそうだ、と言っている。

 ニコルは

「リリゼットが北方に行ってる間、俺も領地へ行ってくる。子供たちも連れていく…けどルイがなぁ…、行きたがらないんだよな」

と頭を抱えている。リリゼットは

「ルイは…こちらに連れて行くのはどうでしょう?祖父に会いたい、と言ってる事にして」

と提案した。

「うーん、ルイに聞くか。その前にそちらの殿下に許可とってからな」

「明日聞いてきます。戦闘執事も一緒ですし、ルイは騎士学校に行ってますから、騎士の仕事の一面を知るのはいいことでしょうし」


 ニコルはあれからジュリエットの事を何も言わない。だからリリゼットも何も聞かなかった。リリゼットはこの家の子女として家長の言うことを聞く、言わない事を無理に尋ねないという姿勢でいた。これは修道院での躾けが大きかった。上の人間の言うことを聞きいろんなことを詮索しない、と躾けられている。そこを面倒くさがる性格が助長する。こうやってリリゼットの何も聞かない性格が出来上がっている。



 生徒会室にクレマンを尋ねていくと今日は体育会部長代表がいた。

「リリゼット・ドルバック?」

「はい」

「リーゼ嬢?」

「はい、それかクレマン様か」

体育会部長代表が中に向かって叫ぶ

「クレマン、客ーーー」

「うっさいぞ。エリク」

エリクは隣国のマイネ侯爵の庶子で家督騒動にまきこまれるのを防ぐためにこちらに移民として来ている。寄宿先はイネスの親戚の家らしい。リリゼットはその程度の情報だけを知っていた。

「え?」

クレマンは扉の前のリリゼットを見て絶句していたが、すぐに気を取り直した。

「今、生徒会室は男性しかいないので………食堂ででも話しましょう」

「わかりました」

リリゼットとしてもそちらの方が安心できる。二人は食堂に向かうが食堂に妙に男子生徒が多い。気を取り直してもう一つある、カフェテリアに足を向けるとこちらは女子が多かった。が、菫姫がそこにいて二人に手を振る。近寄るとほかのテーブルに聞こえないように言う。

「ここ座るとええよ。聞かれたくない話なら席はずすし
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