37 / 61
37
しおりを挟む
「結局、お前も視察に一緒に行くんだな?」
リリゼットはニコルの問いかけに頷いた。
「………お父様の通訳要員、って所だと思います」
ニコルが深く深くため息をついた。
「あー、まー、他の人間が言うよりは話を聞くと思う」
「向こうで暴走してないといいんですけど」
リリゼットとニコルは顔を合わせて深くため息をついた。父親は皮と革細工の事には特にバカでニコルがドルバックの長の役目を殆ど担えるようになったので、補佐役をしていたレース編みの叔父と彫金の父の従兄は領地に帰った。しかし、父親もその補佐役もかなり数字に弱く、ニコルが掌握するまでに父親の散財はひどいものだった。頭を抱えてるうちにジュスティーヌが帰宅してあっというまにウジェ男爵の子息アランと結婚が決まりウジェ商会の持つ借用書がちゃらになり、それを持参金代わりにアランは婿入り、といってもどちらも貴族籍はもたないのであくまで伯爵家の持ち家に済む平民、扱いなのだがそこは加護刺繍ができるというジュスティーヌの力とドルバック本家の人間というのが領地ではモノを言う。
ニコルに来る報告ではジュスティーヌもアランも幸せそうである。ジュスティーヌが領地の女衆と加護刺繍で日銭を稼ぎ、家事はアランがするという生活のようで、双方の親が用意した宦官とメイドは結局、通いのメイドが2名だけに規模を縮小していた。
そして二人は別荘の本宅ではなくそれに付属した使用人用の小さな家で生活しているらしい。ジュスティーヌからの手紙ではドレスでいるより作業着でいる方が楽なので年金と日々稼ぐ事で生活は成り立ちそうだ、と言っている。
ニコルは
「リリゼットが北方に行ってる間、俺も領地へ行ってくる。子供たちも連れていく…けどルイがなぁ…、行きたがらないんだよな」
と頭を抱えている。リリゼットは
「ルイは…こちらに連れて行くのはどうでしょう?祖父に会いたい、と言ってる事にして」
と提案した。
「うーん、ルイに聞くか。その前にそちらの殿下に許可とってからな」
「明日聞いてきます。戦闘執事も一緒ですし、ルイは騎士学校に行ってますから、騎士の仕事の一面を知るのはいいことでしょうし」
ニコルはあれからジュリエットの事を何も言わない。だからリリゼットも何も聞かなかった。リリゼットはこの家の子女として家長の言うことを聞く、言わない事を無理に尋ねないという姿勢でいた。これは修道院での躾けが大きかった。上の人間の言うことを聞きいろんなことを詮索しない、と躾けられている。そこを面倒くさがる性格が助長する。こうやってリリゼットの何も聞かない性格が出来上がっている。
生徒会室にクレマンを尋ねていくと今日は体育会部長代表がいた。
「リリゼット・ドルバック?」
「はい」
「リーゼ嬢?」
「はい、それかクレマン様か」
体育会部長代表が中に向かって叫ぶ
「クレマン、客ーーー」
「うっさいぞ。エリク」
エリクは隣国のマイネ侯爵の庶子で家督騒動にまきこまれるのを防ぐためにこちらに移民として来ている。寄宿先はイネスの親戚の家らしい。リリゼットはその程度の情報だけを知っていた。
「え?」
クレマンは扉の前のリリゼットを見て絶句していたが、すぐに気を取り直した。
「今、生徒会室は男性しかいないので………食堂ででも話しましょう」
「わかりました」
リリゼットとしてもそちらの方が安心できる。二人は食堂に向かうが食堂に妙に男子生徒が多い。気を取り直してもう一つある、カフェテリアに足を向けるとこちらは女子が多かった。が、菫姫がそこにいて二人に手を振る。近寄るとほかのテーブルに聞こえないように言う。
「ここ座るとええよ。聞かれたくない話なら席はずすし
リリゼットはニコルの問いかけに頷いた。
「………お父様の通訳要員、って所だと思います」
ニコルが深く深くため息をついた。
「あー、まー、他の人間が言うよりは話を聞くと思う」
「向こうで暴走してないといいんですけど」
リリゼットとニコルは顔を合わせて深くため息をついた。父親は皮と革細工の事には特にバカでニコルがドルバックの長の役目を殆ど担えるようになったので、補佐役をしていたレース編みの叔父と彫金の父の従兄は領地に帰った。しかし、父親もその補佐役もかなり数字に弱く、ニコルが掌握するまでに父親の散財はひどいものだった。頭を抱えてるうちにジュスティーヌが帰宅してあっというまにウジェ男爵の子息アランと結婚が決まりウジェ商会の持つ借用書がちゃらになり、それを持参金代わりにアランは婿入り、といってもどちらも貴族籍はもたないのであくまで伯爵家の持ち家に済む平民、扱いなのだがそこは加護刺繍ができるというジュスティーヌの力とドルバック本家の人間というのが領地ではモノを言う。
ニコルに来る報告ではジュスティーヌもアランも幸せそうである。ジュスティーヌが領地の女衆と加護刺繍で日銭を稼ぎ、家事はアランがするという生活のようで、双方の親が用意した宦官とメイドは結局、通いのメイドが2名だけに規模を縮小していた。
そして二人は別荘の本宅ではなくそれに付属した使用人用の小さな家で生活しているらしい。ジュスティーヌからの手紙ではドレスでいるより作業着でいる方が楽なので年金と日々稼ぐ事で生活は成り立ちそうだ、と言っている。
ニコルは
「リリゼットが北方に行ってる間、俺も領地へ行ってくる。子供たちも連れていく…けどルイがなぁ…、行きたがらないんだよな」
と頭を抱えている。リリゼットは
「ルイは…こちらに連れて行くのはどうでしょう?祖父に会いたい、と言ってる事にして」
と提案した。
「うーん、ルイに聞くか。その前にそちらの殿下に許可とってからな」
「明日聞いてきます。戦闘執事も一緒ですし、ルイは騎士学校に行ってますから、騎士の仕事の一面を知るのはいいことでしょうし」
ニコルはあれからジュリエットの事を何も言わない。だからリリゼットも何も聞かなかった。リリゼットはこの家の子女として家長の言うことを聞く、言わない事を無理に尋ねないという姿勢でいた。これは修道院での躾けが大きかった。上の人間の言うことを聞きいろんなことを詮索しない、と躾けられている。そこを面倒くさがる性格が助長する。こうやってリリゼットの何も聞かない性格が出来上がっている。
生徒会室にクレマンを尋ねていくと今日は体育会部長代表がいた。
「リリゼット・ドルバック?」
「はい」
「リーゼ嬢?」
「はい、それかクレマン様か」
体育会部長代表が中に向かって叫ぶ
「クレマン、客ーーー」
「うっさいぞ。エリク」
エリクは隣国のマイネ侯爵の庶子で家督騒動にまきこまれるのを防ぐためにこちらに移民として来ている。寄宿先はイネスの親戚の家らしい。リリゼットはその程度の情報だけを知っていた。
「え?」
クレマンは扉の前のリリゼットを見て絶句していたが、すぐに気を取り直した。
「今、生徒会室は男性しかいないので………食堂ででも話しましょう」
「わかりました」
リリゼットとしてもそちらの方が安心できる。二人は食堂に向かうが食堂に妙に男子生徒が多い。気を取り直してもう一つある、カフェテリアに足を向けるとこちらは女子が多かった。が、菫姫がそこにいて二人に手を振る。近寄るとほかのテーブルに聞こえないように言う。
「ここ座るとええよ。聞かれたくない話なら席はずすし
15
お気に入りに追加
122
あなたにおすすめの小説

妹が聖女の再来と呼ばれているようです
田尾風香
ファンタジー
ダンジョンのある辺境の地で回復術士として働いていたけど、父に呼び戻されてモンテリーノ学校に入学した。そこには、私の婚約者であるファルター殿下と、腹違いの妹であるピーアがいたんだけど。
「マレン・メクレンブルク! 貴様とは婚約破棄する!」
どうやらファルター殿下は、"低能"と呼ばれている私じゃなく、"聖女の再来"とまで呼ばれるくらいに成績の良い妹と婚約したいらしい。
それは別に構わない。国王陛下の裁定で無事に婚約破棄が成った直後、私に婚約を申し込んできたのは、辺境の地で一緒だったハインリヒ様だった。
戸惑う日々を送る私を余所に、事件が起こる。――学校に、ダンジョンが出現したのだった。
更新は不定期です。

異世界リナトリオン〜平凡な田舎娘だと思った私、実は転生者でした?!〜
青山喜太
ファンタジー
ある日、母が死んだ
孤独に暮らす少女、エイダは今日も1人分の食器を片付ける、1人で食べる朝食も慣れたものだ。
そしてそれは母が死んでからいつもと変わらない日常だった、ドアがノックされるその時までは。
これは1人の少女が世界を巻き込む巨大な秘密に立ち向かうお話。
小説家になろう様からの転載です!

パワハラ騎士団長に追放されたけど、君らが最強だったのは僕が全ステータスを10倍にしてたからだよ。外れスキル《バフ・マスター》で世界最強
こはるんるん
ファンタジー
「アベル、貴様のような軟弱者は、我が栄光の騎士団には不要。追放処分とする!」
騎士団長バランに呼び出された僕――アベルはクビを宣言された。
この世界では8歳になると、女神から特別な能力であるスキルを与えられる。
ボクのスキルは【バフ・マスター】という、他人のステータスを数%アップする力だった。
これを授かった時、外れスキルだと、みんなからバカにされた。
だけど、スキルは使い続けることで、スキルLvが上昇し、強力になっていく。
僕は自分を信じて、8年間、毎日スキルを使い続けた。
「……本当によろしいのですか? 僕のスキルは、バフ(強化)の対象人数3000人に増えただけでなく、効果も全ステータス10倍アップに進化しています。これが無くなってしまえば、大きな戦力ダウンに……」
「アッハッハッハッハッハッハ! 見苦しい言い訳だ! 全ステータス10倍アップだと? バカバカしい。そんな嘘八百を並べ立ててまで、この俺の最強騎士団に残りたいのか!?」
そうして追放された僕であったが――
自分にバフを重ねがけした場合、能力値が100倍にアップすることに気づいた。
その力で、敵国の刺客に襲われた王女様を助けて、新設された魔法騎士団の団長に任命される。
一方で、僕のバフを失ったバラン団長の最強騎士団には暗雲がたれこめていた。
「騎士団が最強だったのは、アベル様のお力があったればこそです!」
これは外れスキル持ちとバカにされ続けた少年が、その力で成り上がって王女に溺愛され、国の英雄となる物語。


外れスキル【削除&復元】が実は最強でした~色んなものを消して相手に押し付けたり自分のものにしたりする能力を得た少年の成り上がり~
名無し
ファンタジー
突如パーティーから追放されてしまった主人公のカイン。彼のスキルは【削除&復元】といって、荷物係しかできない無能だと思われていたのだ。独りぼっちとなったカインは、ギルドで仲間を募るも意地悪な男にバカにされてしまうが、それがきっかけで頭痛や相手のスキルさえも削除できる力があると知る。カインは一流冒険者として名を馳せるという夢をかなえるべく、色んなものを削除、復元して自分ものにしていき、またたく間に最強の冒険者へと駆け上がっていくのだった……。

目つきが悪いと仲間に捨てられてから、魔眼で全てを射貫くまで。
桐山じゃろ
ファンタジー
高校二年生の横伏藤太はある日突然、あまり接点のないクラスメイトと一緒に元いた世界からファンタジーな世界へ召喚された。初めのうちは同じ災難にあった者同士仲良くしていたが、横伏だけが強くならない。召喚した連中から「勇者の再来」と言われている不東に「目つきが怖い上に弱すぎる」という理由で、森で魔物にやられた後、そのまま捨てられた。……こんなところで死んでたまるか! 奮起と同時に意味不明理解不能だったスキル[魔眼]が覚醒し無双モードへ突入。その後は別の国で召喚されていた同じ学校の女の子たちに囲まれて一緒に暮らすことに。一方、捨てた連中はなんだか勝手に酷い目に遭っているようです。※小説家になろう、カクヨムにも同じものを掲載しています。

断罪された大聖女は死に戻り地味に生きていきたい
花音月雫
ファンタジー
幼い頃に大聖女に憧れたアイラ。でも大聖女どころか聖女にもなれずその後の人生も全て上手くいかず気がつくと婚約者の王太子と幼馴染に断罪されていた!天使と交渉し時が戻ったアイラは家族と自分が幸せになる為地味に生きていこうと決心するが......。何故か周りがアイラをほっといてくれない⁉︎そして次から次へと事件に巻き込まれて......。地味に目立たなく生きて行きたいのにどんどん遠ざかる⁉︎執着系溺愛ストーリー。

きっと幸せな異世界生活
スノウ
ファンタジー
神の手違いで日本人として15年間生きてきた倉本カノン。彼女は暴走トラックに轢かれて生死の境を彷徨い、魂の状態で女神のもとに喚ばれてしまう。女神の説明によれば、カノンは本来異世界レメイアで生まれるはずの魂であり、転生神の手違いで魂が入れ替わってしまっていたのだという。
そして、本来カノンとして日本で生まれるはずだった魂は異世界レメイアで生きており、カノンの事故とほぼ同時刻に真冬の川に転落して流され、仮死状態になっているという。
時を同じくして肉体から魂が離れようとしている2人の少女。2つの魂をあるべき器に戻せるたった一度のチャンスを神は見逃さず、実行に移すべく動き出すのだった。
女神の導きで新生活を送ることになったカノンの未来は…?
毎日12時頃に投稿します。
─────────────────
いいね、お気に入りをくださった方、どうもありがとうございます。
とても励みになります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる