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今年の学園祭は王太子はいつもよりのびのびと過ごしていた。リーゼとの時間も結構とっていたが、リーゼが菫姫も入れた女子四人で行動していたのでそこにクレマンと一緒に加わる感じであった。
クレマンはリリゼットが食べられそうなモノを屋台で見繕って買ってくる。リリゼットも一緒に行くこともあった。基本は王太子とリーゼ、菫姫はテラスの席に座っている事が多かった。リリゼットとクレマン、リリゼットとイネスが屋台に行ったり、菫姫の護衛が買い物にいったりと皆で楽しく過ごしている。
王太子はコゼット嬢との事が落ち着てから以前のように浮ついたところがなくなった。リーゼとは友人的に仲がいいらしい。菫姫にはかなりこてんぱにやられたようでクレマンが苦笑する程度に菫姫は生徒会室で女王様をやってると言っていた。
「そやけど、学園出る前に学園祭、友達と楽しめる思てなかったわ」
と菫姫がしみじみという。
「お前、普通にしゃべれよ」
王太子が雑に菫姫を扱う。
「ほっといてんか。結局この言葉抜けんかったわ。母上、家でずっとこれでしゃべってんの」
「義叔母上が?!」
菫姫の母親は淑女の鑑と称される王弟妃だ。王太子もそれは初めて知ったようだ。
「そう。あの人王都辺りの言葉とうちらの方の言葉とバイリンガルやのん」
菫姫はそういってケラケラ笑う。
学園祭ではリリゼットは自分の家の店に顔を出すと、父作成のかわの袋型の財布はすでに売り切れていた。しかしそれ以上に売れたのが父親が気まぐれに作ったただの革細工の手袋であった。かなりの数を売ったらしい。それもすぐに売り切れた、らしい。
「あれは売れますよ」
手伝いに来ていたバトルメイドの一人が言った。
「あんなに使いやすそうな手袋、知りません。薄くて軽くてフィットして。そのくせ手の動きは邪魔しないんです。加護とかなんとか以上に貴重ですよ、あの手袋!!!」
そのメイドは即、手持ちのお金を払って購入したそうだ。
「ほんとはだめなんですけど、お手伝いに来てる人が買うの」
とこっそりリリゼットに耳打ちしてくれた。
その後、戦闘メイドや戦闘執事の訓練所からドルバック家に定常的に手袋の注文が来るようになったのはまた別の話。
後夜祭は学内のボールルームに集まる。軽い夜会がひらかれるのだ。このあたりの手配が生徒会の仕事で、その上でダンスが始まるとリーゼと王太子はファーストダンスを踊らないといけない。その準備もいる。リリゼットは忙しくしながらフロアに目をやると今までにない和やかさでリーゼと殿下が踊っていて、少し和んだ。
今回は全員制服で、と指示していたのでみな華美にならずカジュアルな感じで済んだ。ただ、一部女子勢からはクレームがついた。が、おおむね好評であった。
『いちいち着替えずに済んで楽』(三年在籍王族男性)
という鶴の一声でクレームもおさまった。
「少しゆっくりできますね」
リリゼットが一休みしようとテラスに立った時クレマンが後ろから来た。手には食べ物と飲み物が2つ乗ったお盆を持っていた。
「あちらの席に座りましょう」
奥まったところにあるテーブルにクレマンはリリゼットを誘った。
クレマンはリリゼットが食べられそうなモノを屋台で見繕って買ってくる。リリゼットも一緒に行くこともあった。基本は王太子とリーゼ、菫姫はテラスの席に座っている事が多かった。リリゼットとクレマン、リリゼットとイネスが屋台に行ったり、菫姫の護衛が買い物にいったりと皆で楽しく過ごしている。
王太子はコゼット嬢との事が落ち着てから以前のように浮ついたところがなくなった。リーゼとは友人的に仲がいいらしい。菫姫にはかなりこてんぱにやられたようでクレマンが苦笑する程度に菫姫は生徒会室で女王様をやってると言っていた。
「そやけど、学園出る前に学園祭、友達と楽しめる思てなかったわ」
と菫姫がしみじみという。
「お前、普通にしゃべれよ」
王太子が雑に菫姫を扱う。
「ほっといてんか。結局この言葉抜けんかったわ。母上、家でずっとこれでしゃべってんの」
「義叔母上が?!」
菫姫の母親は淑女の鑑と称される王弟妃だ。王太子もそれは初めて知ったようだ。
「そう。あの人王都辺りの言葉とうちらの方の言葉とバイリンガルやのん」
菫姫はそういってケラケラ笑う。
学園祭ではリリゼットは自分の家の店に顔を出すと、父作成のかわの袋型の財布はすでに売り切れていた。しかしそれ以上に売れたのが父親が気まぐれに作ったただの革細工の手袋であった。かなりの数を売ったらしい。それもすぐに売り切れた、らしい。
「あれは売れますよ」
手伝いに来ていたバトルメイドの一人が言った。
「あんなに使いやすそうな手袋、知りません。薄くて軽くてフィットして。そのくせ手の動きは邪魔しないんです。加護とかなんとか以上に貴重ですよ、あの手袋!!!」
そのメイドは即、手持ちのお金を払って購入したそうだ。
「ほんとはだめなんですけど、お手伝いに来てる人が買うの」
とこっそりリリゼットに耳打ちしてくれた。
その後、戦闘メイドや戦闘執事の訓練所からドルバック家に定常的に手袋の注文が来るようになったのはまた別の話。
後夜祭は学内のボールルームに集まる。軽い夜会がひらかれるのだ。このあたりの手配が生徒会の仕事で、その上でダンスが始まるとリーゼと王太子はファーストダンスを踊らないといけない。その準備もいる。リリゼットは忙しくしながらフロアに目をやると今までにない和やかさでリーゼと殿下が踊っていて、少し和んだ。
今回は全員制服で、と指示していたのでみな華美にならずカジュアルな感じで済んだ。ただ、一部女子勢からはクレームがついた。が、おおむね好評であった。
『いちいち着替えずに済んで楽』(三年在籍王族男性)
という鶴の一声でクレームもおさまった。
「少しゆっくりできますね」
リリゼットが一休みしようとテラスに立った時クレマンが後ろから来た。手には食べ物と飲み物が2つ乗ったお盆を持っていた。
「あちらの席に座りましょう」
奥まったところにあるテーブルにクレマンはリリゼットを誘った。
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