リリゼットの学園生活 〜 聖魔法?我が家では誰でも使えますよ?

あくの

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 「お兄様。ジュリエット義姉さんが怖がってます。顔も怖いです」

リリゼットが間の抜けた事を言う。

「リリゼット!お前は先に食堂に行って夕食を済ませてくれ。私はジュリエットと話す」

ニコルはそういうとジュリエットの腕をつかみ執務室に引きずっていった。

 食事を済ませろという兄の言葉にリリゼットはしたがって食堂に向かった。

「お嬢様、気を落とさずに」

侍女にそういわれてもリリゼットはピンと来ていなかった。

「えーと、何があったんですか?」

リリゼット付きの侍女は目を丸くした。

「あの、………ジュリエット様に無視されがちなの、お気づきになってませんか?」

リリゼットは驚いた顔になった。

「え?」

 夕飯を終わらせ、湯あみも済ませた。侍女の『後でお話します』という言葉を実行してもらう。侍女はしっかりリリゼットの目をみる。この侍女はリリゼットの亡くなった母親の侍女の娘で準男爵家の娘であった。行儀見習いでこの家に来て、結局結婚もせずにこの家の侍女をやっていた。リリゼットが帰宅してからずっとリリゼット付だった。 そもそもがジュスティーヌが帰ってきたときもジュリエットはナチュラルにジュスティーヌをいない者として扱う事が多かった。もっともすぐにジュスティーヌは夕食をアランと一緒にとって帰宅することが増え、ジュリエットの態度も目立たなくった。

 だが、リリゼットが帰宅したらまた始まったのだ。今回は、みな経験があるので自分の家族の分の夕食だけを指示するジュリエットに対抗してリリゼットの分も追加して作る。汁物や煮込みは多めに作るなどとして対抗していたが、リリゼットが帰宅した時にその場にいても一度も自分の方から
『おかえり』
と言ったことがないことや、お茶のオーダーも完全にリリゼットを数に入れない事などがずっと続いていると教えられる。

 リリゼットにしてみればまったく感じ取れていなかった事で晴天の霹靂ってこういうことね、とのんびり考えていた。修道院の粗食に慣れているリリゼットとしては帰宅した最初の日のスープとパンだけの食事も十分に美味しく贅沢に感じたものだが、あれも遅くにつくリリゼットの為に下ごしらえしておいた材料を使って、勝手に夜食を作ったからであった。いつもは夜食も作らないのに、と料理長がこぼしたのでそれが使用人の中に発覚したのだった。

 ジュリエットは比較的使用人は使い捨て、扱いをするので使用人には人気がなかった。嫌われているわけではないが、ニコルの『使用人も家族』という空気とは違いすぎた。
 ニコルはいつも誰かれなく気を使ってくれるし、長く勤めてほしいと思っている。しかしジュリエットの態度でドルバック家の使用人は長年勤めている人数があまりいない。バトルバトラーやバトルメイドは取引先との提携で入れ替わる事も多い。この入れ替わりもかなり頻繁なのだが、取引先にはジュリエットはあまり上等な雇い主と思われていなかった。
 ニコルの人徳がドルバック家を救っていた。12歳から『奥様』で家を自由にしてきたジュリエットは使用人も自分と同じ『人間』であり、扱いようが悪ければ気分を害する、ということが頭から抜けているのである。ジュリエットは幼い、12歳で嫁いできてその頃にはリリゼットもジュスティーヌも修道院で年に一回の帰宅で、その頃は実家から付いてきていたなににつけても気働きの良い乳母がついていたのでそういう部分が育つ事がなく過ごしてきていた。その上、乳母が何かにつけて周りに気を遣ってジュリエットのそういう部分を見せずに済むように、と働いていた、
 子供たちの乳母もジュリエットの扱いが元で早々に辞めている。ジュリエットとしては子育てに補佐が安定してなくて迷惑だと思っていたようだが。

 バトルメイドやバトルバトラーを入れ始めて侍女も執事も以前よりは定着するようになったし、執事長と侍女頭が協力して使用人の不満を拾い上げるようにしていた。また、以前よりは意見が言いやすくなったと使用人は言っている。



 ニコルの執務室は静かだった。侍女頭が果実酒とチェイサーを運んできた。ニコルはジュリエットと自分の前にチェイサーを置く。

 「使用人は使い捨てではないし、リリゼットも使用人ではない。わかっているか?」

怒るではなく淡々とニコルは言う。ジュリエットは不満顔であった。
 
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