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 細工を行う部屋にリリゼットとエドアール、ニコルが入っていく。
「アドンのおじさん」
宝飾を担当しているのは父の従兄の一人だった。
ニコルの声にアドンは
「ん」
と小さく答える。
「余ってる石あるならリリゼットと俺で加護をつけようとお思って」
「いくらでも余ってる。………リリゼットには出来たらそこの指輪用の石に貞節の守護を両方共につけてくれ。俺の魔力量じゃ少し足らん。エドアール君に人工魔石マテリアルの話は聞いてる。赤髪の魔女ならできるやもしれん」
世間では赤髪の魔女は見下した言葉であったが、リリゼットの家の人間が一族のものに言う場合に限っては『自分は相手を認めてる』と言う場合に使う。リリゼットも一族の人間にそういわれるのは誇らしくもあった。
「その石はあの二人につけてもらう。もしこれがうまくいったら………忙しくなりそうだな」
リリゼットはよくわかっていなかったが宝石に加護魔法をつけるにはかなりの魔力を消費する。石が大きくなれば大きいほど、そして石のレア度が上がれば上がるほど魔力をはじく。そこにある石は結婚指輪用なので大きさはそこまで大きくないが、うっすらとピンク色に見えるダイヤモンドと少し青味がかったダイヤモンドだった。
「そっちの座りやすい椅子を使うといい。ニコルはドレスのボタンに加工する真珠に幸運の加護魔法をゆるくかけていってくれ」
アドンはこれ幸いにリリゼットとニコルを使い倒す。なんなく指輪用の石にリリゼットは貞節と祝福をつける。二連続で祝福現象が起こってもこの家の人間は黙々と作業をしている。エドアールは呆然とそれを見ていた。どうも祝福も段階があって、ニコルもアドンも手元にだけ祝福現象が現れてすぐ消える、というのを数回出現させていた。
 エドアールはこの一族はこの国から出すのを王家が嫌がっているのを知っていたが、現場にいるとつくづくこの一族から聖女が何人も出るのは当たり前なのかもと思った。
 エドアールは見学しながらニコルに尋ねる。
「リリゼット嬢は聖女候補に上がらなかったのか?」
ニコルが答える前にアドンが答える。
「うちの一族は赤毛はどれだけ聖なる力が強くても聖女や聖人の候補には差し出さん。それは我が一族と王家との契約だ。赤毛が出るたび神殿に持っていかれたら我が家としたら迷惑だ」
と心底嫌そうに答えた。
「聖女や聖人になると家と縁を切るからな」
エドアールも納得する。
「赤毛の守護は我が一族にとって本当に聖なるものだからな。リリゼットも外に嫁にはださんぞ」
とアドンは言い切った。リリゼットもそれは承知だった。一族に赤毛が生まれると男性だとへつに一家を構え、領地内に自分の領地をもらえるし、女性も本館のあるこの場所に別邸を立ててもらいそこに夫となる人と住むことになっている。
 不思議なことに一族に赤毛は一人だけでる。その一人が身罷るまでは赤毛は生まれない。同時に赤毛が出たことは今まで2度あったが、2度とも戦乱期で加護の力がこの国に必要な時期であった。
 なので本館の別邸は今は無人で手入れだけがされている状態であった。
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