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「また誘ってもよいでしょうか?」
帰り際の馬車の中でクレマンにそういわれリリゼットは頷いた。
「騎士団の視察の件、次兄にも言っておきます」
「お兄様何人いらっしゃるんですか?」
リリゼットはクレマンに尋ねた。
「同腹は長兄次兄私の三人ですが、父には愛人が3人おりまして。そこに兄が2人、姉が3人、妹が3人います。兄二人は早々に他家に養子として出ていきまして、あまり接触はありません」
クレマンは淡々と告げた。リリゼットは父親は母親が亡くなってからも決まった愛人を作らなかったな、と思った。
「明日も学校で」
クレマンはそういうと夕食前にリリゼットの自宅に送ってくれた。
「ちゃんと良い子ちゃんのデートコースだったようだな」
エドアールがにやりと笑う。
「リリゼットには通用しませんよ」
ニコルがくぎを刺す。
「『修道院』が身についてるんだな」
ニコルはエドアールをまっすぐに見る。
「ジュスティーヌもそうなんです。………だからこそのあれ、なんですよ。『夫となる人には逆らわず』ってね」
とニコルは苦々し気に言った。リリゼットもやっと最近姉の奔放な噂が夫となるアランと公衆の面前でいちゃついている事に起因していることをニコルの説明によって理解した。
ジュスティーヌはアランの『夫婦になるのだからあたりまえ』に押し切られあれよあれよと染まっていった、ということも義姉から聞いた。そしてジュスティーヌの結婚はあと一月後で家族だけでこじんまりとした結婚式をとりおこなうと言うことを聞いていた。
アラン自体も悪い男ではなく、ジュスティーヌを迎えるにあたってウェディングドレスの発注をドルバック家にかけていた。つい先日、8割ほど刺繍の終わったヴェールをジュリエットから渡された。白い透けた布地に豪奢で清楚な加護編みのレースが縁取った美しいヴェール。この美しいレースの加護編みをこなす厳つい容姿の叔父を思い出しリリゼットはにっこりした。ここに特殊な加工で虹色に光る白い糸でバラのつぼみと少しほころんだ花を刺していくのだ。リリゼットは姉の幸せを願いつつ手早く正確に刺していった。
ヴェールの刺繍もほぼ出来上がり残りの工程は家に来ている職人達が仕上げていく。エドアールはそれを見たくてリリゼットの家に泊まっているのだ。
「そうだ、リリゼットちゃん」
夕食後、エドアールが言った。
「ジュスティーヌ嬢のティアラの石に加護をつけないの?」
エドアールはリリゼットに尋ねえる。
「それ、職人のおじさまのじゃまになりません?」
ニコルが考えつつ答える。
「使う宝石も多いし全部には加護つけられないだろう。………皆がお前みたいに魔力量多いわけじゃないからな、リリゼット」
そういわれても、とリリゼットは思った。
帰り際の馬車の中でクレマンにそういわれリリゼットは頷いた。
「騎士団の視察の件、次兄にも言っておきます」
「お兄様何人いらっしゃるんですか?」
リリゼットはクレマンに尋ねた。
「同腹は長兄次兄私の三人ですが、父には愛人が3人おりまして。そこに兄が2人、姉が3人、妹が3人います。兄二人は早々に他家に養子として出ていきまして、あまり接触はありません」
クレマンは淡々と告げた。リリゼットは父親は母親が亡くなってからも決まった愛人を作らなかったな、と思った。
「明日も学校で」
クレマンはそういうと夕食前にリリゼットの自宅に送ってくれた。
「ちゃんと良い子ちゃんのデートコースだったようだな」
エドアールがにやりと笑う。
「リリゼットには通用しませんよ」
ニコルがくぎを刺す。
「『修道院』が身についてるんだな」
ニコルはエドアールをまっすぐに見る。
「ジュスティーヌもそうなんです。………だからこそのあれ、なんですよ。『夫となる人には逆らわず』ってね」
とニコルは苦々し気に言った。リリゼットもやっと最近姉の奔放な噂が夫となるアランと公衆の面前でいちゃついている事に起因していることをニコルの説明によって理解した。
ジュスティーヌはアランの『夫婦になるのだからあたりまえ』に押し切られあれよあれよと染まっていった、ということも義姉から聞いた。そしてジュスティーヌの結婚はあと一月後で家族だけでこじんまりとした結婚式をとりおこなうと言うことを聞いていた。
アラン自体も悪い男ではなく、ジュスティーヌを迎えるにあたってウェディングドレスの発注をドルバック家にかけていた。つい先日、8割ほど刺繍の終わったヴェールをジュリエットから渡された。白い透けた布地に豪奢で清楚な加護編みのレースが縁取った美しいヴェール。この美しいレースの加護編みをこなす厳つい容姿の叔父を思い出しリリゼットはにっこりした。ここに特殊な加工で虹色に光る白い糸でバラのつぼみと少しほころんだ花を刺していくのだ。リリゼットは姉の幸せを願いつつ手早く正確に刺していった。
ヴェールの刺繍もほぼ出来上がり残りの工程は家に来ている職人達が仕上げていく。エドアールはそれを見たくてリリゼットの家に泊まっているのだ。
「そうだ、リリゼットちゃん」
夕食後、エドアールが言った。
「ジュスティーヌ嬢のティアラの石に加護をつけないの?」
エドアールはリリゼットに尋ねえる。
「それ、職人のおじさまのじゃまになりません?」
ニコルが考えつつ答える。
「使う宝石も多いし全部には加護つけられないだろう。………皆がお前みたいに魔力量多いわけじゃないからな、リリゼット」
そういわれても、とリリゼットは思った。
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