リリゼットの学園生活 〜 聖魔法?我が家では誰でも使えますよ?

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 「急に誘ってすみません。驚いたでしょう」

クレマンの言葉にリリゼットは頷いた。嘘をついても仕方ないからだ。

「………そろそろ縁談を、と言われてましてね。ならば興味がある人と話してみようと」

クレマンの言葉にリリゼットはにっこりした。実利的な部分は理解できたからだ。

「まずは好奇心から?」

クレマンも率直に答えた。

「私は色恋が理解できません。ならば好奇心を刺激された方と話すのが一番いいと思いました」

クレマンは生真面目な表情だった。

「今まで色々な令嬢からお声がかかりましたが、好奇心をそそるには足らず。それと殿下を見ていると軽々に令嬢とかかわるとろくなことにならない、と」

リリゼットもクレマンもくすり、と笑った。


 
 「ここなんです」

リリゼットの執事はさっと良い位置に日よけのパラソル、小テーブルと座りやすい椅子を用意した。氷魔法を利用した瓶で冷えた果実水をガラスのフルートグラスに注ぐ。 

 目前には王都が緩やかに広がり、大きな木が生えている。この丘はクレマンの家の敷地内なので他には人がいない。クレマンとリリゼットの生真面目な会話は意外なほど弾んでいた。リリゼットは男性との会話が好きではなかったがクレマンとの会話はクラスの男子と言葉を交わす時のような嫌な感じはなかった。

 「今度ダンテス先生が騎士団の練習を見に行こうって言われてまして」

「へぇ………、人工魔石マテリアルの件でしょうね。ダンテス先生、あのマテリアル喜んでましたよ」

「喜んで?」

リリゼットには意外な言葉だった。クレマンはゆっくりと話してくれる。
 クレマンの兄エティエンヌリリゼットの兄ニコル、ダンテス先生の三人は今通っている学園ではなく王都北部の男子生徒の多い私学に通っていたこと、その私学は不祥事があって潰れるまでは中等部からの男子高位貴族が通う学校であったこと。

 「幼稚舎と初等部は学園、中等部はどちらでもよくて、高等部から大学までは王立男子校というのが高位貴族男子の平均的な進路でした。学園に入るのは男子校に入る成績に足りなかった男子だったのです、かつては」

 その男子校は不祥事、有体に言えば男子教師と学生の心中沙汰、で潰れてしまった、と。それが教師は隣国の貴族子弟、生徒は王族に連なる方というので表ざたにはできなくなりその絡みで菫姫の隣国への輿入れも決まった、と。それが十年前でリリゼットは既に修道院にいたころであった。

リーゼ嬢の妹ジュリエット嬢の輿入れもその関係のようで、我が国は断り切れないのです」

生徒の脅迫で始まった関係の上、生徒が一人で思い詰めて無理心中という話で非は王国側にあった。隣国は関係強化の名の元に王国に食い込もうと長期計画をしている、という見方を大人たちはしているようだった。が、リリゼットは素直に言葉にした。

「………器量望みなのかと思いました」

ジュリエットも菫姫もそうそういないレベルの美少女でそれこそ手にれるために何をしてもいいと思う人もいるだろうとリリゼットは思った。

「………正直、殿下もそうおっしゃってます。ジュリエット嬢に関しては………大人になったら帰ってくるんではないかと」

頼りない王太子ではあるが、色ごとに関してはクレマンと違って鼻が利くようだった。

 「それはそれで………国交の問題になるのでは?」

クレマンは溜息をついて頷いた。
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