リリゼットの学園生活 〜 聖魔法?我が家では誰でも使えますよ?

あくの

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 自宅への手紙類は兄からの『お返事』でおさまったが、学園内ではリリゼットの机や鞄に卑猥な手紙を突っ込んだりする輩が出てきてこれはこれで悩みの種だった。記名の手紙ではなく無記名でいたずらとしか思えない。リリゼットは毎日手紙を破り捨て教室のゴミ箱に捨てていた。

 ある時令嬢の一人に

「お手紙もらって、学園ここで見えるように捨ててるって、もててますっていうデモンストレーションに見えますわ」

と言われた。その一言からリリゼットへの微妙ないじめが始まった。他の令嬢から無視される、食堂でリリゼットがテーブルに着くとそのテーブルの令嬢はそそくさと席を立ってしまう。そんなことが続きリリゼットは面倒くさくなってお昼ご飯は学園の外に来ている屋台で買って裏庭で一人で食べるようになっていた。


 「リリゼットちゃん、こんなところにいたんだ」

よく知らない男子生徒が横に座る。

「どちら様ですか?」

「俺の名前覚えてないんだ」

制服のタイピンの色は同級生の色だったが、リリゼットは正直クラスの男子の顔と名前が一致していないのだった。リリゼットの表情がこわばっているのを男子生徒はにやにやしてみている。

「俺はブノワ。エリオット子爵家の息子だ。覚えとけ」

そういうとリリゼットの手首を思い切り力を入れて握る。

「っ」

リリゼットが声を出すとブノワは一層笑顔になった。  

「素直に返事しとけば乱暴な事はしない。明日も昼はここにいるんだな?」

「決めてません」

リリゼットは握られた手首を自由にしようとしているが、ブノワの力強くなる一方で痛みも強く感じる。

「生意気な事いうな。お前もお前の姉みたいな女なんだろ?あ、痛いのが好きなのか」

手首の中で骨がみしり、ときしむ。だが、ここで痛みで泣いてもこの男は手を緩めると思えない、リリゼットはどうするべきか考えていた。

「明日はもっといいことしてやるからな」

 ブノワはクラス内で孤立しても何も言わないリリゼットを見て『こいつは何も言えない女だ』と判断したのだ。それなら自分がいいようにしよう、と。普段はアルバン・デュモン侯爵令息の腰ぎんちゃくをしているが、本性は隠している。大抵はこの加虐的な性格と衝動は娼婦相手に発散しているのだが、リリゼットの無抵抗な様子に学園内奴隷にしたくなったようだった。



 このいじめの間、リーゼは心配しつつ、自分が口を出すことは慎んでいた。公爵令嬢である自分がこういうもめごとに口をだすと裏に潜って過激になりかねないし、『身分を笠に着て命令する』ととられることが多いからこういう場面は黙るしかなかった。他の令嬢たちもそれを知っていたので口出ししにくいレベルの『無視』をメインにしていたのであった。暴力や窃盗、持ち物の破損などするとリーゼに口を出す隙を与えてしまうから、そういうことは一度もすることがなかった。
 リリゼット自身は女の園で育って、女同士のこういう陰湿ないじめは見慣れていたし、人間が集団になるとありがちなこと、と思っていた。そして暫くやり過ごして何が原因か観察して見極めようとしていた。

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