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「あら、リリゼット様はユニコーンのお友達なのね」
令嬢の一人が揶揄うように言う。お茶会の場にいる令嬢たちにくすくすと笑いが広がる。リリゼットは何を言われているかわかっていない。
「婚約者がいらっしゃったことはないの?」
このお茶会の開催主の公爵令嬢エリザベス・ダンテス、通称リーゼがリリゼットに尋ねる。
「この赤毛ですから………。好いてくれる方もいらっしゃらなかったですし」
「もてないんですね」
ダンテス三姉妹の末娘、奇しくも義姉と同じ名の12歳のジュリエットが無邪気に断言する。きれいな金の髪にバラ色の頬、金茶の瞳のお人形のようにかわいらしい少女にそういわれてリリゼットは反論できなかった。
この国では赤毛は魔女の髪の色と呼ばれている。リリゼットの家系では特にそうだった。リリゼットが生まれたドルバック伯爵家では加護の細工を貴族対象にする家系だった。刺繍や革細工、人によっては鍛冶師など個人の技量によって細工物は変わる。問題はリリゼットは加護刺繍ができるのだが加護の力は強いのに刺繍の腕がいまいち、なのだ。だから表で使うハンカチではなく下着に加護刺繍をすることが多い。ドルバック家の中でも力の強い人間の髪は赤みを帯びるのだが、大抵は姉のジュスティーヌのように金髪なのに光が当たれば赤く輝く不思議な髪色になるのだが、加護を授ける力が強い人間の髪色は真っ赤になるのだ。この加護を授ける力のせいで、ドルバック家は王族に次いで、聖女を輩出する事も多い、そういう家系であった。
だがこれから3年間は通称『学園』、王立ディアーヌ学園に通うことになっているので暫くは刺繍をする量は激減する。なのでこのタイミングで刺繍自体の腕を上げろ、と家長に厳命されている。
また、姉がこの秋の初めに結婚するのだが、その結婚式に着る衣装に刺繍を施したいと姉の婚約者のアランにも相談されている。家の格は我が家より低い男爵家ではあるけども、飲食店などを経営するウジェ商会の力で裕福な家であった。ジュスティーヌとアランは最近、バカエロカップルとして街でも有名になっていて、リリゼットはそれを揶揄買われていたのだ。
が、リリゼットは性的な知識が皆無でここで繰り広げられる令嬢達の会話が理解できていなかった。1つ上の姉と二人、領地にある修道院で四歳から15歳まで育てられているのでそういう知識を持たずに育ってきている。
「ですから、貴方のお姉さまとアラン様が毎日のように安宿に入っていってるのを見かけるという話です」
「………お姉さま、夜はいつも家で過ごしておりましたよ?」
このお茶会は長期休暇中の交流会の一つであった。休暇中の冒険の話になり、リリゼットの姉の『武勇伝』をほかの令嬢から聞かされていたのだった。曰く、カフェのテーブルの下でまさぐりあってたや安宿の窓際で手をついてなどきゃーきゃーと令嬢たちが話すことがリリゼットにはまったく理解できていなかったのだ。ほとんどの令嬢はそんなリリゼットの無知をあざ笑っていたが、開催主のリーゼは本気でリリゼットが心配になっていた。
令嬢の一人が揶揄うように言う。お茶会の場にいる令嬢たちにくすくすと笑いが広がる。リリゼットは何を言われているかわかっていない。
「婚約者がいらっしゃったことはないの?」
このお茶会の開催主の公爵令嬢エリザベス・ダンテス、通称リーゼがリリゼットに尋ねる。
「この赤毛ですから………。好いてくれる方もいらっしゃらなかったですし」
「もてないんですね」
ダンテス三姉妹の末娘、奇しくも義姉と同じ名の12歳のジュリエットが無邪気に断言する。きれいな金の髪にバラ色の頬、金茶の瞳のお人形のようにかわいらしい少女にそういわれてリリゼットは反論できなかった。
この国では赤毛は魔女の髪の色と呼ばれている。リリゼットの家系では特にそうだった。リリゼットが生まれたドルバック伯爵家では加護の細工を貴族対象にする家系だった。刺繍や革細工、人によっては鍛冶師など個人の技量によって細工物は変わる。問題はリリゼットは加護刺繍ができるのだが加護の力は強いのに刺繍の腕がいまいち、なのだ。だから表で使うハンカチではなく下着に加護刺繍をすることが多い。ドルバック家の中でも力の強い人間の髪は赤みを帯びるのだが、大抵は姉のジュスティーヌのように金髪なのに光が当たれば赤く輝く不思議な髪色になるのだが、加護を授ける力が強い人間の髪色は真っ赤になるのだ。この加護を授ける力のせいで、ドルバック家は王族に次いで、聖女を輩出する事も多い、そういう家系であった。
だがこれから3年間は通称『学園』、王立ディアーヌ学園に通うことになっているので暫くは刺繍をする量は激減する。なのでこのタイミングで刺繍自体の腕を上げろ、と家長に厳命されている。
また、姉がこの秋の初めに結婚するのだが、その結婚式に着る衣装に刺繍を施したいと姉の婚約者のアランにも相談されている。家の格は我が家より低い男爵家ではあるけども、飲食店などを経営するウジェ商会の力で裕福な家であった。ジュスティーヌとアランは最近、バカエロカップルとして街でも有名になっていて、リリゼットはそれを揶揄買われていたのだ。
が、リリゼットは性的な知識が皆無でここで繰り広げられる令嬢達の会話が理解できていなかった。1つ上の姉と二人、領地にある修道院で四歳から15歳まで育てられているのでそういう知識を持たずに育ってきている。
「ですから、貴方のお姉さまとアラン様が毎日のように安宿に入っていってるのを見かけるという話です」
「………お姉さま、夜はいつも家で過ごしておりましたよ?」
このお茶会は長期休暇中の交流会の一つであった。休暇中の冒険の話になり、リリゼットの姉の『武勇伝』をほかの令嬢から聞かされていたのだった。曰く、カフェのテーブルの下でまさぐりあってたや安宿の窓際で手をついてなどきゃーきゃーと令嬢たちが話すことがリリゼットにはまったく理解できていなかったのだ。ほとんどの令嬢はそんなリリゼットの無知をあざ笑っていたが、開催主のリーゼは本気でリリゼットが心配になっていた。
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