聖女は断罪する

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131. よく寝た。

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 レイラが起きるとレイラはベッドの中だった。

「え?」

もう翌日の昼過ぎでレイラは慌てて用意する。今日もいつものデザインのワンピースで結構長くなった髪を緩やかに編んで片側に流している。

「やっと、起きたか」

食堂にはテオとジーク、クリストフが座っていた。レイrは慌てて臣下の礼を取った。

「プライベートのクリストフだからそういうのいいよ」

クリストフはジークとテオについてきたのだという。

「帰ったらジルにこき使われる予定」

テオが教えてくれてレイラは笑った。

「笑い事じゃないんだな、これが。……ちょっと逃げたい案件が来てて頭をまとめたくてここに逃げて来た」

テオも頷く。ジークは何も言わず棒状に焼かれたマーサの焼き菓子を齧っている。ジークはこの焼き菓子をかなり気に入っていて水分と焼き菓子で結構腹が持つと言っている。

「一応ジルが今日のクリストフの仕事を処理してくれるけど明日はジルの仕事を手伝う事って取引があったわけ」

テオが説明してくれる。そういえばヴィヴィアンヌがみえないとレイラが思ったらテオから説明が入った。

「今日はロッドバルト師が来ててね。二人で影の後始末中。……俺とジークは手を出すなっ
て緊急休暇中」

 表向きは宮廷魔法師団はジークが団長だがテオがその上に君臨している。上位貴族以上には周知の事実だが下位、中位以下の貴族はそれを認知していない人間も多かった。

「ロッドバルト師には陛下が同行してるし」

「え、父上が?」

クリストフが驚く。

「多分、王子達はみんな今、王宮にいないんだろ?」

ジークがマーサが用意した数種類のジャムが添えられたトーストに手を出し齧りながら言う。

「俺以外は皆ロランとペールに同行して二人の領地を見に行ってから森の中の初級ダンジョンを視察にいくそうで、長丁場の旅行に出てる」

クリストフが答える。

「ああ、チャドも同行してる。小さい王子二人が冒険者になるって騒いでるからな」

テオの前のトーストは細長く切られている。テオの前にはエッグスタンドに入った半熟のゆで卵が置かれている。テオは卵のてっぺんをスプーンで叩き少し割って卵を切り取った。テオは切り取った場所にトーストを差し入れとろっとした黄身をトーストにまとわりつかせて食べ始めた。レイラの前にはプレーンのオムレツとふかふかの白パンが置かれる。クリストフは白パンにソーセージが挟まっているものにたっぷりのケチャップとマスタードを乗せて食べている。皆の好きなものを食べながら和やかに時間を過ごした。

「王都の森はダンジョンいくつくらいあるんですか?」

レイラの質問にジークが答える。

「多分7つか8つ。中心部のダンジョンはまだ完全攻略はされてない。ギルドも本腰を入れてるけどなかなか。……チャドのおっさんが所属してたクランが一番深く潜ってたようだけど、おっさんが辞めてからは振るわないみたいだな。あれでおっさん、最高の回復役だったらしいぞ。『戦う回復役』って呼ばれてた聖騎士だったらしいから」

ジークは公式では無口となっているが心を許すと普通に喋る。実は照れ症で人前が苦手なのだと。ヴィヴィアンヌの前で無口なのはあまりに好みの女性なので喋れないのだとか。

「副教皇様、強い冒険者だったのですね」

レイラが感心している。クリストフはそんなレイラの様子を見るとやはりこの子は年上が好きなんだろうかともやもやしたものを感じてしまう。ジークはそれを察知したが知らんふりをしテオはまったく我関せずだった。ジークはクリストフには悪いがテオとレイラがくっついて欲しかった。ヴィヴィアンヌと接触する時間も増えるしなどと不埒な気持ちを持っていた。が、ヴィヴィアンウとチャドが本当に仲が良いのでちょっと焼けるな、などと考えつつトーストと用意されたジャムを楽しんだ。
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