聖女は断罪する

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130. 疲れた。

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 レイラがシルヴィの館の方へ送られるとマーサが待っていてレイラを抱きしめる。

「疲れた顔だね」

テオはレイラの髪を撫でる。

「今日は思いっきりマーサに甘やかしてもらうといい。マーサ、俺は夜にまた来るよ」

「夜食がいいですか、夕食だ?」

テオは暫く考えていたがにかっと笑って返事を返す。

「もちろん両方」



 「ヴィヴィアンヌ様の分はどうしましょう」

「師匠、遅くなったらあんまり食べないのでお茶程度の用意をお願い」

「わかりました。……レイラ様は先ずお風呂ですね。オレンジとグレープフルーツの精油を炊いてあります。何も考えずお湯に浸かってください」

マーサに促されなんとなく重い体を引きずって湯船につかった。柑橘系のオイルの香りが炊かれた浴室は深呼吸をすると体の隅々まで柑橘系の香りに浸されている気持ちになる。
 呼吸を整えながら魔力を体中に流す。その時に吸い込んだ柑橘系の香りを一緒に体中に連れて行くイメージで呼吸をする。
 ゆっくりとお湯に浸かったらマーサがふかふかのスリッパとタオルとバスローブを用意してくれていた。レイラは自分の事は自分でするので専属の侍女を持っていない。湯上りは大抵マーサが肌と髪の手入れをしてくれる。
 自室に戻るとマーサが大き目のゴブレット一杯に冷たくしたレモネードを用意してくれていた。

「お湯に浸かった後はちゃんと水分とりましょうね」

マーサが髪をタオルドライしてくれたのでいつものように風魔法に火魔法を加えて暖かい風を作り髪を一気に乾かした。ふと思いついてレイラはメモをとった。
 エミールは最近生活魔法杖を考え着いて元担任アルフォンスの親の商会を通じて売り出した所だったのだ。これが結構売れているらしく最近エミールは羽振りがいい。本人は『使い道ありゃしねぇ』と言っているが魔道具用の素材をガンガン買っていると聞く。アルフォンスが『おっさん、稼いだだけ親父の商会で使ってるからなぁ』と。

 髪が乾くとマーサがゆっくり髪を溶かしてくれる。髪がつやつやになった頃にはレイラはゴブレットのレモネードを飲み干していた。
 マーサが最近人気があるという薔薇の精油を使った化粧水とクリームを全身に塗ってくれる。マーサが下がると用意されていた夕方用の至福に着替えた。
 緩い下着に胸下切り替えのワンピースで首元は四角くくりぬかれ青いリボンで縁取っている。胸下にもおなじリボンが飾られている。そこからすとんとくるぶし少し上まで白いスカートが流れ落ちている。長い袖はゆとりをもって腕を包んでいる。
 これはシルヴィが好んで着ていたデザインで同じ型で色違いをレイラもいくつか用意している。

 「お腹空いてますか?」

マーサが洗濯ものを取りに来て訊ねる。

「んー、あんまり」

「じゃ、軽く道を着けましょうかね」

一旦引っ込んだマーサは本当に軽いお茶を用意して戻ってきた。

「なんの変哲もない紅茶と、ルシア様からの頂き物です」

小さな薔薇の形のジュエルキャンディがいくつか置いてある。

「ゆっくりお茶を飲む鳴り眠るなり。テオ様がいらした時にでも少しつまんでいただけたらいいと思います」

マーサはそういうと隅の椅子で編み物を始める。レイラは口の中に言われるとほろっと崩れるそのキャンディをいくつかたべて紅茶を飲む。

 疲れたし、とレイラは長椅子で横になるが今日はマーサも何も言わなかった。レイラはそのまま眠りに着いた。
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