聖女は断罪する

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128. 断罪の前に

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 デビュタントが終わり、クリスとレイラはヴィヴィアンヌと共に王宮へいた。

「ではこの印とこの紋をレイラ個人の物とし、登録する」

ジルが宣言する。

「レイラの成人以降、この印がないドゥエスタンの書類は無効とする。万が一の場合はクリスとセドリックが家を預かり、ヴィヴィアンヌを顧問とする」

レイラとクリスは沈黙をもって答える。

「レイラの成人まであと少しだな。……長老会から正式な書類が届いている。実行の許可も与えてある」

レイラは頷いた。ジルと陛下はレイラにほほ笑んだ。




 「メルヴィン、手筈はわかった?」

メルヴィンは頷く。メルヴィンは最近、『次期騎士団長』と呼ばれるくらいに騎士として成長していた。王都の若い女性の中では『騎士団長様』という『あだ名』で呼ばれている。 本来の騎士団長、リチャード・オーエンの父もメルヴィンに目をかけているようだ。リチャードとエメは騎士団に移動した。そしてエメは魔法師団に、リチャードは一騎士として騎士団に配属された。
 メルヴィンは王都内を取り締まる第一から第五騎士団のうちの第三騎士団の中の一つの班、10人ほどの班長を勤めるようになった。第三騎士団は基本王子付きの騎士団であった。王子が個人の責任で動かせる騎士団である。
 レイラは誕生日前にアルバート陛下からメルヴィンの班を借りた。

「誕生日は明日なので実行日は明後日で。オーエン様も同行してくださるって。……それとメイ、愛人の娘は素っ頓狂だから何を言い出すかわかんないから……」

「素っ頓狂の相手はあタしがするわ。隣の国の影出身のハナって言います。影のケジメをつける為にロッドバルト師に派遣サれてきました」

時々なまるのはご愛敬というところか。ぱっと見た目は男性か女性か区別がつかない。レイラは魔力を見れば性別はわかるけどそこまでしなくていいか、と判断する。

「私とジークは家の外に待機してるから。逃げてくる奴を捕縛する役目で」

ヴィヴィアンヌがレイラの手を取る。

「長老会の人は明後日、北の端の家で待ってるそうです」

レイラが報告する。

「わかった。代行達を捕縛後、私があんたとあの家族を北の端につれていくし、テオがアルバートを連れていくって。書類は完全に揃ってるから北の端の家で代行のサインを貰う予定。……代行が拒んだらレイラのサインで動くけどね」

レイラはほほ笑む。

「わかってます。……見せつけるのは大事ですしね」

「ほんと、レイラはテオの生徒でもあるわ。……いや、ジル、かな」

「ジル様にはお世話になってます。あちらの執事の方が色々教えてくださったし」

「去年は学校よりジルの所の方が勉強になったようだったしね」

ヴィヴィアンヌもほほ笑んだ。

「ええ。為政者の視点を知れたのは良かったです」

レイラはまっすぐヴィヴィアンヌを見る。

「私自身は未熟ですがクリスやセドリックというスタッフにも恵まれました。……明後日にはドゥエスタンの長として代行達の始末をつけます」

「ああ。それは長の仕事だ。……国の長も肯定してくれているから罪悪感を持たなくていい」

レイラは小首を傾げた。

「罪悪感を持つようなかかわりを彼らと持った記憶はないです。あの人達をのさばらせるのはドゥエスタンの為にならない、それだけです」

ヴィヴィアンヌはレイラを抱きしめた。

「それでもね。人を裁くのは心が疲れる事だからね」

ヴィヴィアンヌはレイラの頬を撫でた。
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