聖女は断罪する

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113. その後 3

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 「ミレーユのパターンはこれ」

ヴィヴィアンヌは親石に手を乗せた。親石に依頼された通りの魔力や全身をめぐる気のパ
ターンを持ってきたのだ。もちろんデジレのパターンも手に入れてある。それは前回の『調査』名目の血液検査で各家の当主の血液から親石は現当主の健康や精神の情報を手に入れている。

『フィールズの家に王家の血を入れた方がいいな。これはやつらの血統が持つ病だ。かなり若い時から病が出てたみたいだな。よく耐えたよ。この子。前侯爵は不眠という形ででてたな、この病が』

親石の精霊が言う。ヴィヴィアンヌ達はドラゴンの『呪い』を受けているので親石と直接やり取り出来るのだ。もちろん他の人には聞こえない。

『そもそもこの国の王家は癒しの、聖女の家系だからな。流れる血の中に癒しの力が少なからずある。フィールズ家の次代には王家絡みの娘を、と陛下には伝えておく。それと陛下に
早く来いと伝えておいてくれ。また、魔力を注ぎに来るのをさぼってやがる』

ヴィヴィアンヌは了承の意を伝えた。

『前侯爵と妹は死ぬまであの牢だよ。気力で持たせてるが前侯爵の寿命も終わりに近い』

「まだ若いのに……。60そこそこじゃないか。うちの息子より3つ上なだけだよ」

『ああ、あいつもう、あの魔草から作る睡眠薬が無いと眠れないようだぞ。このところの騒動で摂取してないからもう一月ほど殆ど寝てないはず。エドガーは一応自分の力で地下を借りてる間は無理に寝かしてたようだがな」

親石のすぐ横に吸精鬼エドガーが封じられたタリスマンがおいてあった。

『エドガーと同族の足取りは異常な植物の枯れ方をしたところを報告書で当たってみると移動の経路はわかるらしい。エドガーと同族はどうしても力が必要だったりすると植物から力を得るらしいのだが膨大な量の植物を必要とするのでかなり広範囲で植物を枯らすと言ってた。ウィルに当たらせるといいと思うぞ』

ヴィヴィアンヌは親石に訊ねる。

「そういえば、エドガーはあんたの本当の正体はわかってるのかね?」

親石から笑っているような気配が伝わる。

『教えた。そもそもエドガーの先祖が俺を愛したドラゴンあいつを崇拝したところからずっと話してやってる』

この『親石』はドラゴンの秘宝であった。そのドラゴンをこの王家の先祖である勇者と聖女が調伏したのが王家の始まりとされているが、死期を悟ったドラゴンが聖女を呼び出し次代の竜と親石をはじめとする宝石たちを託したのだという。おとぎ話として民間には伝えらえているが王家の人間はおとぎ話ではないと理解している。

「話はこれで終わりかな?」

『ロッドバルトを呼んでくれ。あいつにも話がある。あの草の麻薬の浄化剤の作り方とかな。教えるからあとでエミールにも教えるようにする。……また暫くそれに没入するんだろうなぁ』

今度はヴィヴィアンヌが笑う。

「大丈夫。今は周りにお世話する人間がいるから」

『一応人と関わってるのだな』

「そうだね。50年ほど世捨て人を学校でやってたみたいだけど」

『あの時期はまいった。聖別した石が近くにないから声も届けられずにあのまま朽ちるかと思った』

ヴィヴィアンヌが意外だという表情になる。

「え、私たち朽ちる事ができるの?火口に飛び込むくらいしか方法はないと思ったけど」

『ヴィヴィアンヌ、……体が朽ちる訳ではない。精神が朽ちて、人以外の物になり果てるんだよ。そうすると魔物として処理できるようになる。ヴィヴィアンヌやロッドバルトには無理な道だよ』

親石から通告される。

『ヴィヴとロッドは……あと何百年かは生きるしかない。精神を朽ちさせるには気持ちが前向き過ぎるんだ。エミールは……周りが見えなくなって心が空っぽになる事が多いからな。魔が入り込む隙間が出来るんだよ』

ヴィヴィアンヌはぼそりと訊ねる。

『親石様はデジレに、前フィールズ侯爵に取りついた『魔』は何だと思ってます?」

『わからん。おれはそいつと直接接したことはないからな』

そういって親石は話すのを止めた。
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