聖女は断罪する

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111. その後 1

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 「ロッドバルト師、お久しぶりです」

陛下の方からロッドバルトに挨拶した。

「お久しぶりでございます。今回、我が国が迷惑をかけてすみません」

ロッドバルトは膝を折り陛下に謝罪する。この二人は外交などで顔見知りではあった。

「堅苦しいのは面倒なので、以降はざっくばらんで」

そこにいるのは陛下、ロッドバルト、ヴィヴィアンヌ、テオ、ジルであった。ジルはスケジュールに余裕がないのでいつ席を立つかはわからないとロッドバルトに陛下が告げる。ロッドバルトは鷹揚に頷いた。

「宰相なんてどの国もそんな感じですな。うちの宰相も飛び回ってますよ。……今は特にね」

と肩を竦める。影は宰相の下に着く組織で今回の事で解体が決まったのだ。

「責任は副総帥にあるのに、総帥が心を痛めてしまって」

「総帥は公爵でしたっけ」

ジルの言葉にロッドバルトは頷く。

「前の前の王の弟からの血筋ですね。……王家のスペアみたいな位置付でしたが今回の件の責任をとり臣籍降下、公爵位を変換し、モルツ伯爵として領地を収める、と」

ヴィヴィアンヌはにやっと笑った。

「あそこはいい酒の産地だからね。領主が変わるのはもったいない」

「そんなにいい酒なのか?」

ロッドバルトが訊ねる。彼は酒にこだわらないのだ。

「自分の国の産物でしょうが。かなり酒精は強いけどね。ワインとワインの搾りかすから作るキツイ酒と」

陛下がそれを聴いて執事にモルツ伯爵領の酒を持ってこさせる。

「薄い金色かぁ」

ロッドバルトはその小さなカップの酒を一気に口に流し込む。ヴィヴィアンヌが思わず言葉を発した。

「ばっっかじゃない」

ロッドバルトは喉を焼く酒の強さに目を白黒させて耐えている。

「くぅ。これは……きつい」

「その量をそんな風に一気にあおっちゃだめだよ。あおるならもう二回りは小さなカップでだよ。……ほら、水」

ロッドバルトは大人しくヴィヴィアンヌの言う事を聞いている。

「それ飲んだら魔力循環してアルコール飛ばしなさい」

「おうよ……久しぶりに腹に酒が染みる」

ヴィヴィアンヌとロッドバルトのやりとりを他のメンバーは苦笑しながら見ている。



 ジルが席を外すころには大枠で処分の方向は決まっていた。ジルはそれを書類にして明
日ロッドバルトと陛下のところに持ってくると言って席を外した。

「フィールズ前侯爵と話したいんだけど」

ヴィヴィアンヌが言うと陛下とテオは仕方ないな、という顔をする。

「貴賓牢にいる。妹も一緒だ」

陛下はそういってヴィヴィアンヌに鍵を渡した。



 貴賓牢、正妃たちがいたところではなく魔法師団の詰め所のすぐそばでがちがちに術が
かけられた部屋だった。うっすらと魔草から作った香も炊いているが、睡眠薬の名目で魔
草を利用していた前侯爵にどこまで効果あるか……とヴィヴィアンヌが思っていたが案内
をしてくれたジークが言う。

「老の妹さんが安らかに眠れるように炊いています。自白剤としての効果はほぼ無いと思
います」

老の妹ミレーユはどこか悪いの?」

ヴィヴィアンヌの言葉にジークは肩を竦めた。

「ずっと体調が良くないところにこの騒動で心労がですね」

ジークはそう説明した。

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