聖女は断罪する

100. 帰宅

　ジークたちは魔力を使った後のテオの食欲をよくわかっていたのでまず野菜を大量に入れたスープと先ほどクリストフたちが食べたパンのようなビスケットのようなものを渡す。

「出来上がるまでそれで虫養いしといてください」

重い大きな金属の鍋の中で小麦粉が焼けるいい香りがする。調理係がそんな鍋をいくつも用意していた。ふんわりと麺麭が焼けたようでその一塊にフレッシュなチーズを添えてテオ達に渡される。新しい鍋が火にかけられる。テオはチーズと麺麭とその次にはちみつをたっぷりつけた麺麭を食べる。

「最低減のエネルギーは取ったし。とりあえずレイラの家まで飛ぶぞ」

とクリストフ達に声をかける。

「アルフォンスとメルヴィンも来い」

テオが声をかける。

「レイラの家まで送る」



　レイラの家の庭に転移するとセドリックが大きな木箱とチョコカスタードタルトの大きな一切れを持って待ち構えていた。テオは無言でタルトを食べた。

「中にミートパイとそのタルトとマーサのお菓子が入ってます」

セドリックが言う。

「感謝する」

「騎士や魔法師団の人たちによろしく」

セドリックの言葉にうなずくとテオはまた湖畔の教会に飛んで帰った。

「さて、皆さま、中に入りましょう」

屋敷の中に入るとヴィヴィアンヌが７人をチェックした。

「よし」

そうつぶやくとヴィヴィアンヌは屋敷に結界をはる。セドリックは皆を案内する。

「食堂に夜食の用意があります」

ロランがヴィヴィアンヌに問う。

「ルシアは？」

「疲労と初めての経験で疲れたらしくてね。軽く熱もあるからレイラがゆっくり癒してるよ」

「顔を見に行っても？」

「静かにしてられるならね。そろそろ少したべられるだろうし」

７人を食堂まで連れて行く。

「マーサ、熱がある子に口優しいものお願いできる？」

ヴィヴィアンヌはマーサに依頼する。

「ヴィヴィアンヌ様とレイラ様の分もお持ちします。他人が食べているのを見ると意外と食も進みますからね」

「なに作るの？」

ジュリオが無邪気に訊ねる・

「リンゴの甘煮をつくろうかと」

マーサの言葉にジュリオは一瞬羨まし気な顔になる。

「殿下はリンゴの甘煮がお好き？」

ヴィヴィアンヌに訊ねられてジュリオはちょっと照れた顔になった。

「あのね。俺丈夫で、熱とか出した事ほとんどなくて。で、一度だけ、熱出した時にエルシー様に作ってもらったんだ」

ジュリオは照れた顔でそのまま皆の所に行き夜食を食べ始めた。ヴィヴィアンヌとマーサが目を合わせる。ヴィヴィアンヌが頷きマーサが一礼をする。
　ルシアの寝室で食べる分以外に大きな器に入れたリンゴの甘煮と薄く切った麺麭が置か追加でテーブルに置かれた。

「お召し上がりください」

マーサはそう言った後、ルシアの寝室、レイラの部屋であるが、にリンゴの甘煮を盛り付けて持って行った。
　起き上がったルシアはレイラからはちみつ味のＭＰポーションを飲ませてもらっていた。帰った時よりも随分顔色もよくなっていた。

「ルシアお嬢様、リンゴの甘煮です」

マーサは最初にルシアに銀の匙とガラスの器に入ったリンゴの甘煮を供した。