聖女は断罪する

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84. 注文の多い親石

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 「なら、レイラ付き合ってもらってる悪いわ」

ヴィヴィアンヌの言葉にエミールは首を横に振る。

「嬢ちゃん一人外すのは可愛そうだし万が一俺らが崩れた時俺らのサポートをしてもらわにゃならんし。ジーク、アルフォンス。レイラは一番外の壁を保持してもらわんとな」

エミールは直接関わらない3人に結界の保持を頼むつもりのようだ。

「メロディが関わるなら俺も頑張るさ」

メロディとエミールは恋仲であった。お互い好きと思いつつ聖女と宮廷魔術師見習いの少年という身分差、ライン公爵令嬢という貴族令嬢と平民の少年という立場もありお互いが想いを告げる事はなかったようだ。ヴィヴィアンヌはそれに立ち入る事はなかった。

「そうね。あんたは何をするつもり?」

「一番内側の結界を俺がはる。……ヴィヴィアンヌには一番外側の結界の補強を頼む」

「わかった」

「それにあんたはルシアやロラン達のサポートもあるし自由に動ける魔法使いを作っておきたい。エドガーを縛る為にも」

「ルシアの魅了以外に物理的に縛るってことね?」

「そう」

「メルヴィンは?」

「物理的なところをまかせる。あいつ、剣術結構使うしな。聖銀の剣をテオが貸し出すってよ」

話を振られてテオは話を引き取った。

「宝物庫の奥にあるのを使えってよ、親石が。メルヴィンに北東に立たせて聖銀の剣を地面に接触させてメルヴィンの魔力を地面に広げろってさ」

「陣は?」

「描いたらエドガーが来ないからメルヴィンの力を地面に広げることで陣の代わりに出来るって事」

テオはヴィヴィアンヌの問いに答えた。

「そう……。フィールズ老の事だけど」

「うん」

エミールが先を促す。

「まず、代行の愛人、エマと代行は娼婦と客で知り合ったようで。婚約者のシルヴィと真逆の品と教養のない女だから気に入ったって事らしい。代行はシルヴィに対してコンプレックス塗れ見たいだったよ。これはモロー伯爵の印象だけどね」

ヴィヴィアンヌはモロー伯爵と接触し情報を得たようだった。物見高い伯爵には『愛人を蹴落としてなりかわろうとしている』ドゥエスタン家を狙う女として接触したのだ。

『ま、伯爵代行は自分で思ってるほど有能じゃないし、若いときから知ってるから友達として付き合ってるが、傍から見ていい男じゃないわな』

モロー伯爵はワインを流し込みながら言った。

『ま、親切心から言うがあそこの愛人の娘は……手に負えんぞ。伯爵令嬢の詐称、頭が弱い、……近いうちに孕むんじゃないかって言われてるよ。まともな男どもは近寄らない。夜会もに10になるやならずやで連れてくるようになってあっという間に中庭に行ってしまうような子だ。どうだ、ボロボロのドゥエスタンより私の愛人にならんか?いい体をしてるし楽しめるだろうからな』

ヴィヴィアンヌはにっこり笑った。

『奥様に告げ口しましょうかね。あなたに秘密裡に接触できるって事は奥様にも出来るってことですわ』

ヴィヴィアンヌの言葉にモロー伯爵は黙った。

『情報ありがとう』

ヴィヴィアンヌは店主に金を渡して、モロー伯爵の支払いを終わらせて店から出だ。

「って事だよ。代行の愛人は……多分フィールズ老の手の物だと思う。けど……、もしかしたら」

「もしかしたら?」

エミールがじっとヴィヴィアンヌを見る。

「老のところの影のかもね」
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