聖女は断罪する

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79. ルシアがたくされた言葉

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 レイラとルシアはレイラの部屋にいる。ルシアはレイラの部屋に泊まっているのだ。

「レイラは婚約者とかどうするの?」

「どうするんだろ」

レイラの中で結婚や婚約という話は他人事だった。

「……あのね、お父様に言われたの」

ルシアが溜息をつく。とうとうルシアの婚約者が決まったのだとレイラは悟った。

「王太子妃に内定したって」

レイラの眉間にも皺が寄った。

「第一王子と婚約するの?」

ルシアは首を横に振った。

「違うの。私と婚約する人が『王太子』に決まるんだって。5人の王子から選べって」

「5人?」

レイラが首を傾げる。

「側妃様にもう一人、男のお子さんがいるんだって。……正妃様達が何をするかわからないから姫として育ててるって」

ルシアの眉が八の字を描く。

「急に重いと思わない?……この討伐が終わってからで良いと思うの」

レイラは吸精鬼討伐の前だから釘をさす為に、だなと思った。そしてロランとクリストフはルシアの制止のための人員か、と思った。レイラは何も言わずルシアの横に座りその手
を握った。

「ルシア、無茶はだめだよ。私も師匠もライン家の人も皆ルシアを心配してる」

ルシアはくすくすと笑い出した。

「お母様はどうかしら。私がだめになったら妹たちの誰かを王家にあてがおうとする。あの人は……王家に意趣返ししたいんだよ。お母様は陛下に遊ばれて……見捨てられた。正妃様達の集団で爵位も家の格も一番高かったから……自分が正妃に選ばれると思ってたみたい」

レイラはルシアの手を握ったままだ。

「お祖母様がね『マリアの思惑に乗っちゃだめだよ。ルシアはルシアの好きな人の所に嫁ぐんだよ』って色んな経緯を話してくれたの。……私も公爵家の娘ですもの。そんな自由は夢のまた夢だと思ってる」

ルシアは顔を上げた。底には涙はなかった。

「この吸精鬼退治は多分、最初で最後のチャンスだと思うの。自分の特性、『魅了』を加減せず全力で使える。それに吸精鬼を従えたら……王家に嫁がなくてすむと思うし」

レイラはふっと息を吐いてルシアを見る。

「それ、どうかな。クリストフ殿下気にしなさそう」

「あ、あぁぁぁ」

ルシアは小さく悲鳴を上げたが納得しているようだった。

「エドワード様とかジュリオ殿下も……」

レイラの言葉に、ルシアの目は丸くなり、同時に堰が切れたように笑い始めた。レイラも笑い、その後は、ジュリオ殿下もエドワード様も好奇心を持っても嫌がるような性質ではないな、と二人で結論づけた。

「お父様には言われたの。第一王子の事。先日同じクラスのシャルロット様にも確認したんだけどシャルロット様のお姉様と第一王子、卒業したら駆け落ちする計画みたい」

「……ジュリオ殿下にお伝えしておこうか?」

「上手くいくかしら。マリエル様が計画に関係してるみたいなの」

「……よし、クリストフ殿下にお話しておこう。それ以上は私たちではなく王家の話になるし。私たちは関係できない。……シャルロット嬢がそういう話を他人に漏らすって事はシャルロット嬢も心配なんだと思う」

レイラの言葉にルシアも頷いた。
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