80 / 138
79. ルシアがたくされた言葉
しおりを挟む
レイラとルシアはレイラの部屋にいる。ルシアはレイラの部屋に泊まっているのだ。
「レイラは婚約者とかどうするの?」
「どうするんだろ」
レイラの中で結婚や婚約という話は他人事だった。
「……あのね、お父様に言われたの」
ルシアが溜息をつく。とうとうルシアの婚約者が決まったのだとレイラは悟った。
「王太子妃に内定したって」
レイラの眉間にも皺が寄った。
「第一王子と婚約するの?」
ルシアは首を横に振った。
「違うの。私と婚約する人が『王太子』に決まるんだって。5人の王子から選べって」
「5人?」
レイラが首を傾げる。
「側妃様にもう一人、男のお子さんがいるんだって。……正妃様達が何をするかわからないから姫として育ててるって」
ルシアの眉が八の字を描く。
「急に重いと思わない?……この討伐が終わってからで良いと思うの」
レイラは吸精鬼討伐の前だから釘をさす為に、だなと思った。そしてロランとクリストフはルシアの制止のための人員か、と思った。レイラは何も言わずルシアの横に座りその手
を握った。
「ルシア、無茶はだめだよ。私も師匠もライン家の人も皆ルシアを心配してる」
ルシアはくすくすと笑い出した。
「お母様はどうかしら。私がだめになったら妹たちの誰かを王家にあてがおうとする。あの人は……王家に意趣返ししたいんだよ。お母様は陛下に遊ばれて……見捨てられた。正妃様達の集団で爵位も家の格も一番高かったから……自分が正妃に選ばれると思ってたみたい」
レイラはルシアの手を握ったままだ。
「お祖母様がね『マリアの思惑に乗っちゃだめだよ。ルシアはルシアの好きな人の所に嫁ぐんだよ』って色んな経緯を話してくれたの。……私も公爵家の娘ですもの。そんな自由は夢のまた夢だと思ってる」
ルシアは顔を上げた。底には涙はなかった。
「この吸精鬼退治は多分、最初で最後のチャンスだと思うの。自分の特性、『魅了』を加減せず全力で使える。それに吸精鬼を従えたら……王家に嫁がなくてすむと思うし」
レイラはふっと息を吐いてルシアを見る。
「それ、どうかな。クリストフ殿下気にしなさそう」
「あ、あぁぁぁ」
ルシアは小さく悲鳴を上げたが納得しているようだった。
「エドワード様とかジュリオ殿下も……」
レイラの言葉に、ルシアの目は丸くなり、同時に堰が切れたように笑い始めた。レイラも笑い、その後は、ジュリオ殿下もエドワード様も好奇心を持っても嫌がるような性質ではないな、と二人で結論づけた。
「お父様には言われたの。第一王子の事。先日同じクラスのシャルロット様にも確認したんだけどシャルロット様のお姉様と第一王子、卒業したら駆け落ちする計画みたい」
「……ジュリオ殿下にお伝えしておこうか?」
「上手くいくかしら。マリエル様が計画に関係してるみたいなの」
「……よし、クリストフ殿下にお話しておこう。それ以上は私たちではなく王家の話になるし。私たちは関係できない。……シャルロット嬢がそういう話を他人に漏らすって事はシャルロット嬢も心配なんだと思う」
レイラの言葉にルシアも頷いた。
「レイラは婚約者とかどうするの?」
「どうするんだろ」
レイラの中で結婚や婚約という話は他人事だった。
「……あのね、お父様に言われたの」
ルシアが溜息をつく。とうとうルシアの婚約者が決まったのだとレイラは悟った。
「王太子妃に内定したって」
レイラの眉間にも皺が寄った。
「第一王子と婚約するの?」
ルシアは首を横に振った。
「違うの。私と婚約する人が『王太子』に決まるんだって。5人の王子から選べって」
「5人?」
レイラが首を傾げる。
「側妃様にもう一人、男のお子さんがいるんだって。……正妃様達が何をするかわからないから姫として育ててるって」
ルシアの眉が八の字を描く。
「急に重いと思わない?……この討伐が終わってからで良いと思うの」
レイラは吸精鬼討伐の前だから釘をさす為に、だなと思った。そしてロランとクリストフはルシアの制止のための人員か、と思った。レイラは何も言わずルシアの横に座りその手
を握った。
「ルシア、無茶はだめだよ。私も師匠もライン家の人も皆ルシアを心配してる」
ルシアはくすくすと笑い出した。
「お母様はどうかしら。私がだめになったら妹たちの誰かを王家にあてがおうとする。あの人は……王家に意趣返ししたいんだよ。お母様は陛下に遊ばれて……見捨てられた。正妃様達の集団で爵位も家の格も一番高かったから……自分が正妃に選ばれると思ってたみたい」
レイラはルシアの手を握ったままだ。
「お祖母様がね『マリアの思惑に乗っちゃだめだよ。ルシアはルシアの好きな人の所に嫁ぐんだよ』って色んな経緯を話してくれたの。……私も公爵家の娘ですもの。そんな自由は夢のまた夢だと思ってる」
ルシアは顔を上げた。底には涙はなかった。
「この吸精鬼退治は多分、最初で最後のチャンスだと思うの。自分の特性、『魅了』を加減せず全力で使える。それに吸精鬼を従えたら……王家に嫁がなくてすむと思うし」
レイラはふっと息を吐いてルシアを見る。
「それ、どうかな。クリストフ殿下気にしなさそう」
「あ、あぁぁぁ」
ルシアは小さく悲鳴を上げたが納得しているようだった。
「エドワード様とかジュリオ殿下も……」
レイラの言葉に、ルシアの目は丸くなり、同時に堰が切れたように笑い始めた。レイラも笑い、その後は、ジュリオ殿下もエドワード様も好奇心を持っても嫌がるような性質ではないな、と二人で結論づけた。
「お父様には言われたの。第一王子の事。先日同じクラスのシャルロット様にも確認したんだけどシャルロット様のお姉様と第一王子、卒業したら駆け落ちする計画みたい」
「……ジュリオ殿下にお伝えしておこうか?」
「上手くいくかしら。マリエル様が計画に関係してるみたいなの」
「……よし、クリストフ殿下にお話しておこう。それ以上は私たちではなく王家の話になるし。私たちは関係できない。……シャルロット嬢がそういう話を他人に漏らすって事はシャルロット嬢も心配なんだと思う」
レイラの言葉にルシアも頷いた。
2
お気に入りに追加
83
あなたにおすすめの小説

【完結】初級魔法しか使えない低ランク冒険者の少年は、今日も依頼を達成して家に帰る。
アノマロカリス
ファンタジー
少年テッドには、両親がいない。
両親は低ランク冒険者で、依頼の途中で魔物に殺されたのだ。
両親の少ない保険でやり繰りしていたが、もう金が尽きかけようとしていた。
テッドには、妹が3人いる。
両親から「妹達を頼む!」…と出掛ける前からいつも約束していた。
このままでは家族が離れ離れになると思ったテッドは、冒険者になって金を稼ぐ道を選んだ。
そんな少年テッドだが、パーティーには加入せずにソロ活動していた。
その理由は、パーティーに参加するとその日に家に帰れなくなるからだ。
両親は、小さいながらも持ち家を持っていてそこに住んでいる。
両親が生きている頃は、父親の部屋と母親の部屋、子供部屋には兄妹4人で暮らしていたが…
両親が死んでからは、父親の部屋はテッドが…
母親の部屋は、長女のリットが、子供部屋には、次女のルットと三女のロットになっている。
今日も依頼をこなして、家に帰るんだ!
この少年テッドは…いや、この先は本編で語ろう。
お楽しみくださいね!
HOTランキング20位になりました。
皆さん、有り難う御座います。

城で侍女をしているマリアンネと申します。お給金の良いお仕事ありませんか?
甘寧
ファンタジー
「武闘家貴族」「脳筋貴族」と呼ばれていた元子爵令嬢のマリアンネ。
友人に騙され多額の借金を作った脳筋父のせいで、屋敷、領土を差し押さえられ事実上の没落となり、その借金を返済する為、城で侍女の仕事をしつつ得意な武力を活かし副業で「便利屋」を掛け持ちしながら借金返済の為、奮闘する毎日。
マリアンネに執着するオネエ王子やマリアンネを取り巻く人達と様々な試練を越えていく。借金返済の為に……
そんなある日、便利屋の上司ゴリさんからの指令で幽霊屋敷を調査する事になり……
武闘家令嬢と呼ばれいたマリアンネの、借金返済までを綴った物語
アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~
明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!!
『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。
無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。
破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。
「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」
【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?
外れスキル《コピー》を授かったけど「無能」と言われて家を追放された~ だけど発動条件を満たせば"魔族のスキル"を発動することができるようだ~
そらら
ファンタジー
「鑑定ミスではありません。この子のスキルは《コピー》です。正直、稀に見る外れスキルですね、何せ発動条件が今だ未解明なのですから」
「何てことなの……」
「全く期待はずれだ」
私の名前はラゼル、十五歳になったんだけども、人生最悪のピンチに立たされている。
このファンタジックな世界では、15歳になった際、スキル鑑定を医者に受けさせられるんだが、困ったことに私は外れスキル《コピー》を当ててしまったらしい。
そして数年が経ち……案の定、私は家族から疎ましく感じられてーーついに追放されてしまう。
だけど私のスキルは発動条件を満たすことで、魔族のスキルをコピーできるようだ。
そして、私の能力が《外れスキル》ではなく、恐ろしい能力だということに気づく。
そんでこの能力を使いこなしていると、知らないうちに英雄と呼ばれていたんだけど?
私を追放した家族が戻ってきてほしいって泣きついてきたんだけど、もう戻らん。
私は最高の仲間と最強を目指すから。

何かと「ひどいわ」とうるさい伯爵令嬢は
だましだまし
ファンタジー
何でもかんでも「ひどいわ」とうるさい伯爵令嬢にその取り巻きの侯爵令息。
私、男爵令嬢ライラの従妹で親友の子爵令嬢ルフィナはそんな二人にしょうちゅう絡まれ楽しい学園生活は段々とつまらなくなっていった。
そのまま卒業と思いきや…?
「ひどいわ」ばっかり言ってるからよ(笑)
全10話+エピローグとなります。

転生令嬢の食いしん坊万罪!
ねこたま本店
ファンタジー
訳も分からないまま命を落とし、訳の分からない神様の手によって、別の世界の公爵令嬢・プリムローズとして転生した、美味しい物好きな元ヤンアラサー女は、自分に無関心なバカ父が後妻に迎えた、典型的なシンデレラ系継母と、我が儘で性格の悪い妹にイビられたり、事故物件王太子の中継ぎ婚約者にされたりつつも、しぶとく図太く生きていた。
そんなある日、プリムローズは王侯貴族の子女が6~10歳の間に受ける『スキル鑑定の儀』の際、邪悪とされる大罪系スキルの所有者であると判定されてしまう。
プリムローズはその日のうちに、同じ判定を受けた唯一の友人、美少女と見まごうばかりの気弱な第二王子・リトス共々捕えられた挙句、国境近くの山中に捨てられてしまうのだった。
しかし、中身が元ヤンアラサー女の図太い少女は諦めない。
プリムローズは時に気弱な友の手を引き、時に引いたその手を勢い余ってブン回しながらも、邪悪と断じられたスキルを駆使して生き残りを図っていく。
これは、図太くて口の悪い、ちょっと(?)食いしん坊な転生令嬢が、自分なりの幸せを自分の力で掴み取るまでの物語。
こちらの作品は、2023年12月28日から、カクヨム様でも掲載を開始しました。
今後、カクヨム様掲載用にほんのちょっとだけ内容を手直しし、1話ごとの文章量を増やす事でトータルの話数を減らした改訂版を、1日に2回のペースで投稿していく予定です。多量の加筆修正はしておりませんが、もしよろしければ、カクヨム版の方もご笑覧下さい。
※作者が適当にでっち上げた、完全ご都合主義的世界です。細かいツッコミはご遠慮頂ければ幸いです。もし、目に余るような誤字脱字を発見された際には、コメント欄などで優しく教えてやって下さい。
※検討の結果、「ざまぁ要素あり」タグを追加しました。

義妹が大事だと優先するので私も義兄を優先する事にしました
さこの
恋愛
婚約者のラウロ様は義妹を優先する。
私との約束なんかなかったかのように…
それをやんわり注意すると、君は家族を大事にしないのか?冷たい女だな。と言われました。
そうですか…あなたの目にはそのように映るのですね…
分かりました。それでは私も義兄を優先する事にしますね!大事な家族なので!

婚約破棄された上に国外追放された聖女はチート級冒険者として生きていきます~私を追放した王国が大変なことになっている?へぇ、そうですか~
夏芽空
ファンタジー
無茶な仕事量を押し付けられる日々に、聖女マリアはすっかり嫌気が指していた。
「聖女なんてやってられないわよ!」
勢いで聖女の杖を叩きつけるが、跳ね返ってきた杖の先端がマリアの顎にクリーンヒット。
そのまま意識を失う。
意識を失ったマリアは、暗闇の中で前世の記憶を思い出した。
そのことがきっかけで、マリアは強い相手との戦いを望むようになる。
そしてさらには、チート級の力を手に入れる。
目を覚ましたマリアは、婚約者である第一王子から婚約破棄&国外追放を命じられた。
その言葉に、マリアは大歓喜。
(国外追放されれば、聖女という辛いだけの役目から解放されるわ!)
そんな訳で、大はしゃぎで国を出ていくのだった。
外の世界で冒険者という存在を知ったマリアは、『強い相手と戦いたい』という前世の自分の願いを叶えるべく自らも冒険者となり、チート級の力を使って、順調にのし上がっていく。
一方、マリアを追放した王国は、その軽率な行いのせいで異常事態が発生していた……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる