78 / 138
77. アルフォンスの記憶
しおりを挟む
夜にはマーサが働き出そうとするのでセドリックとレイラで止める。レイラは食堂に向かいセドリックとマーサの分の夕食をワゴンで運んできた。
手早くマーサの部屋の窓際のテーブルにセッティングする。
「セディ、マーサを見張っててね。今日はゆっくり眠ってもらって」
「判りました。レイラ様」
「マーサ、分かった?」
レイラの口調はいつもと違う少し甘えた口調だった。マーサとセドリックに対しては年相応、と行ったところか。ルシアといる時も年相応の少女の顔を見せる。マーサもセドリックも和む。そしてほんの少しだけ優越感を抱いてしまう。レイラの甘える先は自分たちだ、と。
「戻りました」
テオはジークを迎えに行って帰ってきた。ジークとテオの部屋とクリストフ、ロラン、ペールの部屋にはマーサの作るがっしりした焼き菓子が余分に置いてある。ジークとテオの二人の二人の方がクリストフ達少年3人分の食事よりも多い感じだ。少年たちはテオとジークを珍しいものののように感じていた。
「夕飯はどうするんだい?食べてなかったら食堂で頼んだら作ってくれるけど」
ヴィヴィアンヌが訊ねる。
「食べます」
テオがジークを揶揄う。
「喰ってきたじゃん」
「喰えますから」
ジークはしれっと返す。ヴィヴィアンヌはこのあまり表情の変わらないアルフォンスの兄はテオに対しては普通に感情を出すのだな、と眺めていた。
「明日の朝、温室と畑の朝仕事終わらせたらエミールとアルフォンスとメルヴィンがくる。その時までに分析結果は出る?」
「マーサの服の?」
ヴィヴィアンヌが頷いた。テオは顎を撫でていたが肩を竦める。
「わかった。俺も手伝ってくる。ジークは殿下達もいるからこっちな。一応あんたは殿下のお守り……じゃない、護衛ってことになってるから」
テオはそう言いおいてかき消すように転移した。
「……あれはまた痩せて帰ってくるね」
ヴィヴィアンヌの言葉にジークも頷いた。
「あんたの弟はエドガーに関わる事を忘れてるけど……今回ので、ルビーの事思い出すかもね」
ヴィヴィアンヌはジークに告げる。
「わかってます。あの試験での魔力暴走でなにもかも忘れたのは僥倖だと思っていました。でも俺達はまたエドガーと関わる事になってしまった。今回こそ討伐したいもんです」
ジークの眉間に皺がよる。ルビーはジークの妹でアルフォンスの姉だった。エドガー討伐の時に逆にエドガーの餌食となってしまった女性だった。アルフォンスはエドガーを討伐するためのエドガー以上の強い魔物を試験会場で呼び出し己が眷属にするつもりだった。
試験会場でそんなことをしたのはテオとヴィヴィアンヌが試験の判定人としてそこにいたので不測の事態を引き起こしてもなんとかしてもらえる、そう思っていたからだった。
結果、記憶を失い、数か月意識を失う重傷を追ったのだ。
「あいつにとって吉か凶かは判りませんが」
「今回は……魅了で縛るからね。前回はテオの魅了が光属性だからあいつとの親和性が低いという事で前宮廷魔法師団長が反対したのと……フィールズ老が暗躍してたからね」
ジークはふっと笑った。
「正直ああいう作戦まで政争の道具にされてるなんて思いませんでしたよ」
ヴィヴィアンヌは遠い目になる。
「あれのお陰でエドワードはより冷酷に冷徹になったし、あの子の中で老を害悪として認識を強くしたし。フィールズ侯爵がしっかり老と縁切りを始めたのも良かったね。ネックだった副教皇も干渉できない位置にいるし」
そう言いながらもヴィヴィアンヌの顔は晴れなかった。
手早くマーサの部屋の窓際のテーブルにセッティングする。
「セディ、マーサを見張っててね。今日はゆっくり眠ってもらって」
「判りました。レイラ様」
「マーサ、分かった?」
レイラの口調はいつもと違う少し甘えた口調だった。マーサとセドリックに対しては年相応、と行ったところか。ルシアといる時も年相応の少女の顔を見せる。マーサもセドリックも和む。そしてほんの少しだけ優越感を抱いてしまう。レイラの甘える先は自分たちだ、と。
「戻りました」
テオはジークを迎えに行って帰ってきた。ジークとテオの部屋とクリストフ、ロラン、ペールの部屋にはマーサの作るがっしりした焼き菓子が余分に置いてある。ジークとテオの二人の二人の方がクリストフ達少年3人分の食事よりも多い感じだ。少年たちはテオとジークを珍しいものののように感じていた。
「夕飯はどうするんだい?食べてなかったら食堂で頼んだら作ってくれるけど」
ヴィヴィアンヌが訊ねる。
「食べます」
テオがジークを揶揄う。
「喰ってきたじゃん」
「喰えますから」
ジークはしれっと返す。ヴィヴィアンヌはこのあまり表情の変わらないアルフォンスの兄はテオに対しては普通に感情を出すのだな、と眺めていた。
「明日の朝、温室と畑の朝仕事終わらせたらエミールとアルフォンスとメルヴィンがくる。その時までに分析結果は出る?」
「マーサの服の?」
ヴィヴィアンヌが頷いた。テオは顎を撫でていたが肩を竦める。
「わかった。俺も手伝ってくる。ジークは殿下達もいるからこっちな。一応あんたは殿下のお守り……じゃない、護衛ってことになってるから」
テオはそう言いおいてかき消すように転移した。
「……あれはまた痩せて帰ってくるね」
ヴィヴィアンヌの言葉にジークも頷いた。
「あんたの弟はエドガーに関わる事を忘れてるけど……今回ので、ルビーの事思い出すかもね」
ヴィヴィアンヌはジークに告げる。
「わかってます。あの試験での魔力暴走でなにもかも忘れたのは僥倖だと思っていました。でも俺達はまたエドガーと関わる事になってしまった。今回こそ討伐したいもんです」
ジークの眉間に皺がよる。ルビーはジークの妹でアルフォンスの姉だった。エドガー討伐の時に逆にエドガーの餌食となってしまった女性だった。アルフォンスはエドガーを討伐するためのエドガー以上の強い魔物を試験会場で呼び出し己が眷属にするつもりだった。
試験会場でそんなことをしたのはテオとヴィヴィアンヌが試験の判定人としてそこにいたので不測の事態を引き起こしてもなんとかしてもらえる、そう思っていたからだった。
結果、記憶を失い、数か月意識を失う重傷を追ったのだ。
「あいつにとって吉か凶かは判りませんが」
「今回は……魅了で縛るからね。前回はテオの魅了が光属性だからあいつとの親和性が低いという事で前宮廷魔法師団長が反対したのと……フィールズ老が暗躍してたからね」
ジークはふっと笑った。
「正直ああいう作戦まで政争の道具にされてるなんて思いませんでしたよ」
ヴィヴィアンヌは遠い目になる。
「あれのお陰でエドワードはより冷酷に冷徹になったし、あの子の中で老を害悪として認識を強くしたし。フィールズ侯爵がしっかり老と縁切りを始めたのも良かったね。ネックだった副教皇も干渉できない位置にいるし」
そう言いながらもヴィヴィアンヌの顔は晴れなかった。
2
お気に入りに追加
82
あなたにおすすめの小説
30代社畜の私が1ヶ月後に異世界転生するらしい。
ひさまま
ファンタジー
前世で搾取されまくりだった私。
魂の休養のため、地球に転生したが、地球でも今世も搾取されまくりのため魂の消滅の危機らしい。
とある理由から元の世界に戻るように言われ、マジックバックを自称神様から頂いたよ。
これで地球で買ったものを持ち込めるとのこと。やっぱり夢ではないらしい。
取り敢えず、明日は退職届けを出そう。
目指せ、快適異世界生活。
ぽちぽち更新します。
作者、うっかりなのでこれも買わないと!というのがあれば教えて下さい。
脳内の空想を、つらつら書いているのでお目汚しな際はごめんなさい。
巻き込まれ召喚・途中下車~幼女神の加護でチート?
サクラ近衛将監
ファンタジー
商社勤務の社会人一年生リューマが、偶然、勇者候補のヤンキーな連中の近くに居たことから、一緒に巻き込まれて異世界へ強制的に召喚された。万が一そのまま召喚されれば勇者候補ではないために何の力も与えられず悲惨な結末を迎える恐れが多分にあったのだが、その召喚に気づいた被召喚側世界(地球)の神様と召喚側世界(異世界)の神様である幼女神のお陰で助けられて、一旦狭間の世界に留め置かれ、改めて幼女神の加護等を貰ってから、異世界ではあるものの召喚場所とは異なる場所に無事に転移を果たすことができた。リューマは、幼女神の加護と付与された能力のおかげでチートな成長が促され、紆余曲折はありながらも異世界生活を満喫するために生きて行くことになる。
*この作品は「カクヨム」様にも投稿しています。
**週1(土曜日午後9時)の投稿を予定しています。**
転生先ではゆっくりと生きたい
ひつじ
ファンタジー
勉強を頑張っても、仕事を頑張っても誰からも愛されなかったし必要とされなかった藤田明彦。
事故で死んだ明彦が出会ったのは……
転生先では愛されたいし必要とされたい。明彦改めソラはこの広い空を見ながらゆっくりと生きることを決めた
小説家になろうでも連載中です。
なろうの方が話数が多いです。
https://ncode.syosetu.com/n8964gh/
出来損ないと呼ばれた伯爵令嬢は出来損ないを望む
家具屋ふふみに
ファンタジー
この世界には魔法が存在する。
そして生まれ持つ適性がある属性しか使えない。
その属性は主に6つ。
火・水・風・土・雷・そして……無。
クーリアは伯爵令嬢として生まれた。
貴族は生まれながらに魔力、そして属性の適性が多いとされている。
そんな中で、クーリアは無属性の適性しかなかった。
無属性しか扱えない者は『白』と呼ばれる。
その呼び名は貴族にとって屈辱でしかない。
だからクーリアは出来損ないと呼ばれた。
そして彼女はその通りの出来損ない……ではなかった。
これは彼女の本気を引き出したい彼女の周りの人達と、絶対に本気を出したくない彼女との攻防を描いた、そんな物語。
そしてクーリアは、自身に隠された秘密を知る……そんなお話。
設定揺らぎまくりで安定しないかもしれませんが、そういうものだと納得してくださいm(_ _)m
※←このマークがある話は大体一人称。
はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~
緋色優希
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。
[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?
シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。
クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。
貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ?
魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。
ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。
私の生活を邪魔をするなら潰すわよ?
1月5日 誤字脱字修正 54話
★━戦闘シーンや猟奇的発言あり
流血シーンあり。
魔法・魔物あり。
ざぁま薄め。
恋愛要素あり。
城で侍女をしているマリアンネと申します。お給金の良いお仕事ありませんか?
甘寧
ファンタジー
「武闘家貴族」「脳筋貴族」と呼ばれていた元子爵令嬢のマリアンネ。
友人に騙され多額の借金を作った脳筋父のせいで、屋敷、領土を差し押さえられ事実上の没落となり、その借金を返済する為、城で侍女の仕事をしつつ得意な武力を活かし副業で「便利屋」を掛け持ちしながら借金返済の為、奮闘する毎日。
マリアンネに執着するオネエ王子やマリアンネを取り巻く人達と様々な試練を越えていく。借金返済の為に……
そんなある日、便利屋の上司ゴリさんからの指令で幽霊屋敷を調査する事になり……
武闘家令嬢と呼ばれいたマリアンネの、借金返済までを綴った物語
【完結】捨てられた双子のセカンドライフ
mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】
王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。
父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。
やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。
これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。
冒険あり商売あり。
さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。
(話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる