聖女は断罪する

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76. 食べないと痩せる野郎ども

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 大事を取ってマーサは休んでもらう事にした。ヴィヴィアンヌがマーサの私室で原の傷を一応改めた。

「傷も綺麗にふさがってる。ちょっとさっきの衣類は持って行くよ?」

「あら、先ほど下働きのリンが来て持って行ってしまいました」

「どんな子?」

ヴィヴィアンヌはリンの特徴を訪ねる。

「ちょっとその子にも話を聞くことあるから、セドリック、サムを借りるよ。あとマーサについてやってくれるとありがたい」

セドリックは頷いた。



 「サム、下働きのリンっを探してる。多分マーサの服をどうにかしようとしてる」

「……燃やすならうちは一か所しかないし、リンは台所には入れないから」

とサムが足早にリンがいるであろう場所に向かう。裏庭の一隅で少女が何かをもやそうとしているところだった。ヴィヴィアンヌはとっさに停止の魔法をかけて少女の動きを止める。

「ま、魔女様」

リンが怯えた顔をする。

「なんで燃やすんだい、マーサの服を」

「……燃やせって言われたから」

「誰に?」

「奥様に」

「どこの?」

「ドゥエスタンの」

リンはヴィヴィアンヌの気と目の光にあてられている。

「ドゥエスタンに奥様はいない。代行も伯爵じゃない。知らないのかい?」

リンはもじもじしている。サムはその手から燃やされかけたマーサの血とエマの傘の跡が残った服をいけ取った。

「……伯爵様が、この家はもうすぐ自分たちのものにするって。この屋敷の事を教えたらメイお嬢様の付き人にしてくれるって」

「馬鹿な子だねぇ……」

ヴィヴィアンヌは呆れた声を出す。

「あいつらのいう事を信じるなんて。その上でここの事を教えるなんて。あなたの雇い主、レイラやセドリック、マーサの信頼を裏切ったんだよ。すぐに出て行きなさい。荷物は……サムこの子について行って荷物をまとめさせて、出て行かせて欲しい」

サムは頷き、リンを連れて行った。ヴィヴィアンヌは二人から距離が離れた事を確認すると使い魔の1匹に命じてリンの跡をつけさせることにした。



 「ジークいるかい?」

「います」

ジークは男性が泊ってる部屋でテオと一緒にマーサの焼き菓子を甘い紅茶と共に食べていた。

「この服についてる血とか調べられる?血液以外の付着がないか、も」

「依存性の毒とか、人格を破壊して自分の操り人形にするやつとか」

これはこの十年ほど追いかけている魔草からできているという薬品の話だった。ジークも探索班にいた経験もあるので話が早かった。

「じゃ、送ってくわ」

「あ、これふたつばかり……」

マーサの焼き菓子を持ったジークはテオに送られて宮廷魔法師団の詰め所に帰った。テオはすぐに戻ってきた。

「あいつも喰わねぇとすぐ体重が減る性質でな」

「これからここの料理長は大喜びだろうよ。……私もレイラもそこまで食べないからねぇ」

ルシアはロランが着いているらしい。

「ちょっとジークと打ち合わせてたからな。アナもついてるし大丈夫だろう。……あの新しく作った部屋は頑丈だから襲撃があってもあそこに籠ればいいしな」

暫く目を瞑っていたテオがかっと目を開けた。

「あの女が帰るまでに寄った所は二件。口入れ屋と老の隠れ家だな」

ヴィヴィアンヌはこめかみを指で叩く。

「……あの隠れてない隠れ家のことかい?これ見よがしの貴族がいるんだろうなって露骨にわかる」

テオは人の悪い笑顔で頷いた。

「あそこに出入りしてる人間の詳細を集めて」

テオはヴィヴィアンヌに命じられて承諾した。
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