76 / 138
75. 愛人来訪
しおりを挟む
訓練の為の場所はレイラの家となった。十分な部屋数がある。そして庭の一隅に教会から人が来て魔力を外に漏らさないための部屋を別に立てた。アナは普段つけているもの以上に強い魅了除けの魔道具をエミールに作ってもらった。クリストフが泊るというのでセドリックが大騒ぎだったがクリストフ自身は『普段通りに』という。騒ぐと所在位置がバレるという宮廷魔術師団長の言葉でかなり落ち着いた。
「あら、ここね」
愛人が娘、メイを連れて家の前に立っていた。
「入れなさい」
レイラは表情をこわばらせた。何故この人がここにいるのか、と思った。レイラが反応するよりも先にメイド長のマーサが反応した。
「お招きしてないお客は帰ってください」
「使用人風情に言われる事ではないわね。ドゥエスタンの奥方に何を言うの?」
「帰れ。ここは代行とその家族が足を踏み入れていい場所じゃない」
マーサがそう言ったら手にしていた畳んだ日傘を鉄製の門の隙間にいれとがった先でマーサの腹を突いた。じんわりと赤が滲む。
「マーサっ」
レイラが驚いて反射的に癒しの魔法をかける。
「お帰り下さい」
レイラがきっぱり言うと愛人エマはふふんと笑う。
「ここはドゥエスタンの物だから私のものだわ」
「ここは母個人の持ち物です。代行のものではありません。既に所有者は私ですから」
きつい目と声でレイラが反論した。
「あら、……そう。ま、若い男がいるんでしょ。メイをおいていくから適当に見繕っておいて。王子殿下でいいわ」
レイラは心底呆れた声だ。
「そんな汚物家に入れるわけないでしょう」
ヴィヴィアンヌがレイラを隠すように立つ。
「あんたが愛人か。ここは分家風情が手を出せない場所だよ。とっと帰りな。この家の周りに近づいたら……後悔させるよ」
ヴィヴィアンヌが魔力を込めて視線を愛人に送る。愛人は多少ひるんだが笑みを張り付けて今更扇で顔を隠す。が、遅かった。ヴィヴィアンヌはしっかりと愛人、エマの視線を捉え術をかける。その後ろでレイラはマーサの腹の傷を癒していた。
「名前は?」
「エマ」
うつろな声が答える。それをメイはポカーンと見ている。
「……本当の名は?」
エマ、愛人は異国の名前を告げた。
「そう、では底の娘を連れて帰って、この場所の事は忘れなさい。分かったら頭を下げなさい」
愛人は頭を下げる。その横でメイも慌てて頭を下げている。
「メイ」
「はい」
「この場所の事をあなたは覚えていられない、分かった」
メイは何度も頷いて、二人はゆっくりと歩き馬車に乗った。御者はクリスの手の者なのでヴィヴィアンヌはあえて術にはかけなかった。
テオは自分の判断でその馬車の後部に自分の魔力を細い糸状にし、追わせた。
「変な茶々が入っちゃったね」
ヴィヴィアンヌの声にマーサが目を開けた。レイラはぎゅっとマーサのてを握って癒しの力をもう一度送り込んだ。
「あら、ここね」
愛人が娘、メイを連れて家の前に立っていた。
「入れなさい」
レイラは表情をこわばらせた。何故この人がここにいるのか、と思った。レイラが反応するよりも先にメイド長のマーサが反応した。
「お招きしてないお客は帰ってください」
「使用人風情に言われる事ではないわね。ドゥエスタンの奥方に何を言うの?」
「帰れ。ここは代行とその家族が足を踏み入れていい場所じゃない」
マーサがそう言ったら手にしていた畳んだ日傘を鉄製の門の隙間にいれとがった先でマーサの腹を突いた。じんわりと赤が滲む。
「マーサっ」
レイラが驚いて反射的に癒しの魔法をかける。
「お帰り下さい」
レイラがきっぱり言うと愛人エマはふふんと笑う。
「ここはドゥエスタンの物だから私のものだわ」
「ここは母個人の持ち物です。代行のものではありません。既に所有者は私ですから」
きつい目と声でレイラが反論した。
「あら、……そう。ま、若い男がいるんでしょ。メイをおいていくから適当に見繕っておいて。王子殿下でいいわ」
レイラは心底呆れた声だ。
「そんな汚物家に入れるわけないでしょう」
ヴィヴィアンヌがレイラを隠すように立つ。
「あんたが愛人か。ここは分家風情が手を出せない場所だよ。とっと帰りな。この家の周りに近づいたら……後悔させるよ」
ヴィヴィアンヌが魔力を込めて視線を愛人に送る。愛人は多少ひるんだが笑みを張り付けて今更扇で顔を隠す。が、遅かった。ヴィヴィアンヌはしっかりと愛人、エマの視線を捉え術をかける。その後ろでレイラはマーサの腹の傷を癒していた。
「名前は?」
「エマ」
うつろな声が答える。それをメイはポカーンと見ている。
「……本当の名は?」
エマ、愛人は異国の名前を告げた。
「そう、では底の娘を連れて帰って、この場所の事は忘れなさい。分かったら頭を下げなさい」
愛人は頭を下げる。その横でメイも慌てて頭を下げている。
「メイ」
「はい」
「この場所の事をあなたは覚えていられない、分かった」
メイは何度も頷いて、二人はゆっくりと歩き馬車に乗った。御者はクリスの手の者なのでヴィヴィアンヌはあえて術にはかけなかった。
テオは自分の判断でその馬車の後部に自分の魔力を細い糸状にし、追わせた。
「変な茶々が入っちゃったね」
ヴィヴィアンヌの声にマーサが目を開けた。レイラはぎゅっとマーサのてを握って癒しの力をもう一度送り込んだ。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
75
1 / 2
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる