聖女は断罪する

あくの

文字の大きさ
上 下
73 / 138

72. 顔見せのお茶会

しおりを挟む
 メルヴィンが王都にいる事だし、と側妃主催の聖女候補を囲むお茶会が開かれた。
控え室でレイラとリリスは一緒になった。リリスはピンクのレースやフリルがたっぷりのドレスであった。レイラは真珠色のビスチェにシンプルに自然に落ちるスカート、上半身は繊細な手編みのレースで飾られている。長い真珠色の手袋の上部には上半身と同じ手編みのレースが飾られていた。

「ふーん、悪くないじゃん」

リリスはそう言ってレイラを上から下まで見定める。いきなりリリスの手がレイラの胸を確かめるように触る。

「ひやっ」

「へぇ、本ものじゃん。……もっとガリガリでおっぱいもお尻もなかったのに」

リリスの目は無遠慮にレイラの体を舐めまわすように見つめている。

「あ!もしかして男とやったの?」

レイラはリリスのあけすけな物言いに唖然としていた。

「ふーん、その様子だとまだかぁ。恋バナとか興味ない?」

レイラはぐらんぐらんする頭を立て直す。多分これは友好的なつもりなんだろうとレイラは思っていた。

「いけすかないデュモン侯爵令嬢、クラスでルシア嬢にあしらわれててちょっと面白いのよ。デュモン侯爵令嬢がツンケンしてもルシア嬢には堪えてないみたい。……貴族の女の子嫌いだったけど、あんたとかルシア嬢とかみたいに大人しい子もいるってわかった」

とリリスは屈託なく笑う。レイラはもしかしてこの子は『デュモン侯爵令嬢とシャルロット嬢が嫌い』という感情を『貴族子女は皆嫌い』と置き換えてたのかしら、と考える。

「デュモン侯爵令嬢だったらシャルロットの方が十倍まし」

リリスはそう言ってぺろりと舌をだした。その後もデュモン侯爵令嬢がリーダーになろうとしても他の令嬢がルシアを自然に立てるので傍で見てると小気味いいと笑っていた。ややあって、扉がノックされメルヴィンが二人をエスコートする為に来ていた。

「ねぇあと一人いる聖女候補は?」

リリスが言い出してメルヴィンは渋い顔になる。

「妹は寝た切りだからね。今、聖女候補から外してくれって交渉中」

側妃様のサロンに行くまでにメルヴィンの妹がもう一人の聖女候補なのだが、王領の森に入って、行方不明になってから衰弱する一方で一日起きてられる事がないのだという。

「あたしも癒しに行ったけどだめだったんだよね。レイラ行ってみたら?あの子あのままだと可愛そうだよ」

珍しくリリスがまともな事を言う。

「……教皇様の癒しは?」

「まだ試してない」

メルヴィンが言う。

「もしダメだったら……」

レイラは何も言えなかった。




 「聖女候補の三人よ」

王子達のお茶会に呼ばれる高位貴族令嬢とその兄弟の集団にレイラたちは紹介される。早速リリスは高位貴族令息に挨拶に行き、メルヴィンは令嬢達に囲まれている。レイラは最初の顔見せが終わったのでヴィヴィアンヌとルシアのいるテーブルに着いた。
 レイラは初めて知ったメルヴィンの妹の事を話す。そして土の癒しと水の癒しでは根治せず未だ眠ったままであるという事とテオの癒しでダメだったら、と思うとテオの癒しに頼るのは怖いみたいと話す。

「じゃレイラが行ってみて光の癒しが効果あるか試すとか」

ルシアが提案する。ルシアは今日はレイラとおそろいのドレスで濃い紫のドレスと紫水晶のアクセサリを着けている。プラチナの髪に濃い色が良く映える。そしてレイラと違い、濃い色のビスチェの下の胸はたわわに膨らんでいてもう谷間がある。

「ルシアの方がお姉さんみたい」

レイラは友人の大人になりかけた体を少しうらやまし気に見ていた。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

野生児少女の生存日記

花見酒
ファンタジー
とある村に住んでいた少女、とある鑑定式にて自身の適性が無属性だった事で危険な森に置き去りにされ、その森で生き延びた少女の物語

地の果ての国 イーグル・アイ・サーガ

オノゴロ
ファンタジー
狂気の王が犯した冒涜の行為により闇に沈んだダファネア王国。 紺碧の王都は闇の王に取り憑かれ漆黒の死都と化した。 それを救わんと立ち上がったのは、運命の旅路をともにする四人。 たった一人残された王の血脈たるミアレ姫。王国の命運は姫の一身にかかっている。 それを守るブルクット族の戦士カラゲル。稲妻の刺青の者。この者には大いなる運命が待っている。 過去にとらわれた祭司ユーグは悔恨の道を歩む。神々の沈黙は不可解で残酷なものだ。 そして、空を映して底知れぬ青き瞳を持つ鷲使いの娘クラン。伝説のイーグル・アイ。精霊と渡り合う者。 聖地に身を潜める精霊と龍とは旅の一行に加護を与えるであろうか。これこそ物語の鍵となる。 果てしない草原に木霊するシャーマンの朗唱。それは抗いがたい運命を暗示するいにしえの言葉。 不死の呪いを受けた闇の道化。死霊魔法に侵される宿命の女。これもまた神々の計画なのか。 転がり始めた運命の物語はその円環を閉じるまで、その奔流を押しとどめることはできない。 鷲よ! 鷲よ! 我らの旅を導け! 陽光みなぎる青空の彼方、地の果ての国へと!

【完結】初級魔法しか使えない低ランク冒険者の少年は、今日も依頼を達成して家に帰る。

アノマロカリス
ファンタジー
少年テッドには、両親がいない。 両親は低ランク冒険者で、依頼の途中で魔物に殺されたのだ。 両親の少ない保険でやり繰りしていたが、もう金が尽きかけようとしていた。 テッドには、妹が3人いる。 両親から「妹達を頼む!」…と出掛ける前からいつも約束していた。 このままでは家族が離れ離れになると思ったテッドは、冒険者になって金を稼ぐ道を選んだ。 そんな少年テッドだが、パーティーには加入せずにソロ活動していた。 その理由は、パーティーに参加するとその日に家に帰れなくなるからだ。 両親は、小さいながらも持ち家を持っていてそこに住んでいる。 両親が生きている頃は、父親の部屋と母親の部屋、子供部屋には兄妹4人で暮らしていたが…   両親が死んでからは、父親の部屋はテッドが… 母親の部屋は、長女のリットが、子供部屋には、次女のルットと三女のロットになっている。 今日も依頼をこなして、家に帰るんだ! この少年テッドは…いや、この先は本編で語ろう。 お楽しみくださいね! HOTランキング20位になりました。 皆さん、有り難う御座います。

冤罪で山に追放された令嬢ですが、逞しく生きてます

里見知美
ファンタジー
王太子に呪いをかけたと断罪され、神の山と恐れられるセントポリオンに追放された公爵令嬢エリザベス。その姿は老婆のように皺だらけで、魔女のように醜い顔をしているという。 だが実は、誰にも言えない理由があり…。 ※もともとなろう様でも投稿していた作品ですが、手を加えちょっと長めの話になりました。作者としては抑えた内容になってるつもりですが、流血ありなので、ちょっとエグいかも。恋愛かファンタジーか迷ったんですがひとまず、ファンタジーにしてあります。 全28話で完結。

城で侍女をしているマリアンネと申します。お給金の良いお仕事ありませんか?

甘寧
ファンタジー
「武闘家貴族」「脳筋貴族」と呼ばれていた元子爵令嬢のマリアンネ。 友人に騙され多額の借金を作った脳筋父のせいで、屋敷、領土を差し押さえられ事実上の没落となり、その借金を返済する為、城で侍女の仕事をしつつ得意な武力を活かし副業で「便利屋」を掛け持ちしながら借金返済の為、奮闘する毎日。 マリアンネに執着するオネエ王子やマリアンネを取り巻く人達と様々な試練を越えていく。借金返済の為に…… そんなある日、便利屋の上司ゴリさんからの指令で幽霊屋敷を調査する事になり…… 武闘家令嬢と呼ばれいたマリアンネの、借金返済までを綴った物語

アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~

明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!! 『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。  無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。  破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。 「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」 【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

外れスキル《コピー》を授かったけど「無能」と言われて家を追放された~ だけど発動条件を満たせば"魔族のスキル"を発動することができるようだ~

そらら
ファンタジー
「鑑定ミスではありません。この子のスキルは《コピー》です。正直、稀に見る外れスキルですね、何せ発動条件が今だ未解明なのですから」 「何てことなの……」 「全く期待はずれだ」 私の名前はラゼル、十五歳になったんだけども、人生最悪のピンチに立たされている。 このファンタジックな世界では、15歳になった際、スキル鑑定を医者に受けさせられるんだが、困ったことに私は外れスキル《コピー》を当ててしまったらしい。 そして数年が経ち……案の定、私は家族から疎ましく感じられてーーついに追放されてしまう。 だけど私のスキルは発動条件を満たすことで、魔族のスキルをコピーできるようだ。 そして、私の能力が《外れスキル》ではなく、恐ろしい能力だということに気づく。 そんでこの能力を使いこなしていると、知らないうちに英雄と呼ばれていたんだけど? 私を追放した家族が戻ってきてほしいって泣きついてきたんだけど、もう戻らん。 私は最高の仲間と最強を目指すから。

妹が聖女の再来と呼ばれているようです

田尾風香
ファンタジー
ダンジョンのある辺境の地で回復術士として働いていたけど、父に呼び戻されてモンテリーノ学校に入学した。そこには、私の婚約者であるファルター殿下と、腹違いの妹であるピーアがいたんだけど。 「マレン・メクレンブルク! 貴様とは婚約破棄する!」  どうやらファルター殿下は、"低能"と呼ばれている私じゃなく、"聖女の再来"とまで呼ばれるくらいに成績の良い妹と婚約したいらしい。 それは別に構わない。国王陛下の裁定で無事に婚約破棄が成った直後、私に婚約を申し込んできたのは、辺境の地で一緒だったハインリヒ様だった。 戸惑う日々を送る私を余所に、事件が起こる。――学校に、ダンジョンが出現したのだった。 更新は不定期です。

処理中です...