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70. 髪と瞳の色の意味
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「エミール、相談があるんだけど」
エミールはアルフォンスに頼まれた鉢植を手に持っている。
「なんだ?」
「小瓶に入った薬、緑色の。女性の手の平に隠れるくらいのサイズで」
「うん?」
「心当たりある?」
「ありすぎるが……。緑色の小瓶の薬って沢山あるぞ。そもそもポーションがそうだろう?」
「そうよねぇ。でもポーションは違うね。子供の目にも小瓶ってわかってて少なくとも掌内に納まる大きさのもの、なのよね。あと、愛人の瞳みたいな緑、って言うんだけど……あの人の目の色がわからない」
エミールは少し考える。
「俺はその女性を知らんからな。ただ、あんたが瞳の色覚えてないのもちょっと変だな」
エミールは一口紅茶を飲んで続ける。
「そもそも瞳の色は魔力の色を映すことが多いだろ。だからテオは金色の瞳してるし。髪もだな。黒髪でも水属性持っていたら青みを帯びたり。そういや、水の聖女候補の子の事聞いたけどピンクブロンドに紫の瞳って言ってたから、魔力を抜いたら瞳は多分ピンク色だな」
エミールの話が脱線し始めたかな、とヴィヴィアンヌが考えたがそうでもなかった。
「だからその女性の瞳の色は他の色で魔力に触れて緑色に見えたとか」
ヴィヴィアンヌが口を尖らせる。エミールは子供の頃からこの子は変わらんなぁとヴィヴィアンヌを見ていた。
「あの愛人さん、平民なんだよね。だから魔力がないって事も考えられるし」
「なら……手に持っていた薬の魔力って事も考えられるし」
ヴィヴィアンヌが提案する。
「とりあえず、いくつか薬、緑色の薬を揃えてもらえるかな。レイラに見せたい」
「わかった。この件は週末に」
ヴィヴィアンヌは頷いた。
クラスでもメルヴィンとレイラはよく話している。メルヴィンは座学があまり得意ではないのでわからないところを畑仕事仲間のレイラに聞くのだ。金髪に土色にところどころ緑が混じった色の瞳のメルヴィンは体格も良く見た目も堂々としているし少し年上で皆とっつきにくく感じていたようでクラスでは浮いていた。
授業が終わった後のふれあいでロランとレイラには慣れていて二人には普段の表情で接している。これが気に入らないのがマリエル姫で質問中のメルヴィンをさえぎって連れて行く。一応お目付け役であるのでメルヴィンも渋々ついていくが、用事でもなんでもないのでマリエルの横で怪訝な顔になっている。
ロラン、ペール、レイラはマリエル姫とは関わらないようにしていたのでレイラは女子の中でも浮きがちになりはじめていた。レイラは己の女子社会でのリテラシーの低さは実感していた。
女子はレイラを敬遠しつつも、ロランやペールといるのにも関わらず二人となにかあるという空気ではないので少しだけ警戒を解いていた。2年の生まれた年の差はここで大人になりかけた少女とやっと子供を抜け出し始めた少女の差をくっきりと浮かび上がらせていた。
相変わらずペールとロランは優良な嫁行先と見られていた。ペールは見た目が女子好みだしロランは妹がいるので女子の扱いが上手い。それに二人はそろそろ婚約者を決めるのでは、となり皆アピールに忙しい。
ただ、ロランもペールも王子達の婚約者がきまってから、という心づもりをしている。ロランは内々に家督を継ぐことになると父母に内示されていた。長男は結局、仲が良くなった大農場の一人娘と一緒になる、と。次の春には子供が生まれると聞いてロランは溜息しかでなかった。子供が出来る前に言い出していたら兄が家を継いだうえで農場の娘をどこかの貴族の養女にして嫁して来てもらう事もできたのに、と。
自分以上に、長子として甘やかされてきた兄に貴族以外の生活ができるのか、と弟してロランは心配していたが、父親ははっきりと言った。
「長男ロベールは貴族籍を離脱してそう生きるんだ。できなくてもするんだよ」
エミールはアルフォンスに頼まれた鉢植を手に持っている。
「なんだ?」
「小瓶に入った薬、緑色の。女性の手の平に隠れるくらいのサイズで」
「うん?」
「心当たりある?」
「ありすぎるが……。緑色の小瓶の薬って沢山あるぞ。そもそもポーションがそうだろう?」
「そうよねぇ。でもポーションは違うね。子供の目にも小瓶ってわかってて少なくとも掌内に納まる大きさのもの、なのよね。あと、愛人の瞳みたいな緑、って言うんだけど……あの人の目の色がわからない」
エミールは少し考える。
「俺はその女性を知らんからな。ただ、あんたが瞳の色覚えてないのもちょっと変だな」
エミールは一口紅茶を飲んで続ける。
「そもそも瞳の色は魔力の色を映すことが多いだろ。だからテオは金色の瞳してるし。髪もだな。黒髪でも水属性持っていたら青みを帯びたり。そういや、水の聖女候補の子の事聞いたけどピンクブロンドに紫の瞳って言ってたから、魔力を抜いたら瞳は多分ピンク色だな」
エミールの話が脱線し始めたかな、とヴィヴィアンヌが考えたがそうでもなかった。
「だからその女性の瞳の色は他の色で魔力に触れて緑色に見えたとか」
ヴィヴィアンヌが口を尖らせる。エミールは子供の頃からこの子は変わらんなぁとヴィヴィアンヌを見ていた。
「あの愛人さん、平民なんだよね。だから魔力がないって事も考えられるし」
「なら……手に持っていた薬の魔力って事も考えられるし」
ヴィヴィアンヌが提案する。
「とりあえず、いくつか薬、緑色の薬を揃えてもらえるかな。レイラに見せたい」
「わかった。この件は週末に」
ヴィヴィアンヌは頷いた。
クラスでもメルヴィンとレイラはよく話している。メルヴィンは座学があまり得意ではないのでわからないところを畑仕事仲間のレイラに聞くのだ。金髪に土色にところどころ緑が混じった色の瞳のメルヴィンは体格も良く見た目も堂々としているし少し年上で皆とっつきにくく感じていたようでクラスでは浮いていた。
授業が終わった後のふれあいでロランとレイラには慣れていて二人には普段の表情で接している。これが気に入らないのがマリエル姫で質問中のメルヴィンをさえぎって連れて行く。一応お目付け役であるのでメルヴィンも渋々ついていくが、用事でもなんでもないのでマリエルの横で怪訝な顔になっている。
ロラン、ペール、レイラはマリエル姫とは関わらないようにしていたのでレイラは女子の中でも浮きがちになりはじめていた。レイラは己の女子社会でのリテラシーの低さは実感していた。
女子はレイラを敬遠しつつも、ロランやペールといるのにも関わらず二人となにかあるという空気ではないので少しだけ警戒を解いていた。2年の生まれた年の差はここで大人になりかけた少女とやっと子供を抜け出し始めた少女の差をくっきりと浮かび上がらせていた。
相変わらずペールとロランは優良な嫁行先と見られていた。ペールは見た目が女子好みだしロランは妹がいるので女子の扱いが上手い。それに二人はそろそろ婚約者を決めるのでは、となり皆アピールに忙しい。
ただ、ロランもペールも王子達の婚約者がきまってから、という心づもりをしている。ロランは内々に家督を継ぐことになると父母に内示されていた。長男は結局、仲が良くなった大農場の一人娘と一緒になる、と。次の春には子供が生まれると聞いてロランは溜息しかでなかった。子供が出来る前に言い出していたら兄が家を継いだうえで農場の娘をどこかの貴族の養女にして嫁して来てもらう事もできたのに、と。
自分以上に、長子として甘やかされてきた兄に貴族以外の生活ができるのか、と弟してロランは心配していたが、父親ははっきりと言った。
「長男ロベールは貴族籍を離脱してそう生きるんだ。できなくてもするんだよ」
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