聖女は断罪する

あくの

文字の大きさ
上 下
68 / 138

67. 新しいクラス

しおりを挟む
 「なぁ、あんた」

レイラの前の席の少年がなれなれしくレイラの机にもたれかかる。

「ドゥエスタンって、あのドゥエスタン?」

レイラは冷たく応じる。

「あの、とはどういう意味でしょうか?」

「棒状のものならなんでも股に入れるドゥエスタンだよ」

ニキビだらけの少年がにやにやと笑う。ロランとペールが激高しそうに成ったがレイラが手で辞めるように合図する。

「私の身内にはおりませんね。どこの国の話ですか?」

「お前の母親と妹だよ」

「私の母は亡くなってますし妹はおりません」

レイラは静かに答える。

「お前の家族だろ、あの商売女ども」

複数の男子がお互いに耳打ちしている。

「ちがいます。家族ではありません。伯爵代行の家族ですが私の家族ではない、という事です」

レイラは昨年一年でこういう目に合う事に慣れてしまっていた。

「代行もドゥエスタンの一族なので彼はドゥエスタン姓ですが、愛人とその子はドゥエスタンを名乗れませんし、彼女らは代行の血縁と愛人ですがドゥエスタンを名乗る権利はありません。つまり彼女らは詐称しているという事です。理解されましたか?」

 昨年一年で少し体格も成長したとはいえレイラはまだか細い子供だった。少年はそんな子供に言い負課されそうで悔しくてたまらないのだろう。いきなり握りしめた拳をレイラに振り下ろそうとしたが……。

「いてぇっ」

レイラが殴られるとぎゅっと目を瞑った少女たちがおそるそる目を開ける。そこにはメルヴィンが少年の手首を握りしめ、氷の壁や光の壁や風の壁が乱立していた。ジュリオが人波から抜けて来た。

「紳士が女性に手を上げちゃだめだ」

少年は背後から声をかけられたせいでそれがジュリオだと気が付かなかったらしい。

「売女を売女らしく扱って何が悪い。こいつみたいな女は男に」

少年は全部を口にできなかった。ロランが風魔法で少年の周りの音を遮断したのだ。

「紳士淑女が耳にすべきではない言葉をはきそうだったので」

ロランはしれっとしている。ロランにとってレイラはルシアの次に守るべき可愛い妹であった。ペールはレイラに声をかける。

「大丈夫か?」

「はい」

まだ咲き初めた花程度のつぼみだが将来大輪の花が咲くだろうと予感させる笑みで答えた。

「ドゥエスタン嬢、災難だったね」

エドワードが声をかける。

「もったいないお言葉です」

メルヴィンはレイラの前の席にいた慮外者を捕縛し教室の外に連れ出した。

「ジュリオもこのクラスでしたのね」

「げ」

そこにいたのはジュリオの従姉のマリエルであった。レイラの世代の令嬢のトップは間違いなく彼女であった。王弟の娘で王位継承権を名乗り出て、親石にすげなくふられた令嬢であった。親石のくだりはヴィヴィアンヌと陛下、教皇しか知らない話である。

 ジュリオはこの少女がここにいることでメルヴィンがなせここにいるのかを理解した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

転生先ではゆっくりと生きたい

ひつじ
ファンタジー
勉強を頑張っても、仕事を頑張っても誰からも愛されなかったし必要とされなかった藤田明彦。 事故で死んだ明彦が出会ったのは…… 転生先では愛されたいし必要とされたい。明彦改めソラはこの広い空を見ながらゆっくりと生きることを決めた 小説家になろうでも連載中です。 なろうの方が話数が多いです。 https://ncode.syosetu.com/n8964gh/

S級冒険者の子どもが進む道

干支猫
ファンタジー
【12/26完結】 とある小さな村、元冒険者の両親の下に生まれた子、ヨハン。 父親譲りの剣の才能に母親譲りの魔法の才能は両親の想定の遥か上をいく。 そうして王都の冒険者学校に入学を決め、出会った仲間と様々な学生生活を送っていった。 その中で魔族の存在にエルフの歴史を知る。そして魔王の復活を聞いた。 魔王とはいったい? ※感想に盛大なネタバレがあるので閲覧の際はご注意ください。

その聖女は身分を捨てた

メカ喜楽直人
ファンタジー
ある日突然、この世界各地に無数のダンジョンが出来たのは今から18年前のことだった。 その日から、この世界には魔物が溢れるようになり人々は武器を揃え戦うことを覚えた。しかし年を追うごとに魔獣の種類は増え続け武器を持っている程度では倒せなくなっていく。 そんな時、神からの掲示によりひとりの少女が探し出される。 魔獣を退ける結界を作り出せるその少女は、自国のみならず各国から請われ結界を貼り廻らせる旅にでる。 こうして少女の活躍により、世界に平和が取り戻された。 これは、平和を取り戻した後のお話である。

30代社畜の私が1ヶ月後に異世界転生するらしい。

ひさまま
ファンタジー
 前世で搾取されまくりだった私。  魂の休養のため、地球に転生したが、地球でも今世も搾取されまくりのため魂の消滅の危機らしい。  とある理由から元の世界に戻るように言われ、マジックバックを自称神様から頂いたよ。  これで地球で買ったものを持ち込めるとのこと。やっぱり夢ではないらしい。  取り敢えず、明日は退職届けを出そう。  目指せ、快適異世界生活。  ぽちぽち更新します。  作者、うっかりなのでこれも買わないと!というのがあれば教えて下さい。  脳内の空想を、つらつら書いているのでお目汚しな際はごめんなさい。

巻き込まれ召喚・途中下車~幼女神の加護でチート?

サクラ近衛将監
ファンタジー
商社勤務の社会人一年生リューマが、偶然、勇者候補のヤンキーな連中の近くに居たことから、一緒に巻き込まれて異世界へ強制的に召喚された。万が一そのまま召喚されれば勇者候補ではないために何の力も与えられず悲惨な結末を迎える恐れが多分にあったのだが、その召喚に気づいた被召喚側世界(地球)の神様と召喚側世界(異世界)の神様である幼女神のお陰で助けられて、一旦狭間の世界に留め置かれ、改めて幼女神の加護等を貰ってから、異世界ではあるものの召喚場所とは異なる場所に無事に転移を果たすことができた。リューマは、幼女神の加護と付与された能力のおかげでチートな成長が促され、紆余曲折はありながらも異世界生活を満喫するために生きて行くことになる。 *この作品は「カクヨム」様にも投稿しています。 **週1(土曜日午後9時)の投稿を予定しています。**

150年後の敵国に転生した大将軍

mio
ファンタジー
「大将軍は150年後の世界に再び生まれる」から少しタイトルを変更しました。 ツーラルク皇国大将軍『ラルヘ』。 彼は隣国アルフェスラン王国との戦いにおいて、その圧倒的な強さで多くの功績を残した。仲間を失い、部下を失い、家族を失っていくなか、それでも彼は主であり親友である皇帝のために戦い続けた。しかし、最後は皇帝の元を去ったのち、自宅にてその命を落とす。 それから約150年後。彼は何者かの意思により『アラミレーテ』として、自分が攻め入った国の辺境伯次男として新たに生まれ変わった。 『アラミレーテ』として生きていくこととなった彼には『ラルヘ』にあった剣の才は皆無だった。しかし、その代わりに与えられていたのはまた別の才能で……。 他サイトでも公開しています。

(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅

あかる
ファンタジー
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり? 異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました! 完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。

転生令嬢の食いしん坊万罪!

ねこたま本店
ファンタジー
   訳も分からないまま命を落とし、訳の分からない神様の手によって、別の世界の公爵令嬢・プリムローズとして転生した、美味しい物好きな元ヤンアラサー女は、自分に無関心なバカ父が後妻に迎えた、典型的なシンデレラ系継母と、我が儘で性格の悪い妹にイビられたり、事故物件王太子の中継ぎ婚約者にされたりつつも、しぶとく図太く生きていた。  そんなある日、プリムローズは王侯貴族の子女が6~10歳の間に受ける『スキル鑑定の儀』の際、邪悪とされる大罪系スキルの所有者であると判定されてしまう。  プリムローズはその日のうちに、同じ判定を受けた唯一の友人、美少女と見まごうばかりの気弱な第二王子・リトス共々捕えられた挙句、国境近くの山中に捨てられてしまうのだった。  しかし、中身が元ヤンアラサー女の図太い少女は諦めない。  プリムローズは時に気弱な友の手を引き、時に引いたその手を勢い余ってブン回しながらも、邪悪と断じられたスキルを駆使して生き残りを図っていく。  これは、図太くて口の悪い、ちょっと(?)食いしん坊な転生令嬢が、自分なりの幸せを自分の力で掴み取るまでの物語。  こちらの作品は、2023年12月28日から、カクヨム様でも掲載を開始しました。  今後、カクヨム様掲載用にほんのちょっとだけ内容を手直しし、1話ごとの文章量を増やす事でトータルの話数を減らした改訂版を、1日に2回のペースで投稿していく予定です。多量の加筆修正はしておりませんが、もしよろしければ、カクヨム版の方もご笑覧下さい。 ※作者が適当にでっち上げた、完全ご都合主義的世界です。細かいツッコミはご遠慮頂ければ幸いです。もし、目に余るような誤字脱字を発見された際には、コメント欄などで優しく教えてやって下さい。 ※検討の結果、「ざまぁ要素あり」タグを追加しました。

処理中です...