66 / 138
65. 教皇の聖女
しおりを挟む
「師匠のスープ、美味しかったです、よ?」
レイラがおずおずと口を挟む。
「キノコとハーブのスープ?塩味でハーブの風味が強いやつ?」
副教皇はがしっとヴィヴィアンヌの腕をつかんだままだった。ルシアは口をあんぐりと開けて驚いている。
「あれは一種の薬だ。……疲労回復剤、ポーションほどは強くないが日々飲んでおくと疲れにくくなる、そんなスープだ」
ヴィヴィアンヌは苦笑している。そこに魔力安定のための薬草を入れたりとほんとうに薬に近いスープではあった。ペールがそこから話を逸らそうとする。
「叔父さんとリチャードはどちらもリチャードなんですよね」
「ああ、オーエン家のリチャード君だな。同名のよしみでよろしく。俺は冒険者時代はチャドって名乗ってたからチャドって呼んでくれ」
これはルシアとレイラに向けた挨拶だった。
「じゃ、続きを話すか」
などとチャドが言った瞬間にテオが大人数をひきつれて転移してきた。
「おう。連れてきたぞ」
「……王家全員ではなかったんだな」
チャドの言葉に皆膝をつき最敬礼を取った。レイラは気の良さげなアルバートおじさんが陛下だと認識し、寂しくなった。
「ジュリオと王太子はお守りでな。……というか正妃が離さなくてな」
テオが一瞬遠い目をする。陛下は目を逸らす。何かあったんだなと皆悟ったが口をつぐむ。
「あ、そんな深刻なことじゃないから。王宮に仕立屋が来ててな。正妃が王太子とジュリオを飾り立ててるってとこだ。エドは捕まる前に俺の所に逃げてきてた」
テオはまだ肉が着いていない。ので裏で動くしかない状況だった。
「ま、あんまり王宮開けられないからサクサク始めるか」
テオが宣言し、側妃エルシノアがルシアとレイラの背に手をあてる。
「じゃ、まず。ここにいる皆に紹介する。レイラおいで」
テオが呼ぶのでレイラはテオの側に行く。テオは優しい笑顔を一瞬レイラに向ける。そし
てレイラの肩に手を置きレイラを自分の前に皆の方を向くように立たせる。
「俺の、教皇の聖女だ。レイラ・ドゥエスタン」
レイラはテオやアルバート、ジル、ヴィヴィアンヌが自分に関わってくれた理由はそれな
んだと思って少し胸が痛んだ。
「あなたが生まれた時、シルヴィがどれだけ喜んだか」
エルシーがレイラに言う。
「あなたは望まれて生まれてきたの。ただ、……お腹の中にいる時から癒しの力は発現し
てたの」
そういう話を始めた。が、すぐそれはさえぎられる。
「積もる話はあるだろうが、陛下たちはそうそう離れてられんだろう、王宮」
チャドが厳しい顔をする。今日という日を選んだのは正妃の元に仕立屋がくるので其方に
注意が行くのでそれを狙っての事だった。テオも頷く。
「じゃ、あとは任せたよ、チャド」
「おう。殿下達はどうする?こっちで遊んでいくか?」
エドは喜んで参加するといいそれならクリストフも、という事になった。二人は皆が泊っていくというのでそれにも参加したいと陛下と側妃に許可を求めると、同意がとれたのでテオが書類はジルとよしなにしておく、と言い陛下たちとテオは帰っていった。
「これから昼食だけど、野趣あふれるものしかないよ?」
ヴィヴィアンヌにそう言われてもクリストフとエドはかえって喜ぶ。
「こういう時にしか暖かいものや冷たいものは食べられなくてね」
クリストフは誰にいうともなく言葉にした。
昼からはチャドとリチャード、メルヴィンは殿下達と釣りに行った。ペールとルシア、
レイラはヴィヴィアンヌと共に薬草と野草の採取を行った。レイラは勝手知ったる森なの
で途中で野生の果物を摘んだりし、ルシアも森を満喫していた。
「うちの領地の森も見てみたくなった」
ペールはそんな事を言った。
レイラがおずおずと口を挟む。
「キノコとハーブのスープ?塩味でハーブの風味が強いやつ?」
副教皇はがしっとヴィヴィアンヌの腕をつかんだままだった。ルシアは口をあんぐりと開けて驚いている。
「あれは一種の薬だ。……疲労回復剤、ポーションほどは強くないが日々飲んでおくと疲れにくくなる、そんなスープだ」
ヴィヴィアンヌは苦笑している。そこに魔力安定のための薬草を入れたりとほんとうに薬に近いスープではあった。ペールがそこから話を逸らそうとする。
「叔父さんとリチャードはどちらもリチャードなんですよね」
「ああ、オーエン家のリチャード君だな。同名のよしみでよろしく。俺は冒険者時代はチャドって名乗ってたからチャドって呼んでくれ」
これはルシアとレイラに向けた挨拶だった。
「じゃ、続きを話すか」
などとチャドが言った瞬間にテオが大人数をひきつれて転移してきた。
「おう。連れてきたぞ」
「……王家全員ではなかったんだな」
チャドの言葉に皆膝をつき最敬礼を取った。レイラは気の良さげなアルバートおじさんが陛下だと認識し、寂しくなった。
「ジュリオと王太子はお守りでな。……というか正妃が離さなくてな」
テオが一瞬遠い目をする。陛下は目を逸らす。何かあったんだなと皆悟ったが口をつぐむ。
「あ、そんな深刻なことじゃないから。王宮に仕立屋が来ててな。正妃が王太子とジュリオを飾り立ててるってとこだ。エドは捕まる前に俺の所に逃げてきてた」
テオはまだ肉が着いていない。ので裏で動くしかない状況だった。
「ま、あんまり王宮開けられないからサクサク始めるか」
テオが宣言し、側妃エルシノアがルシアとレイラの背に手をあてる。
「じゃ、まず。ここにいる皆に紹介する。レイラおいで」
テオが呼ぶのでレイラはテオの側に行く。テオは優しい笑顔を一瞬レイラに向ける。そし
てレイラの肩に手を置きレイラを自分の前に皆の方を向くように立たせる。
「俺の、教皇の聖女だ。レイラ・ドゥエスタン」
レイラはテオやアルバート、ジル、ヴィヴィアンヌが自分に関わってくれた理由はそれな
んだと思って少し胸が痛んだ。
「あなたが生まれた時、シルヴィがどれだけ喜んだか」
エルシーがレイラに言う。
「あなたは望まれて生まれてきたの。ただ、……お腹の中にいる時から癒しの力は発現し
てたの」
そういう話を始めた。が、すぐそれはさえぎられる。
「積もる話はあるだろうが、陛下たちはそうそう離れてられんだろう、王宮」
チャドが厳しい顔をする。今日という日を選んだのは正妃の元に仕立屋がくるので其方に
注意が行くのでそれを狙っての事だった。テオも頷く。
「じゃ、あとは任せたよ、チャド」
「おう。殿下達はどうする?こっちで遊んでいくか?」
エドは喜んで参加するといいそれならクリストフも、という事になった。二人は皆が泊っていくというのでそれにも参加したいと陛下と側妃に許可を求めると、同意がとれたのでテオが書類はジルとよしなにしておく、と言い陛下たちとテオは帰っていった。
「これから昼食だけど、野趣あふれるものしかないよ?」
ヴィヴィアンヌにそう言われてもクリストフとエドはかえって喜ぶ。
「こういう時にしか暖かいものや冷たいものは食べられなくてね」
クリストフは誰にいうともなく言葉にした。
昼からはチャドとリチャード、メルヴィンは殿下達と釣りに行った。ペールとルシア、
レイラはヴィヴィアンヌと共に薬草と野草の採取を行った。レイラは勝手知ったる森なの
で途中で野生の果物を摘んだりし、ルシアも森を満喫していた。
「うちの領地の森も見てみたくなった」
ペールはそんな事を言った。
2
お気に入りに追加
81
あなたにおすすめの小説
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
スナイパー令嬢戦記〜お母様からもらった"ボルトアクションライフル"が普通のマスケットの倍以上の射程があるんですけど〜
シャチ
ファンタジー
タリム復興期を読んでいただくと、なんでミリアのお母さんがぶっ飛んでいるのかがわかります。
アルミナ王国とディクトシス帝国の間では、たびたび戦争が起こる。
前回の戦争ではオリーブオイルの栽培地を欲した帝国がアルミナ王国へと戦争を仕掛けた。
一時はアルミナ王国の一部地域を掌握した帝国であったが、王国側のなりふり構わぬ反撃により戦線は膠着し、一部国境線未確定地域を残して停戦した。
そして20年あまりの時が過ぎた今、皇帝マーダ・マトモアの崩御による帝国の皇位継承権争いから、手柄を欲した時の第二皇子イビリ・ターオス・ディクトシスは軍勢を率いてアルミナ王国への宣戦布告を行った。
砂糖戦争と後に呼ばれるこの戦争において、両国に恐怖を植え付けた一人の令嬢がいる。
彼女の名はミリア・タリム
子爵令嬢である彼女に戦後ついた異名は「狙撃令嬢」
542人の帝国将兵を死傷させた狙撃の天才
そして戦中は、帝国からは死神と恐れられた存在。
このお話は、ミリア・タリムとそのお付きのメイド、ルーナの戦いの記録である。
他サイトに掲載したものと同じ内容となります。
セリオン共和国再興記 もしくは宇宙刑事が召喚されてしまったので・・・
今卓&
ファンタジー
地球での任務が終わった銀河連合所属の刑事二人は帰途の途中原因不明のワームホールに巻き込まれる、彼が気が付くと可住惑星上に居た。
その頃会議中の皇帝の元へ伯爵から使者が送られる、彼等は捕らえられ教会の地下へと送られた。
皇帝は日課の教会へ向かう途中でタイスと名乗る少女を”宮”へ招待するという、タイスは不安ながらも両親と周囲の反応から招待を断る事はできず”宮”へ向かう事となる。
刑事は離別したパートナーの捜索と惑星の調査の為、巡視艇から下船する事とした、そこで彼は4人の知性体を救出し獣人二人とエルフを連れてエルフの住む土地へ彼等を届ける旅にでる事となる。
家ごと異世界ライフ
ねむたん
ファンタジー
突然、自宅ごと異世界の森へと転移してしまった高校生・紬。電気や水道が使える不思議な家を拠点に、自給自足の生活を始める彼女は、個性豊かな住人たちや妖精たちと出会い、少しずつ村を発展させていく。温泉の発見や宿屋の建築、そして寡黙なドワーフとのほのかな絆――未知の世界で織りなす、笑いと癒しのスローライフファンタジー!
社畜だけど異世界では推し騎士の伴侶になってます⁈
めがねあざらし
BL
気がつくと、そこはゲーム『クレセント・ナイツ』の世界だった。
しかも俺は、推しキャラ・レイ=エヴァンスの“伴侶”になっていて……⁈
記憶喪失の俺に課されたのは、彼と共に“世界を救う鍵”として戦う使命。
しかし、レイとの誓いに隠された真実や、迫りくる敵の陰謀が俺たちを追い詰める――。
異世界で見つけた愛〜推し騎士との奇跡の絆!
推しとの距離が近すぎる、命懸けの異世界ラブファンタジー、ここに開幕!
オタクおばさん転生する
ゆるりこ
ファンタジー
マンガとゲームと小説を、ゆるーく愛するおばさんがいぬの散歩中に異世界召喚に巻き込まれて転生した。
天使(見習い)さんにいろいろいただいて犬と共に森の中でのんびり暮そうと思っていたけど、いただいたものが思ったより強大な力だったためいろいろ予定が狂ってしまい、勇者さん達を回収しつつ奔走するお話になりそうです。
投稿ものんびりです。(なろうでも投稿しています)
ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活
天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる