59 / 138
58. 呼び出される。
しおりを挟む
レイラは平穏な学生生活を楽しむつもりだった。
「おい、レイラ・ドゥエスタンを呼んでくれ」
教室の入口にクリストフが現れ早くも平穏という言葉が塵と散った事をレイラは感じた。
「何でしょうか」
レイラはクリストフの前に立つ。
「ちょっと来て」
「授業が……」
前にいたペールにクリストフが声をかけた。
「ペール、次の授業の教師に俺が借りて行ったって言っといてくれ」
「わかりました、殿下」
「すまん」
謝るのは私に対してではないのかとレイラは思ったが二の腕を持たれずんずんと教室から引き離された。
「ここらでいいか。……エミール・マリュスはどこにいる?どっちに行けばいい?」
レイラは驚いた顔であった。
「師匠のお友達のエミールさん?」
よくわかってはいないがエミールが魔法使いとして素晴らしいという事は担任から聞いていた。前に一度エミールの言葉を聞いていたのだ。
『嬢ちゃん、俺は凄い魔法使いなんじゃないぞ。時間が有り余ってるから好きな事を好きなだけ研究できる恵まれた男なんだ』
そう言いながらエミールはレイラにハーブティをいれてくれた。いくら王子とはいえいきなり温室に押しかけるのもなとレイラは思った。少し考えていたが師匠はこの人とも顔見知りのようだし、とレイラに着いている師匠の使い魔に合図する。すぐにヴィヴィアンヌが転移してきた。
「……殿下?」
「エミールさんにお会いしたいらしいです」
「ふむ?……レイラ、授業に戻っていいよ。殿下、話をしようか」
ヴィヴィアンヌはクリストフからレイラを解放した。レイラはやっと慣れてきたカーテシーをしそそくさと教室に戻った。教室では学年主任が黒板に式を書いている。
「理由は聞いている。早くこれを書き写して課題に取り掛かって」
レイラは『はい』と言い、小さく礼をした。素早く席に向かうとリチャードが立ち上がって場所を作ってくれる。5人座れる長い机に両端はリチャードとジョルジュでレイラは真ん中が自席だった。
「書ける?」
リチャードがノートを見せてくれようとしたがレイラは首を横に振った。
「覚えました」
小さな声でレイラが言う。それを証明するように殆ど黒板を見ずにさらさらとノートに問題を書き写した。レイラはライン公爵夫人から入学祝いに、と貰った質の良い紙のノートと滑らかなガラスペンですらすらと書き写していく。学年主任の授業は大抵、黒板の問題1つをノートの1番上に書き写す。そしてページの残りにその式の意味と結果を書いて、授業の終わりに提出し採点してもらう、そういう方式であった。
「で、レイラを呼び出した理由は?」
「エミール・マリュス翁と親しいと聞いた」
「レイラが?」
ヴィヴィアンヌに問われクリストフは答える。
「あー、ジュリオがルシア嬢から聞いたらしい」
「ふん、お茶会か」
クリストフは頷いた。
「で、なんでレイラに?」
「……ルシア嬢の所に俺が行くとまた婚約のなんのって大騒ぎになるじゃないですか」
ヴィヴィアンヌはくくくと笑っている。少年なりに気を使ってるのはヴィヴィアンヌに伝わった。
「で、お目当てのエミールの居場所、だよ」
「おい、レイラ・ドゥエスタンを呼んでくれ」
教室の入口にクリストフが現れ早くも平穏という言葉が塵と散った事をレイラは感じた。
「何でしょうか」
レイラはクリストフの前に立つ。
「ちょっと来て」
「授業が……」
前にいたペールにクリストフが声をかけた。
「ペール、次の授業の教師に俺が借りて行ったって言っといてくれ」
「わかりました、殿下」
「すまん」
謝るのは私に対してではないのかとレイラは思ったが二の腕を持たれずんずんと教室から引き離された。
「ここらでいいか。……エミール・マリュスはどこにいる?どっちに行けばいい?」
レイラは驚いた顔であった。
「師匠のお友達のエミールさん?」
よくわかってはいないがエミールが魔法使いとして素晴らしいという事は担任から聞いていた。前に一度エミールの言葉を聞いていたのだ。
『嬢ちゃん、俺は凄い魔法使いなんじゃないぞ。時間が有り余ってるから好きな事を好きなだけ研究できる恵まれた男なんだ』
そう言いながらエミールはレイラにハーブティをいれてくれた。いくら王子とはいえいきなり温室に押しかけるのもなとレイラは思った。少し考えていたが師匠はこの人とも顔見知りのようだし、とレイラに着いている師匠の使い魔に合図する。すぐにヴィヴィアンヌが転移してきた。
「……殿下?」
「エミールさんにお会いしたいらしいです」
「ふむ?……レイラ、授業に戻っていいよ。殿下、話をしようか」
ヴィヴィアンヌはクリストフからレイラを解放した。レイラはやっと慣れてきたカーテシーをしそそくさと教室に戻った。教室では学年主任が黒板に式を書いている。
「理由は聞いている。早くこれを書き写して課題に取り掛かって」
レイラは『はい』と言い、小さく礼をした。素早く席に向かうとリチャードが立ち上がって場所を作ってくれる。5人座れる長い机に両端はリチャードとジョルジュでレイラは真ん中が自席だった。
「書ける?」
リチャードがノートを見せてくれようとしたがレイラは首を横に振った。
「覚えました」
小さな声でレイラが言う。それを証明するように殆ど黒板を見ずにさらさらとノートに問題を書き写した。レイラはライン公爵夫人から入学祝いに、と貰った質の良い紙のノートと滑らかなガラスペンですらすらと書き写していく。学年主任の授業は大抵、黒板の問題1つをノートの1番上に書き写す。そしてページの残りにその式の意味と結果を書いて、授業の終わりに提出し採点してもらう、そういう方式であった。
「で、レイラを呼び出した理由は?」
「エミール・マリュス翁と親しいと聞いた」
「レイラが?」
ヴィヴィアンヌに問われクリストフは答える。
「あー、ジュリオがルシア嬢から聞いたらしい」
「ふん、お茶会か」
クリストフは頷いた。
「で、なんでレイラに?」
「……ルシア嬢の所に俺が行くとまた婚約のなんのって大騒ぎになるじゃないですか」
ヴィヴィアンヌはくくくと笑っている。少年なりに気を使ってるのはヴィヴィアンヌに伝わった。
「で、お目当てのエミールの居場所、だよ」
2
お気に入りに追加
83
あなたにおすすめの小説

王国冒険者の生活(修正版)
雪月透
ファンタジー
配達から薬草採取、はたまたモンスターの討伐と貼りだされる依頼。
雑用から戦いまでこなす冒険者業は、他の職に就けなかった、就かなかった者達の受け皿となっている。
そんな冒険者業に就き、王都での生活のため、いろんな依頼を受け、世界の流れの中を生きていく二人が中心の物語。
※以前に上げた話の誤字脱字をかなり修正し、話を追加した物になります。


冤罪で山に追放された令嬢ですが、逞しく生きてます
里見知美
ファンタジー
王太子に呪いをかけたと断罪され、神の山と恐れられるセントポリオンに追放された公爵令嬢エリザベス。その姿は老婆のように皺だらけで、魔女のように醜い顔をしているという。
だが実は、誰にも言えない理由があり…。
※もともとなろう様でも投稿していた作品ですが、手を加えちょっと長めの話になりました。作者としては抑えた内容になってるつもりですが、流血ありなので、ちょっとエグいかも。恋愛かファンタジーか迷ったんですがひとまず、ファンタジーにしてあります。
全28話で完結。
アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~
明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!!
『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。
無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。
破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。
「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」
【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?
外れスキル《コピー》を授かったけど「無能」と言われて家を追放された~ だけど発動条件を満たせば"魔族のスキル"を発動することができるようだ~
そらら
ファンタジー
「鑑定ミスではありません。この子のスキルは《コピー》です。正直、稀に見る外れスキルですね、何せ発動条件が今だ未解明なのですから」
「何てことなの……」
「全く期待はずれだ」
私の名前はラゼル、十五歳になったんだけども、人生最悪のピンチに立たされている。
このファンタジックな世界では、15歳になった際、スキル鑑定を医者に受けさせられるんだが、困ったことに私は外れスキル《コピー》を当ててしまったらしい。
そして数年が経ち……案の定、私は家族から疎ましく感じられてーーついに追放されてしまう。
だけど私のスキルは発動条件を満たすことで、魔族のスキルをコピーできるようだ。
そして、私の能力が《外れスキル》ではなく、恐ろしい能力だということに気づく。
そんでこの能力を使いこなしていると、知らないうちに英雄と呼ばれていたんだけど?
私を追放した家族が戻ってきてほしいって泣きついてきたんだけど、もう戻らん。
私は最高の仲間と最強を目指すから。

城で侍女をしているマリアンネと申します。お給金の良いお仕事ありませんか?
甘寧
ファンタジー
「武闘家貴族」「脳筋貴族」と呼ばれていた元子爵令嬢のマリアンネ。
友人に騙され多額の借金を作った脳筋父のせいで、屋敷、領土を差し押さえられ事実上の没落となり、その借金を返済する為、城で侍女の仕事をしつつ得意な武力を活かし副業で「便利屋」を掛け持ちしながら借金返済の為、奮闘する毎日。
マリアンネに執着するオネエ王子やマリアンネを取り巻く人達と様々な試練を越えていく。借金返済の為に……
そんなある日、便利屋の上司ゴリさんからの指令で幽霊屋敷を調査する事になり……
武闘家令嬢と呼ばれいたマリアンネの、借金返済までを綴った物語

妹が聖女の再来と呼ばれているようです
田尾風香
ファンタジー
ダンジョンのある辺境の地で回復術士として働いていたけど、父に呼び戻されてモンテリーノ学校に入学した。そこには、私の婚約者であるファルター殿下と、腹違いの妹であるピーアがいたんだけど。
「マレン・メクレンブルク! 貴様とは婚約破棄する!」
どうやらファルター殿下は、"低能"と呼ばれている私じゃなく、"聖女の再来"とまで呼ばれるくらいに成績の良い妹と婚約したいらしい。
それは別に構わない。国王陛下の裁定で無事に婚約破棄が成った直後、私に婚約を申し込んできたのは、辺境の地で一緒だったハインリヒ様だった。
戸惑う日々を送る私を余所に、事件が起こる。――学校に、ダンジョンが出現したのだった。
更新は不定期です。

【完結】初級魔法しか使えない低ランク冒険者の少年は、今日も依頼を達成して家に帰る。
アノマロカリス
ファンタジー
少年テッドには、両親がいない。
両親は低ランク冒険者で、依頼の途中で魔物に殺されたのだ。
両親の少ない保険でやり繰りしていたが、もう金が尽きかけようとしていた。
テッドには、妹が3人いる。
両親から「妹達を頼む!」…と出掛ける前からいつも約束していた。
このままでは家族が離れ離れになると思ったテッドは、冒険者になって金を稼ぐ道を選んだ。
そんな少年テッドだが、パーティーには加入せずにソロ活動していた。
その理由は、パーティーに参加するとその日に家に帰れなくなるからだ。
両親は、小さいながらも持ち家を持っていてそこに住んでいる。
両親が生きている頃は、父親の部屋と母親の部屋、子供部屋には兄妹4人で暮らしていたが…
両親が死んでからは、父親の部屋はテッドが…
母親の部屋は、長女のリットが、子供部屋には、次女のルットと三女のロットになっている。
今日も依頼をこなして、家に帰るんだ!
この少年テッドは…いや、この先は本編で語ろう。
お楽しみくださいね!
HOTランキング20位になりました。
皆さん、有り難う御座います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる