58 / 138
57. 呪いの結果
しおりを挟む
テオは舌を鳴らした。扉から新副教皇が入って来た。まだ正式任命はしていない。
「うちのジーさんがすまん」
「いや、体よく押し付けられたかと思って」
「ああ、……あっちのばばあ、じーさんの妹がな、リリスがいると感情のアップダウンが激
しくてな。使用人が苦労してる」
新副教皇のリチャードは他国に婿に行ってたのだが妻と離縁し戻ってきた時にフィールズ老の家に世話になっていたのだ。その当時のありさまを話す。
「そりゃ、もう。砂糖をかけてはちみつで煮たくらい甘かったよ。魔法の練習だけは真面目にやってて、庭中、小物の魔物呼び出したりでな。……じーさまもばばあも魔法使えないから俺が全部処理した。さすがにあの時はリリス捕まえて尻叩きしたら……ばばあがバーサーカーみたいに吠えだして、……じーさまに金もらって逃げた」
リチャードは笑っている。リチャードは元は冒険者で貴族社会を嫌っていたが、魔法を使っているうちに癒しの魔法を覚えたので今回の話があった時に兄のフィールズ侯爵に頼まれて快諾したという経緯があった。
「ま、そろそろ神殿に入ろうとは思ってたからな」
テオとはリチャードは肌が合うようだった。
「元副教皇、シオンは今の所大人しくしてるみたいだ」
海辺の街の部下からの報告をテオが教える。副教皇の母親はやってきた自分の息子を一晩、説教攻めにしていたらしい。副教皇は明らかにマザコンで母親の説教は堪えたようだった。テオの部下とも知らず、教会の同輩に『この年になっても母の説教はありがたい』と言っていたらしい。また、母親と暮らし始めて副教皇は見る間に人格が丸くなったようだった。
「老は暗示の魔道具でも使ってるのかね」
「この部屋では反応がなかったな。それと老と妹君は魔力があるのに魔術が使えない、んだろ?」
テオがリチャードに訊ねる。この応接室は魔道具など持ち込めないように部屋自身が魔道具になっているのだ。
「この部屋だとさすがのテオも無力だものな」
「そう言う風に作ったからな。俺はダメだけど、ヴィヴィアンヌは使えるんだよな、この中でも」
「さすが魔女様だな」
リチャードが素直に感心する。
「あの人を押える術を組もうと思ったら魔石がもっといるな。ドラゴン級の魔石にこの部屋に使ってる魔石を変えても……やばいかも」
テオはそう言いながら多分王宮の親石なら抑え込めるだろう、と考えていた。
「エミール……、ちゃんと肉が着いたね」
「アナ嬢が子供たちのついでに飯と菓子を作ってくれるからな」
エミールは再開時よりも肌の色つやもよく、元気そうであった。
「あんたが元気なのは嬉しいよ。……もう幼馴染も殆ど残ってないからね」
「あそこでドラゴンに祝福されたのは俺とあんたと入れて7人か」
ヴィヴィアンヌは頷く。
「何人残ってる?」
「ミレイとエリクとキリカは結局火口に身を投げたからね。あ、ロットバルトは隣の国で王室お目付け役をしてるらしい。ナオミ皇女に聞いた。ミルは消息不明。あんたもちょっと前まで消息不明だったしね」
エミールはにやっと笑っている。
「ま、俺とあんたとロッドは特にきつく祝福されたからな。成長したら年が取れない呪いになんざ祝福されるとは思わなかったよ」
ヴィヴィアンヌが頷く。
「あの黒色ドラゴン、『気に入った。汝らに我の寿命を分け与えよう。永劫の時を過ごすがいい』だもんねぇ」
「将来の宮廷魔術師として見学にいったら子供だった我々が張った結界だけが持ったからな」
そう言いながらヴィヴィアンヌとエミールは深くため息をついた。
「うちのジーさんがすまん」
「いや、体よく押し付けられたかと思って」
「ああ、……あっちのばばあ、じーさんの妹がな、リリスがいると感情のアップダウンが激
しくてな。使用人が苦労してる」
新副教皇のリチャードは他国に婿に行ってたのだが妻と離縁し戻ってきた時にフィールズ老の家に世話になっていたのだ。その当時のありさまを話す。
「そりゃ、もう。砂糖をかけてはちみつで煮たくらい甘かったよ。魔法の練習だけは真面目にやってて、庭中、小物の魔物呼び出したりでな。……じーさまもばばあも魔法使えないから俺が全部処理した。さすがにあの時はリリス捕まえて尻叩きしたら……ばばあがバーサーカーみたいに吠えだして、……じーさまに金もらって逃げた」
リチャードは笑っている。リチャードは元は冒険者で貴族社会を嫌っていたが、魔法を使っているうちに癒しの魔法を覚えたので今回の話があった時に兄のフィールズ侯爵に頼まれて快諾したという経緯があった。
「ま、そろそろ神殿に入ろうとは思ってたからな」
テオとはリチャードは肌が合うようだった。
「元副教皇、シオンは今の所大人しくしてるみたいだ」
海辺の街の部下からの報告をテオが教える。副教皇の母親はやってきた自分の息子を一晩、説教攻めにしていたらしい。副教皇は明らかにマザコンで母親の説教は堪えたようだった。テオの部下とも知らず、教会の同輩に『この年になっても母の説教はありがたい』と言っていたらしい。また、母親と暮らし始めて副教皇は見る間に人格が丸くなったようだった。
「老は暗示の魔道具でも使ってるのかね」
「この部屋では反応がなかったな。それと老と妹君は魔力があるのに魔術が使えない、んだろ?」
テオがリチャードに訊ねる。この応接室は魔道具など持ち込めないように部屋自身が魔道具になっているのだ。
「この部屋だとさすがのテオも無力だものな」
「そう言う風に作ったからな。俺はダメだけど、ヴィヴィアンヌは使えるんだよな、この中でも」
「さすが魔女様だな」
リチャードが素直に感心する。
「あの人を押える術を組もうと思ったら魔石がもっといるな。ドラゴン級の魔石にこの部屋に使ってる魔石を変えても……やばいかも」
テオはそう言いながら多分王宮の親石なら抑え込めるだろう、と考えていた。
「エミール……、ちゃんと肉が着いたね」
「アナ嬢が子供たちのついでに飯と菓子を作ってくれるからな」
エミールは再開時よりも肌の色つやもよく、元気そうであった。
「あんたが元気なのは嬉しいよ。……もう幼馴染も殆ど残ってないからね」
「あそこでドラゴンに祝福されたのは俺とあんたと入れて7人か」
ヴィヴィアンヌは頷く。
「何人残ってる?」
「ミレイとエリクとキリカは結局火口に身を投げたからね。あ、ロットバルトは隣の国で王室お目付け役をしてるらしい。ナオミ皇女に聞いた。ミルは消息不明。あんたもちょっと前まで消息不明だったしね」
エミールはにやっと笑っている。
「ま、俺とあんたとロッドは特にきつく祝福されたからな。成長したら年が取れない呪いになんざ祝福されるとは思わなかったよ」
ヴィヴィアンヌが頷く。
「あの黒色ドラゴン、『気に入った。汝らに我の寿命を分け与えよう。永劫の時を過ごすがいい』だもんねぇ」
「将来の宮廷魔術師として見学にいったら子供だった我々が張った結界だけが持ったからな」
そう言いながらヴィヴィアンヌとエミールは深くため息をついた。
2
お気に入りに追加
82
あなたにおすすめの小説
転生先ではゆっくりと生きたい
ひつじ
ファンタジー
勉強を頑張っても、仕事を頑張っても誰からも愛されなかったし必要とされなかった藤田明彦。
事故で死んだ明彦が出会ったのは……
転生先では愛されたいし必要とされたい。明彦改めソラはこの広い空を見ながらゆっくりと生きることを決めた
小説家になろうでも連載中です。
なろうの方が話数が多いです。
https://ncode.syosetu.com/n8964gh/
S級冒険者の子どもが進む道
干支猫
ファンタジー
【12/26完結】
とある小さな村、元冒険者の両親の下に生まれた子、ヨハン。
父親譲りの剣の才能に母親譲りの魔法の才能は両親の想定の遥か上をいく。
そうして王都の冒険者学校に入学を決め、出会った仲間と様々な学生生活を送っていった。
その中で魔族の存在にエルフの歴史を知る。そして魔王の復活を聞いた。
魔王とはいったい?
※感想に盛大なネタバレがあるので閲覧の際はご注意ください。
その聖女は身分を捨てた
メカ喜楽直人
ファンタジー
ある日突然、この世界各地に無数のダンジョンが出来たのは今から18年前のことだった。
その日から、この世界には魔物が溢れるようになり人々は武器を揃え戦うことを覚えた。しかし年を追うごとに魔獣の種類は増え続け武器を持っている程度では倒せなくなっていく。
そんな時、神からの掲示によりひとりの少女が探し出される。
魔獣を退ける結界を作り出せるその少女は、自国のみならず各国から請われ結界を貼り廻らせる旅にでる。
こうして少女の活躍により、世界に平和が取り戻された。
これは、平和を取り戻した後のお話である。
30代社畜の私が1ヶ月後に異世界転生するらしい。
ひさまま
ファンタジー
前世で搾取されまくりだった私。
魂の休養のため、地球に転生したが、地球でも今世も搾取されまくりのため魂の消滅の危機らしい。
とある理由から元の世界に戻るように言われ、マジックバックを自称神様から頂いたよ。
これで地球で買ったものを持ち込めるとのこと。やっぱり夢ではないらしい。
取り敢えず、明日は退職届けを出そう。
目指せ、快適異世界生活。
ぽちぽち更新します。
作者、うっかりなのでこれも買わないと!というのがあれば教えて下さい。
脳内の空想を、つらつら書いているのでお目汚しな際はごめんなさい。
巻き込まれ召喚・途中下車~幼女神の加護でチート?
サクラ近衛将監
ファンタジー
商社勤務の社会人一年生リューマが、偶然、勇者候補のヤンキーな連中の近くに居たことから、一緒に巻き込まれて異世界へ強制的に召喚された。万が一そのまま召喚されれば勇者候補ではないために何の力も与えられず悲惨な結末を迎える恐れが多分にあったのだが、その召喚に気づいた被召喚側世界(地球)の神様と召喚側世界(異世界)の神様である幼女神のお陰で助けられて、一旦狭間の世界に留め置かれ、改めて幼女神の加護等を貰ってから、異世界ではあるものの召喚場所とは異なる場所に無事に転移を果たすことができた。リューマは、幼女神の加護と付与された能力のおかげでチートな成長が促され、紆余曲折はありながらも異世界生活を満喫するために生きて行くことになる。
*この作品は「カクヨム」様にも投稿しています。
**週1(土曜日午後9時)の投稿を予定しています。**
150年後の敵国に転生した大将軍
mio
ファンタジー
「大将軍は150年後の世界に再び生まれる」から少しタイトルを変更しました。
ツーラルク皇国大将軍『ラルヘ』。
彼は隣国アルフェスラン王国との戦いにおいて、その圧倒的な強さで多くの功績を残した。仲間を失い、部下を失い、家族を失っていくなか、それでも彼は主であり親友である皇帝のために戦い続けた。しかし、最後は皇帝の元を去ったのち、自宅にてその命を落とす。
それから約150年後。彼は何者かの意思により『アラミレーテ』として、自分が攻め入った国の辺境伯次男として新たに生まれ変わった。
『アラミレーテ』として生きていくこととなった彼には『ラルヘ』にあった剣の才は皆無だった。しかし、その代わりに与えられていたのはまた別の才能で……。
他サイトでも公開しています。
(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅
あかる
ファンタジー
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり?
異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました!
完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。
転生令嬢の食いしん坊万罪!
ねこたま本店
ファンタジー
訳も分からないまま命を落とし、訳の分からない神様の手によって、別の世界の公爵令嬢・プリムローズとして転生した、美味しい物好きな元ヤンアラサー女は、自分に無関心なバカ父が後妻に迎えた、典型的なシンデレラ系継母と、我が儘で性格の悪い妹にイビられたり、事故物件王太子の中継ぎ婚約者にされたりつつも、しぶとく図太く生きていた。
そんなある日、プリムローズは王侯貴族の子女が6~10歳の間に受ける『スキル鑑定の儀』の際、邪悪とされる大罪系スキルの所有者であると判定されてしまう。
プリムローズはその日のうちに、同じ判定を受けた唯一の友人、美少女と見まごうばかりの気弱な第二王子・リトス共々捕えられた挙句、国境近くの山中に捨てられてしまうのだった。
しかし、中身が元ヤンアラサー女の図太い少女は諦めない。
プリムローズは時に気弱な友の手を引き、時に引いたその手を勢い余ってブン回しながらも、邪悪と断じられたスキルを駆使して生き残りを図っていく。
これは、図太くて口の悪い、ちょっと(?)食いしん坊な転生令嬢が、自分なりの幸せを自分の力で掴み取るまでの物語。
こちらの作品は、2023年12月28日から、カクヨム様でも掲載を開始しました。
今後、カクヨム様掲載用にほんのちょっとだけ内容を手直しし、1話ごとの文章量を増やす事でトータルの話数を減らした改訂版を、1日に2回のペースで投稿していく予定です。多量の加筆修正はしておりませんが、もしよろしければ、カクヨム版の方もご笑覧下さい。
※作者が適当にでっち上げた、完全ご都合主義的世界です。細かいツッコミはご遠慮頂ければ幸いです。もし、目に余るような誤字脱字を発見された際には、コメント欄などで優しく教えてやって下さい。
※検討の結果、「ざまぁ要素あり」タグを追加しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる