聖女は断罪する

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57. 呪いの結果

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 テオは舌を鳴らした。扉から新副教皇が入って来た。まだ正式任命はしていない。

「うちのジーさんがすまん」

「いや、体よく押し付けられたかと思って」

「ああ、……あっちのばばあ、じーさんの妹がな、リリスがいると感情のアップダウンが激
しくてな。使用人が苦労してる」


新副教皇のリチャードは他国に婿に行ってたのだが妻と離縁し戻ってきた時にフィールズ老の家に世話になっていたのだ。その当時のありさまを話す。

「そりゃ、もう。砂糖をかけてはちみつで煮たくらい甘かったよ。魔法の練習だけは真面目にやってて、庭中、小物の魔物呼び出したりでな。……じーさまもばばあも魔法使えないから俺が全部処理した。さすがにあの時はリリス捕まえて尻叩きしたら……ばばあがバーサーカーみたいに吠えだして、……じーさまに金もらって逃げた」

リチャードは笑っている。リチャードは元は冒険者で貴族社会を嫌っていたが、魔法を使っているうちに癒しの魔法を覚えたので今回の話があった時に兄のフィールズ侯爵に頼まれて快諾したという経緯があった。

「ま、そろそろ神殿に入ろうとは思ってたからな」

テオとはリチャードは肌が合うようだった。

「元副教皇、シオンは今の所大人しくしてるみたいだ」

海辺の街の部下からの報告をテオが教える。副教皇の母親はやってきた自分の息子を一晩、説教攻めにしていたらしい。副教皇は明らかにマザコンで母親の説教は堪えたようだった。テオの部下とも知らず、教会の同輩に『この年になっても母の説教はありがたい』と言っていたらしい。また、母親と暮らし始めて副教皇は見る間に人格が丸くなったようだった。

「老は暗示の魔道具でも使ってるのかね」

「この部屋では反応がなかったな。それと老と妹君は魔力があるのに魔術が使えない、んだろ?」

テオがリチャードに訊ねる。この応接室は魔道具など持ち込めないように部屋自身が魔道具になっているのだ。

「この部屋だとさすがのテオも無力だものな」

「そう言う風に作ったからな。俺はダメだけど、ヴィヴィアンヌは使えるんだよな、この中でも」

「さすが魔女様だな」

リチャードが素直に感心する。

「あの人を押える術を組もうと思ったら魔石がもっといるな。ドラゴン級の魔石にこの部屋に使ってる魔石を変えても……やばいかも」

テオはそう言いながら多分王宮の親石なら抑え込めるだろう、と考えていた。



 「エミール……、ちゃんと肉が着いたね」

「アナ嬢が子供たちのついでに飯と菓子を作ってくれるからな」

エミールは再開時よりも肌の色つやもよく、元気そうであった。

「あんたが元気なのは嬉しいよ。……もう幼馴染も殆ど残ってないからね」

「あそこでドラゴンに祝福された呪われたのは俺とあんたと入れて7人か」

ヴィヴィアンヌは頷く。

「何人残ってる?」

「ミレイとエリクとキリカは結局火口に身を投げたからね。あ、ロットバルトは隣の国で王室お目付け役をしてるらしい。ナオミ皇女に聞いた。ミルは消息不明。あんたもちょっと前まで消息不明だったしね」

エミールはにやっと笑っている。

「ま、俺とあんたとロッドは特にきつく祝福されたからな。成長したら年が取れない呪いになんざ祝福されるとは思わなかったよ」

ヴィヴィアンヌが頷く。

「あの黒色ドラゴン、『気に入った。汝らに我の寿命を分け与えよう。永劫の時を過ごすがいい』だもんねぇ」

「将来の宮廷魔術師として見学にいったら子供だった我々が張った結界だけが持ったからな」

そう言いながらヴィヴィアンヌとエミールは深くため息をついた。
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