聖女は断罪する

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47. 魔女と慈母は計画を立てる

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 「ルシアに話してもいいですか?さっきの事」

帰りの馬車でレイラはヴィヴィアンヌに訊ねる。

「……いいよ。噂や他の人から聞いてルシアが暴走しても困るし」

ヴィヴィアンヌはふっと笑う。

「急にこんな話を聞いて重いと思うけども」

「……だからテオ様やジル様、アルバート様も来てくださったんですね」

レイラはレイラに会いに来る三人が国で偉い人なのだ、と今更に考えていた。

「シルヴィの子供だから、だよ。シルヴィは側妃様と仲が良くてね。体が動かせたうちは何度か側妃宮にもレイラを連れていたんだよ」

レイラは初めて聞く話だった。

「二歳くらいの時かな、側妃の息子の熱が引かなくて、一日エルシーが側妃宮の王子の寝
てる横で遊ばせてね。その日の夜には王子の体調も良くなってって言う事もあったよ」

レイラは興味津々と言った顔だ。

「側妃様、エルシーがお忍びで館に来たいと言ってるんだけど、レイラ、どうしたい?」

レイラは少し考えてから返事をする。

「いつでもいいです。少しでもお母様の話を聞けると嬉しいです」

「わかった。日程は帰ってからセドリックも交えて話そうね。大体のスケジュールは押えてあるから」

「はい」

レイラはにっこり笑った。シルヴィの学生時代の話を聞こうと思ったのだ。




 第二王子クリストフは庭でお茶会をしている母親とヴィヴィアンヌの会話を聞きながらうっすらとした記憶を思い出す。熱で浮かされた夢かとも思っていた記憶は柔らかそうな薄い色の髪の女の子が『あー?』と言いながらおでこを触ってきた記憶だった。
 どうもそれはちゃんとあった事のようだった。めったに声を出さないレイラが声をだしたので母親とシルヴィが驚いた、などと母親はヴィヴィアンヌに話していた。

「あの子、未だにあんまり話さないんだよね」

ヴィヴィアンヌの言葉にクリストフは隠し教室の前であった少女だなと思い出す。確かに同年代の女子がもつきゃっきゃとした感じがほぼゼロだった。
 年、12歳という年齢よりもはるかに落ち着いているし周りをよく見ている。余計な事を言わないというところも気に入った、とクリストフは思った。そんな事を考えながらクリストフは大あくびをする。

「もう、クリストフ、行儀悪い」

「妹たちと遊んでたら眠くなってしまって」

クリストフがヴィヴィアンヌにそう言い訳をする。ヴィヴィアンヌは笑って何も言わなかっ
た。
 クリストフは軽く頭を下げると、側妃宮の内部に戻りサンルームのソファで横になった。



「ではその日にテオがジルと貴方をシルヴィの館へ連れて行くわ」

「レイラに会ったって言ったらアルバート、拗ねそう」

エルシーが笑う。ヴィヴィアンヌもにやっと返す。

「公務が詰まってる日を選んだのはそれもある。貴方の方からみたシルヴィとアルバートの事を話して上げて欲しい。あの子が知りたいだけを」

エルシーは頷いた。

「ただね、12歳なんだけど……貴族の子女の閨教育をわすれてて、そう言う面が全く知識がないのよ」

エルシーは小首を傾げた。

「次の長期休暇にレイラとルシアを何回かこちらによこして下されば王妃教育の一端としての閨教育をいたしましょうか?」

「ああ、ルシアも済ませてないのか」

ヴィヴィアンヌはアナがちゃんと守ってるので他のメイドからの妙な吹き込まれ方もしてないだろうしと考える。

「うちはジュリオがそういう話から逃げ回ってまったく閨教育が進まなくて。アルマンとクリストフは順調に済ませられたんですけど……」

「王宮に女官で上がってる子にお手付きがいたりは?」

「アルマンもクリストフもその危険性をちゃんと教育できたようです」

「そう」

ヴィヴィアンヌは思わし気だった。

「陛下はそういう子を女官には作ってなかった?」

エルシーはふっと諦めた笑いを浮かべる。

「いましたよ。そもそも手ほどきをしたのが、エマっていう平民の子で。多分フィールズ家絡みで雇った子だったと思います。その方が友達のエラさんを紹介して、もうその時は正妃様といい仲になってたらしくて……」

「若いアルバートの下半身は問題が多いね」

エルシーは頷く。

「アルマンがあんまり似ないと良いのですけど」
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