47 / 138
46. テオとレイラ
しおりを挟む
「テオ様」
「久しぶりだね」
テオが大人の顔をとりつくろってレイラと会う。レイラは森で会うときよりもふっくらしておられるな、と少し安心した。森で会うときは酷いときは幽鬼じみるまで痩せている時があるからだ。
「今日はいつもよりお元気そうですね」
「少し休んだ後だからね」
エミールの温室の私用部分での会合だった。
レイラは嬉しそうに話す。実はレイラの初恋はテオだった。ヴィヴィアンヌの親戚かと思っていたらしい。レイラがテオについて知っているのは教会関係者である事、普段は王都に住んでいるヴィヴィアンヌの親しい人、それくらいであった。
「学校はどうだ?」
白いテーブルで対峙している二人をエミールとヴィヴィアンヌは眺める事もなく眺めている感じで座ってる。
「朝からエミールもお疲れさん」
「いやぁ若者は元気だねぇ」
エミールは朝から自分に熱狂するテオの相手をし、昼食を一緒にし、午後の抗議の時間もテオの話を聞き、テオを落ち着かせた。論にまでなってない話もウィルに手紙で渡してあるので手紙を読むと良い事などおしえる。
『お手紙、読んでもいいんですか?』
テオの言葉にエミールは頷き、一つの指輪を与える。その指輪にはエミールの紋がエミールの魔力で刻印されている。
「それをウィルに見せれば済む」
「お借りします」
テオが恭しく指輪を掲げる。
「ああ、それは君の物だよ」
事も無げにエミールに言われテオは小躍りしかねないくらい喜んだ。
「レイラに黙ってたことがあるんだ」
テオはレイラに申し訳なさそうに告げる。
「シルヴィが亡くなった事で……君にこれを告げるのが遅くなったけど。君は……教皇の『聖女』候補なんだ」
レイラは藪から棒のそんな言葉に驚くしかなかった。
「……なぜ、私が?」
レイラはリリスを見た時から持っていた疑問をテオに投げる。
「聖女候補って何が条件なんですか?」
「生まれた時から癒しの力が使える事」
テオの言葉でリリスが聖女候補である理由に納得をした。
「では何故私が?」
「生まれた時から二歳くらいまで君はずっと癒しの魔法を周りに振りまいていたんだ」
「それはママ……母に聞いて知ってます。お陰で皆抱きたがって。……父親以外」
レイラは母親の言葉を伝える。
「教会でそう言われて……ちょっとズルをして師匠に協力してもらって私を教会に入れなかったって」
テオはある程度は真実をシルヴィは教えてるんだな、と思った。
「俺は……そこに関わった人間で、当時はレイラの領地辺りの統括責任者だった。今は教会の中枢にいる」
この期に及んでもテオは自分が教皇だとは言わなかった。
「レイラが聖女候補である事を隠せるのは15歳のお披露目までだ。レイラが15歳に成った時に教会でお披露目がある」
レイラの顔はこわばっている。無理もないとテオは思ったが、真実を告げておくのが筋だとも思っていた。
「教会だけでなく、王室、陛下と側妃様もレイラが聖女候補なのは知ってるんだ」
レイラは、つまりは逃げられないって事だなと悟った。
「久しぶりだね」
テオが大人の顔をとりつくろってレイラと会う。レイラは森で会うときよりもふっくらしておられるな、と少し安心した。森で会うときは酷いときは幽鬼じみるまで痩せている時があるからだ。
「今日はいつもよりお元気そうですね」
「少し休んだ後だからね」
エミールの温室の私用部分での会合だった。
レイラは嬉しそうに話す。実はレイラの初恋はテオだった。ヴィヴィアンヌの親戚かと思っていたらしい。レイラがテオについて知っているのは教会関係者である事、普段は王都に住んでいるヴィヴィアンヌの親しい人、それくらいであった。
「学校はどうだ?」
白いテーブルで対峙している二人をエミールとヴィヴィアンヌは眺める事もなく眺めている感じで座ってる。
「朝からエミールもお疲れさん」
「いやぁ若者は元気だねぇ」
エミールは朝から自分に熱狂するテオの相手をし、昼食を一緒にし、午後の抗議の時間もテオの話を聞き、テオを落ち着かせた。論にまでなってない話もウィルに手紙で渡してあるので手紙を読むと良い事などおしえる。
『お手紙、読んでもいいんですか?』
テオの言葉にエミールは頷き、一つの指輪を与える。その指輪にはエミールの紋がエミールの魔力で刻印されている。
「それをウィルに見せれば済む」
「お借りします」
テオが恭しく指輪を掲げる。
「ああ、それは君の物だよ」
事も無げにエミールに言われテオは小躍りしかねないくらい喜んだ。
「レイラに黙ってたことがあるんだ」
テオはレイラに申し訳なさそうに告げる。
「シルヴィが亡くなった事で……君にこれを告げるのが遅くなったけど。君は……教皇の『聖女』候補なんだ」
レイラは藪から棒のそんな言葉に驚くしかなかった。
「……なぜ、私が?」
レイラはリリスを見た時から持っていた疑問をテオに投げる。
「聖女候補って何が条件なんですか?」
「生まれた時から癒しの力が使える事」
テオの言葉でリリスが聖女候補である理由に納得をした。
「では何故私が?」
「生まれた時から二歳くらいまで君はずっと癒しの魔法を周りに振りまいていたんだ」
「それはママ……母に聞いて知ってます。お陰で皆抱きたがって。……父親以外」
レイラは母親の言葉を伝える。
「教会でそう言われて……ちょっとズルをして師匠に協力してもらって私を教会に入れなかったって」
テオはある程度は真実をシルヴィは教えてるんだな、と思った。
「俺は……そこに関わった人間で、当時はレイラの領地辺りの統括責任者だった。今は教会の中枢にいる」
この期に及んでもテオは自分が教皇だとは言わなかった。
「レイラが聖女候補である事を隠せるのは15歳のお披露目までだ。レイラが15歳に成った時に教会でお披露目がある」
レイラの顔はこわばっている。無理もないとテオは思ったが、真実を告げておくのが筋だとも思っていた。
「教会だけでなく、王室、陛下と側妃様もレイラが聖女候補なのは知ってるんだ」
レイラは、つまりは逃げられないって事だなと悟った。
0
お気に入りに追加
77
あなたにおすすめの小説
【完結】選ばれなかった王女は、手紙を残して消えることにした。
曽根原ツタ
恋愛
「お姉様、私はヴィンス様と愛し合っているの。だから邪魔者は――消えてくれない?」
「分かったわ」
「えっ……」
男が生まれない王家の第一王女ノルティマは、次の女王になるべく全てを犠牲にして教育を受けていた。
毎日奴隷のように働かされた挙句、将来王配として彼女を支えるはずだった婚約者ヴィンスは──妹と想いあっていた。
裏切りを知ったノルティマは、手紙を残して王宮を去ることに。
何もかも諦めて、崖から湖に飛び降りたとき──救いの手を差し伸べる男が現れて……?
★小説家になろう様で先行更新中
悪役令嬢は処刑されました
菜花
ファンタジー
王家の命で王太子と婚約したペネロペ。しかしそれは不幸な婚約と言う他なく、最終的にペネロペは冤罪で処刑される。彼女の処刑後の話と、転生後の話。カクヨム様でも投稿しています。
晴れて国外追放にされたので魅了を解除してあげてから出て行きました [完]
ラララキヲ
ファンタジー
卒業式にて婚約者の王子に婚約破棄され義妹を殺そうとしたとして国外追放にされた公爵令嬢のリネットは一人残された国境にて微笑む。
「さようなら、私が産まれた国。
私を自由にしてくれたお礼に『魅了』が今後この国には効かないようにしてあげるね」
リネットが居なくなった国でリネットを追い出した者たちは国王の前に頭を垂れる──
◇婚約破棄の“後”の話です。
◇転生チート。
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇なろうにも上げてます。
◇人によっては最後「胸糞」らしいです。ごめんね;^^
◇なので感想欄閉じます(笑)
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
水しか操れない無能と言われて虐げられてきた令嬢に転生していたようです。ところで皆さん。人体の殆どが水分から出来ているって知ってました?
ラララキヲ
ファンタジー
わたくしは出来損ない。
誰もが5属性の魔力を持って生まれてくるこの世界で、水の魔力だけしか持っていなかった欠陥品。
それでも、そんなわたくしでも侯爵家の血と伯爵家の血を引いている『血だけは価値のある女』。
水の魔力しかないわたくしは皆から無能と呼ばれた。平民さえもわたくしの事を馬鹿にする。
そんなわたくしでも期待されている事がある。
それは『子を生むこと』。
血は良いのだから次はまともな者が生まれてくるだろう、と期待されている。わたくしにはそれしか価値がないから……
政略結婚で決められた婚約者。
そんな婚約者と親しくする御令嬢。二人が愛し合っているのならわたくしはむしろ邪魔だと思い、わたくしは父に相談した。
婚約者の為にもわたくしが身を引くべきではないかと……
しかし……──
そんなわたくしはある日突然……本当に突然、前世の記憶を思い出した。
前世の記憶、前世の知識……
わたくしの頭は霧が晴れたかのように世界が突然広がった……
水魔法しか使えない出来損ない……
でも水は使える……
水……水分……液体…………
あら? なんだかなんでもできる気がするわ……?
そしてわたくしは、前世の雑な知識でわたくしを虐げた人たちに仕返しを始める……──
【※女性蔑視な発言が多々出てきますので嫌な方は注意して下さい】
【※知識の無い者がフワッとした知識で書いてますので『これは違う!』が許せない人は読まない方が良いです】
【※ファンタジーに現実を引き合いに出してあれこれ考えてしまう人にも合わないと思います】
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾もあるよ!
◇なろうにも上げてます。
美しい姉と痩せこけた妹
サイコちゃん
ファンタジー
若き公爵は虐待を受けた姉妹を引き取ることにした。やがて訪れたのは美しい姉と痩せこけた妹だった。姉が夢中でケーキを食べる中、妹はそれがケーキだと分からない。姉がドレスのプレゼントに喜ぶ中、妹はそれがドレスだと分からない。公爵はあまりに差のある姉妹に疑念を抱いた――
ここは乙女ゲームの世界でわたくしは悪役令嬢。卒業式で断罪される予定だけど……何故わたくしがヒロインを待たなきゃいけないの?
ラララキヲ
恋愛
乙女ゲームを始めたヒロイン。その悪役令嬢の立場のわたくし。
学園に入学してからの3年間、ヒロインとわたくしの婚約者の第一王子は愛を育んで卒業式の日にわたくしを断罪する。
でも、ねぇ……?
何故それをわたくしが待たなきゃいけないの?
※細かい描写は一切無いけど一応『R15』指定に。
◇テンプレ乙女ゲームモノ。
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾もあるかも。
◇なろうにも上げてます。
妹しか愛していない母親への仕返しに「わたくしはお母様が男に無理矢理に犯されてできた子」だと言ってやった。
ラララキヲ
ファンタジー
「貴女は次期当主なのだから」
そう言われて長女のアリーチェは育った。どれだけ寂しくてもどれだけツラくても、自分がこのエルカダ侯爵家を継がなければいけないのだからと我慢して頑張った。
長女と違って次女のルナリアは自由に育てられた。両親に愛され、勉強だって無理してしなくてもいいと甘やかされていた。
アリーチェはそれを羨ましいと思ったが、自分が長女で次期当主だから仕方がないと納得していて我慢した。
しかしアリーチェが18歳の時。
アリーチェの婚約者と恋仲になったルナリアを、両親は許し、二人を祝福しながら『次期当主をルナリアにする』と言い出したのだ。
それにはもうアリーチェは我慢ができなかった。
父は元々自分たち(子供)には無関心で、アリーチェに厳し過ぎる教育をしてきたのは母親だった。『次期当主だから』とあんなに言ってきた癖に、それを簡単に覆した母親をアリーチェは許せなかった。
そして両親はアリーチェを次期当主から下ろしておいて、アリーチェをルナリアの補佐に付けようとした。
そのどこまてもアリーチェの人格を否定する考え方にアリーチェの心は死んだ。
──自分を愛してくれないならこちらもあなたたちを愛さない──
アリーチェは行動を起こした。
もうあなたたちに情はない。
─────
◇これは『ざまぁ』の話です。
◇テンプレ [妹贔屓母]
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾もあるかも。
◇なろうにも上げてます。
※HOTランキング〔2位〕(4/19)☆ファンタジーランキング〔1位〕☆入り、ありがとうございます!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる