聖女は断罪する

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44. 聖女候補の実態

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 レイラは認識阻害の魔法かけておくべきだった、と思った。ライン公爵家専用の部屋がある二階に行く階段の下で結構階段から離れている席にいたリリスと取り巻きに捕まったのだ。

「どこに行くのかしら?」

「待ち合わせです」

リリスは一歩も引かぬ構えだ。

「私をルシアとかいう子と合わせなさい」

「私の役目ではありません」

レイラはリリスに譲る気は全くなかった。愛人の娘と同類の匂いのするこの女生徒をルシアに近寄らせてくなかった。

「貴方あのこのオトモダチなんでしょう?」

「リリス、五月蠅いよ。もう少し静かにして」

ペールがリリスの肩をつかむ。レイラはその隙に階段を駆け上がった。また助けられてしまったな、と思った。登り切った所で下を見るとペールがリリスの腕を持っている。ペールと目が合うと、『行け』というように顎をしゃくる。レイラは頷いて小さく頭を下げてすっとライン公爵家に用意された部屋に滑り込んだ。

 部屋に滑り込むとルシア付きのメイド、アナがテーブルの用意をしていた。

「お早いですね」

「授業が少し早く終わったので」

アナに促されるままに話していて、リリスの事もアナに話す。アナが教えてくれる。

「寮でも近づこうとして必死な女生徒が居ますが……。ピンクが買った金髪のピンクがかっ
た青紫の瞳のぱっとみ可愛い子ですか?」

「多分。リリスさんと仰って、水の聖女候補の方だそうです」

「聖女候補ですか。おかしいですね。公式にそうなってるなら王子達の御茶会に出てるはずなんですけど」

「公式にはなってないからね」

ヴィヴィアンヌがルシアの背に手を当てたまま扉から入って来た。

「ルシアと食堂に入った時にリリスとペールが揉めてるのが見えてね。認識阻害かけてここに入って来たよ」

 レイラとルシアは手を取り合ってきゃっきゃしている。

「今は聖女候補が複数いるし、リリスが水、王領の教会にも土の聖女候補がいるし。他にも複数人候補がいるんだ。教皇の知ってる聖女候補もまだお披露目してないしね」

アナが3人分の食器を設置し終える。同時に、厨房から食事が運ばれてきた。

「レイラと会えるの、お昼しかないのつまんない」

「1年と2年、カリキュラムが違うからね」

ヴィヴィアンヌが補足する。

「お休みの日、あそぼ?」

レイラに言われてルシアはちょっと溜息をつく。

「外出届けがねー。監督生の裁量で決まっちゃうみたいで。お友達もずっと受け取ってもらえないって」

ヴィヴィアンヌはルシアの話をじっと聞いている。

「私も受け取ってもらえなかったらどうしよう」

「そうねぇ……、二人とも内緒にできるなら落ち合う場所を作ってあげるから待っておいで」

ヴィヴィアンヌの言葉にルシアとレイラの顔がばっと明るくなる。

「学内だからルシアが動きやすいと思う」

ヴィヴィアンヌはエミールの温室をあてにしていた。

 アナはタイミングだな、と食事をサーブしだし、お腹の空いている少女たちは食事にとりかかった。


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