聖女は断罪する

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38. 魔女と慈母のお茶会

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 「ヴィヴィアンヌ様、お久しぶりです」

「久しぶり」

側妃エルシノアは実家のデュ=ゲクラン侯爵家にいた頃、5才の頃にヴィヴィアンヌと初めて会った。その頃の笑顔を思い起こさせる笑顔だった。

「今日は陛下の黒歴史を聞きに来たんだ」

冗談めかしてヴィヴィアンヌがおどける。

「あら、ありすぎて判りませんわ」

エルシノアもヴィヴィアンヌに対して気安い。

「立ち話もなんですし、客間に行きましょう」

庭では姫たちが遊んでいる。

「あの子達はあまり魔法の才能はなさそうだね」

「そうですね。私に似てしまったみたいで」

二人は優雅な風情であゆみを進める。客間に着くとヴィヴィアンウは勝手知ったる、と客間の飾りの一つに魔力を通す。それだけで部屋に遮音結界が貼られる。魔法が上手に使えないエルシノアの為に作られた仕掛けであった。

「お茶を用意しますね」

エルシノアが手ずからお茶を用意してくれる。

「子供と同じですけど。私が作りましたの」

小さなカップケーキが出てきた。

「サンドイッチとかスコーンはメイド長の作品です」

暫くは雑談をしていたが二人の間に一瞬の静寂が訪れた。

「エルシノア、王太子の印璽の話を聞きたいんだがね」

エルシノアは諦めたような笑顔で顔をあげた。そとの護衛から見ると清楚な側妃と妖艶な魔女の御茶会は目の保養であった。

「そうですね……、何から話しましょうか」

エルシノアの言葉にヴィヴィアンヌはゆったりとほほ笑む。

「吐き出したい所から」

エルシノアは桜色の指先を合わせて少し考えて話始めた。

「そうですね……私たちが12歳になった頃から、陛下は成長がお早かったようで」

 性的な事に興味を持ち始めた陛下はエルシノアと二人切りになりたがるようになった。服を脱がされ、膨らみ始めた胸に吸いつかれ、思いっきり突き飛ばした時から陛下の態度がおかしくなり始めたという。その頃はまだエルシノアの閨教育は成されてなく、何故そんなことをするのかもわかっていなかった。
 そして学園の中等部でエラとアリスと陛下の三人のふるまいが問題になり始めた。三人で生徒会室を締めきっての時間が増え、アリスの兄という男が王太子宮に入り浸るようになった。

 「その時期に執務が滞りだして。それを咎めたら陛下に印璽を投げつけられて。『お前でもできるだろうよ』って」

ヴィヴィアンヌは眉を顰める。

「アルバート陛下が投げつけたって?」

エルシノアが頷く。

「あの頃、私に着いていた執事が……偽の印璽を用意して王太子宮の印璽があるべき場所ん置いてくれたのです。多分、王太子宮とも連携したうえの印璽すり替え、仕事を私が、となったのだと思います」

「アルバート陛下には投げた記憶が」

「残ってないと思います。あの当時彼はずっとお酒に酔った人みたいな感じで浮ついてて」

ヴィヴィアンヌは、頭を抱えた。宮廷魔法師団に顔を出してあの香や香水の分析結果を訊かないと、と思っていた。

「エルシー。……あの男で幸せかい?」

エルシノアは困った顔になった。

「遮音結界だから私以外には聞こえないよ」

エルシノアはふふと笑った。

「時々幸せで時々……義務、ですわね。でもあの人のお陰で私は母親になれました。今いるの子達を幸せにすることを考えてる時間が幸せなので……、基本的には幸せだと思ってます」



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