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34. 温室の朝
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学校へ着く前にヴィヴィアンヌは馬車の中で温室に転移した。
「エミール、いるかい?」
「奥だ」
エミールの前には透ける虹色の花があった。形はユリに近い。
「えらく綺麗なものだね」
「アルフォンスの所の商会で売る予定だ。……パトロンに知られない小金を持つのも悪く
ないと思ってな」
エミールがエミールらしい顔で笑う。
「ま、そういってあの坊主に頼まれて作ったのさ。増やしやすくて、一年草でって依頼」
「咲くのは初夏かな?」
「そうだ」
「って事は花の祭りで売るつもりかな」
二人はそう言いながら面と向かって魔力循環をしている。これを覚えると体調と魔力を整え、魔力の量が多いと老化を遅らせれる。そして余剰の魔力を石で貯めたりできる。テオが太るのはこれを利用した偽装であった。そしてレイラもルシアもこれを教えるには若すぎる。人としての体が整ってから、とヴィヴィアンヌは考えていた。
「魔力循環しても、……老化は鈍化するけど回復はしないからなぁ」
エミールはそう言いつつバスケットの中身をテーブルの上に並べる。
「感覚の鈍化は取り戻せる。あと魔力量もね。随分魔力量減ってるわ、あんた」
「50年もたったと」
同じ言葉を繰り返すエミールにヴィヴィアンヌは老けてるわぁ、としみじみ考える。
「ああ、近いうちにウィルに会いに行くけど、伝言は?」
エミールはぴくん、となって溜まりにに溜まっている郵便物の奥から手紙を引っ張り出した。
「これの返事を書いたら持って行って欲しい」
「わかった」
100年くらい前から二人の間で推論を重ねている魔法理論をつづった手紙で「論」の原本は全てウィルが保存している。
「他はいいの?」
「必要なら督促でもくるだろ」
エミールは意に介していなかった。ヴィヴィアンヌは督促諦めた手紙もあるだろうな、と思いつつ口に出さなかった。
「久しぶりにまっとうな食事、とか思ったけど最近、アルフォンスが2,3日に一回、食料を差し入れてくれてな。腐らないように魔法かけてくれたバスケットにフィンガーフードたっぷり入れてくれてなぁ」
エミールの目が細くなる。
「懐かれたね」
ヴィヴィアンヌの言葉にエミールがぼそっと呟く。
「来始めた頃はかなりぼんやりしてたな。椅子に座って何にもせずにな。ほっといたらいつの間にか元気になってたよ」
「植物に癒されたのかねぇ」
「そうだな。この温室は春位の温度でコントロールしてるしな。春は芽吹きの季節だから人も元気になるんだろう」
ヴィヴィアンヌに向かってエミールはさらりと告げる。気負っているわけでもなく、ただ単なる事実としてそれを認識しているようだった。
「エミール、いるかい?」
「奥だ」
エミールの前には透ける虹色の花があった。形はユリに近い。
「えらく綺麗なものだね」
「アルフォンスの所の商会で売る予定だ。……パトロンに知られない小金を持つのも悪く
ないと思ってな」
エミールがエミールらしい顔で笑う。
「ま、そういってあの坊主に頼まれて作ったのさ。増やしやすくて、一年草でって依頼」
「咲くのは初夏かな?」
「そうだ」
「って事は花の祭りで売るつもりかな」
二人はそう言いながら面と向かって魔力循環をしている。これを覚えると体調と魔力を整え、魔力の量が多いと老化を遅らせれる。そして余剰の魔力を石で貯めたりできる。テオが太るのはこれを利用した偽装であった。そしてレイラもルシアもこれを教えるには若すぎる。人としての体が整ってから、とヴィヴィアンヌは考えていた。
「魔力循環しても、……老化は鈍化するけど回復はしないからなぁ」
エミールはそう言いつつバスケットの中身をテーブルの上に並べる。
「感覚の鈍化は取り戻せる。あと魔力量もね。随分魔力量減ってるわ、あんた」
「50年もたったと」
同じ言葉を繰り返すエミールにヴィヴィアンヌは老けてるわぁ、としみじみ考える。
「ああ、近いうちにウィルに会いに行くけど、伝言は?」
エミールはぴくん、となって溜まりにに溜まっている郵便物の奥から手紙を引っ張り出した。
「これの返事を書いたら持って行って欲しい」
「わかった」
100年くらい前から二人の間で推論を重ねている魔法理論をつづった手紙で「論」の原本は全てウィルが保存している。
「他はいいの?」
「必要なら督促でもくるだろ」
エミールは意に介していなかった。ヴィヴィアンヌは督促諦めた手紙もあるだろうな、と思いつつ口に出さなかった。
「久しぶりにまっとうな食事、とか思ったけど最近、アルフォンスが2,3日に一回、食料を差し入れてくれてな。腐らないように魔法かけてくれたバスケットにフィンガーフードたっぷり入れてくれてなぁ」
エミールの目が細くなる。
「懐かれたね」
ヴィヴィアンヌの言葉にエミールがぼそっと呟く。
「来始めた頃はかなりぼんやりしてたな。椅子に座って何にもせずにな。ほっといたらいつの間にか元気になってたよ」
「植物に癒されたのかねぇ」
「そうだな。この温室は春位の温度でコントロールしてるしな。春は芽吹きの季節だから人も元気になるんだろう」
ヴィヴィアンヌに向かってエミールはさらりと告げる。気負っているわけでもなく、ただ単なる事実としてそれを認識しているようだった。
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