聖女は断罪する

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32. 四阿のお茶会 続き

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 「陛下、見事な偽装と清掃でした。まだ動いてますよ。結界を貼ってきました。光魔法と闇魔法を一緒に使うか、雷魔法を使うかしてからじゃないと結界は解けないようにしてます」

ヴィヴィアンヌの報告に陛下は少し嬉しそうだ。テーブルの上にばさっと服が置かれる。今の陛下よりも胴回りが一回り細いように感じる。

「そして何故あそこにこれらがあるのかしら?」

王太子の印璽と証の指輪を置く。

「あ、あそこにあったのか!」

陛下は能天気に嬉しそうだ。

「これがなくて立太子もできなくて」

「……ねぇ、この石の欠けはいつから?」

ヴィヴィアンヌの問いに陛下は答える。

「俺が指輪を継いだ時にはもうこの形だったぞ」

陛下は当時を思い出して言う。

「ついでにこんなもの見つけたけど」

それはピンクの小瓶に入った香水だった。

「アリスが着けてたな、それ。無くしたって大騒ぎしてたけど結局あの小屋にあったのか」

「ねぇ、陛下。なんで印璽なんか持ち出してたの?」

「仕事が終わらなくて。……早く逢いたくて一日中、あそこで仕事してた」

陛下に当時から父親、前宰相の補佐をしていたジルが疑問を呈する。

「でも以前より随分手早く仕事を済ませてたよな?」

陛下が目を逸らす。そして其方の方向にいるヴィヴィアンヌと目が会う。

「ぜ・ん・ぶ、正直に吐きなさい?」

「その……エルシーとの事があるまでは仕事の8割はエルシーに渡してた。残りはアリスの兄上に全部やってもらってたか」

ヴィヴィアンヌが耐えかねて頭頂部に拳骨を落とした。今まで何度も餌食になったテオが顔を顰める。自分がやられた時の痛さを思い出したようだった。

「政務を他人に投げるとは何事か」

「私は少し話をしてきます。陛下はここから一歩も動くな、わかったな」

宰相の仮面をかぶりつつ、ジルは子供の時の顔、陛下の兄貴分に戻っている。そこにいつの間には魔法で呼びつけられた宮廷魔術師団長、アルフォンスの兄が来た。

「ジーク、香と香水の分析。催淫系なのと香水は魔法精製。お前らの追っかけてる仮面舞踏会にも関係あるかも。正妃が高等部だった時の物だ」

「わかりました」

アルフォンスの兄は物を受け取るとさっくり転移で戻っていった。

「あの子はアルフォンスとは違って無口だねぇ」

「んー、飲ませると面白いよ」

ヴィヴィアンヌにテオは言う。陛下はジルに叱られたでしゅん、としている。

「アルバート陛下、今回で正妃選定から続く膿を出し切りましょう。何年かかるか判りませんがルシアを王家に望むのなら最低減の処置ですよ」

陛下ははっと顔を上げる。

「フィールズ家を……除外するというのか?」

テオが訂正を入れた。

「フィールズ前侯爵を切除するんだよ。現侯爵家はそのままだ。そう言う事だろ、ヴィヴィアンヌ」

ヴィヴィアンヌは重々しく頷いた。

「今の侯爵家は普通に辣腕貴族だからね。国の為になる家だし」


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